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ロックの冒険(12)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

イソシギのリズは泣いていた。
この悲しみは当分癒えないような気がしていた。そんな時ロックとクロウに出会った。
「なんで泣いてるの?」とロックが聞いた。
リズには恋人がいた。恋人の名前はバートンと言った。
リズは本当はバートンのことが今でも大好きなのに、自分からさよならを言ったらしい。

「ねぇリズ、立ち入ったことを聞くようだけど、なんでバートンのことが好きなのに、さよならをしちゃったの?バートンも傷ついているかもしれないよ。」
リズは泣きながらこう言った。
「私の右足を見て」そう言ってリズはクチバシで自分の右足を指した。
リズの右足は、指の何本かが何かにもぎ取られたように失われていた。
「昔ね。水辺でエサを探していた時、草むらの中から突然猫が襲いかかってきたの。私はとっさに逃げようとしたんだけど、猫はすばしっこいでしょ。私の足に噛み付いたのよ。私は必死に羽をばたつかせて逃げようとした。命は助かったんだけど、この右足は猫に噛まれて指を失ってしまったのよ。」
ロックとクロウはふに落ちない表情でリズの話を聞いていた。

「足の指がないことと、バートンにさよならしないといけないことと何か関係があるの?鳥だから足の指が無くても、飛ぶのには苦労しないと思うけど。」
リズは悲しい目をしながら、バートンにさよならを言った訳を話した。
「ああバートン!とてもハンサムでいろんなことを知っていて、とても優しいバートン!彼はこんな指の無い醜い女を選ぶかしら?
そうバートンには、彼にふさわしい女性がいいのよ。だから『もっといい人を見つけて』と言ったの。」

ロックとクロウはじっとリズの話を聞いていた。
「ねぇリズ、バートンの気持ちも確かめないで一人で悲しんでていいの?」
ロックはリズにそう話しかけたが、リズは下を向いて泣いてるばかりだった。
「ねぇリズ、バートンは今どの辺にいるの?」
「彼は、ここからだいぶ離れた河原にいると思うわ。」
ロックとクロウは目配せしてうなずいた。
「リズ、君はしばらくここにいてくれるかい?」
そしてロックとクロウは、河原に向かって飛んでいった。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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