見出し画像

ロックの冒険(26)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

以前ウミネコのテイリーが言ってたことをロックは思い出した。何か助けがいるときは、空に上がってテイリーの名前を呼べばいい。
ロックは周りを取り囲まれる前に1人で、できる限り上空まで飛んだ。ロックの羽がちぎれるくらいの羽ばたきで、ぐんぐんと大空へ昇っていった。そして叫んだ「テイリー、テイリー、助けて!」
ロックの声がウミネコのテイリーに届いたのかは分からない。しかしできる限りの大きな声で叫んだ。

ロックはそのまま東の陣地の方向へ逃げるように滑空した。ヒヨドリのブルースに教えてもらった飛び方だ。
モズのシュラーもハシボソガラスのクロウも後からロックに付いてきた。
ロックとシュラーは、大きな倒木を見つけて、その陰に隠れることにした。
「クロウはどこにいるの?」
倒木の陰にいるのはロックとシュラーだけでクロウがいない。
ロックはクロウを探した。
外に出て見渡すと、クロウは向かいの枝にとまって、悲しげな表情でロックとシュラーを見ていた。クロウは泣いていた。
クロウの近くにアオゲラのグリュンがやってきた。
「クロウよ、今までご苦労だったな。さあ、ミニベット様のところへ戻ろう。」
ロックとシュラーは、目の前で起きていることが理解できなかった。
「クロウ!どうしたの?なんでグリュンなんかと!どういう関係なの?いったい何があったの?」

その時、空から女王ミニベットの不気味な声が聞こえてきた。
「青い羽とオレンジ色の羽、どこに隠れているか分からないがよく聞け。お前たちの仲間だと思っていたこのクロウはな、元から私の手下なのよ。驚いたかい、ウフフ…」
「そ、そんな、、」
「イソヒヨドリのロックとか言ったな。お前の友だちのクロウの目的はな、海を棲み家にしている勇敢な若い鳥を森へ連れてきて、私の新しい手下にするためだったのよ。
旅の途中で、お前が勇敢かどうかを試してみて、そうでなかったら、途中でお前とも別れるはずだった。
しかし、お前は勇敢だった。私の手下にはうってつけよ。オホホホ…
さあロックよ、諦めて私の元へおいで、そして私の手下として私を守っておくれ。」
女王ミニベットの声が森に響いた。
「嫌だ!誰がお前なんかの手下になるもんか!!
クロウ、ウソだよね。ウソだと言ってくれ!」
ロックは悲しみで胸が張り裂けそうだった。

「こうなったら、オレたちだけでミニベットを倒そう。」シュラーが言った。
2人はフクロウのローリーに教えてもらった魔法を解く言葉をできるだけ大きな声で叫ぶには、どうするかを考えた。
「シュラー、ミニベットがいる場所から見て僕は西側の空に飛ぶ。シュラーは東側に飛んで!そしてその時にローリーが魔法を解く言葉を教えてくれるだろう。
賢者のローリーは、ずっと僕らを見守っているから、ちょうどその時に現れるさ。」ロックが言った。
「ローリーは本当に来てくれるか?それにオレたち2人だけで大きな声を出せるのか?一か八かだな。」
ロックとシュラーは、翌日この作戦を決行することにした。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?