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ロックの冒険(16)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

「おいロック、怪しい天気になってきたぞ。」クロウが言うように、外は厚い灰色の雲に覆われ、風がだんだんと強くなってきた。
「クロウ、どこか雨宿りする場所が必要だね。近くに大きな木とかないかな?
2人はしばらく雨宿りができそうな木を探した。
少し移動した所に、偶然適当な木を見つけた。
「クロウ、見てみて、あそこに鳥の巣があるよ。」
見ると確かに鳥の巣があり、雛が時々顔を出してます。「親鳥はいないのかなあ?」そう話をしていると、母親らしき鳥が戻ってきた。
「ここは君の巣?」ロックが聞いてみた。
「そうよ、あなたがたは?」
「僕はロックでこいつがクロウ。この木で雨宿りしてもいいかな?」
「別にいいわよ。私の名はタード。キジバトよ。」

タードは巣で待っている子どもたちに、何やらミルクのようなものを与えた。
「へえー、鳩ってミルクを与えるんだ?」
「そうよ。鳩の仲間だけね。」
そんな話をしているうちに雨と風は急に強くなり、天気は嵐になっていくようだった。
風は鳥たちが飛べないほどに強くなってきた。
「こりゃ大変だ。嵐になるな。」クロウが言った。

夜になるとますます風と雨が強くなった。
ゴーゴーという音が凄まじく、木の枝は大きく揺れていた。
タードは巣から子どもたちが落ちないように必死に守っていた。
それでも容赦なく風はタードの巣を大きく揺らした。
「まずいな。巣ごとタードの子どもたちが嵐に飛ばされてしまう。タード、君は体が重いから枝に乗ってたらかえって危ない!一旦地面に降りてオレに任せろ!」
そう叫んだクロウは、ふいに巣まで飛び上がり黒い羽を大きく広げた。
羽を広げたクロウはタードの巣と子どもたちに覆いかぶさる格好になった。タードの子どもたちは嵐に対する恐怖で震えながらじっとしていた。
クロウの広げた羽は、まるで黒いテントのように巣と子どもたちを雨と風から守った。

一晩中そうやってクロウは、タードの巣を守った。クロウは雨宿りどころではなく、背中はずぶ濡れだった。
朝になり、嵐は落ち着いた。一晩中タードの巣を守ったクロウは、やっと地面で翼を休めることができた。
「クロウ、助かったわ。いつもひどい嵐が来るたびに、私たち鳩の仲間は巣を飛ばされたり、命を失う仲間もいてひどいめにあうのよ。ありがとうね。」
クロウは恥ずかしそうに、下を向きながら大きな体を揺らしていた。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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