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ロックの冒険(27)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

翌日ロックとシュラーは森の奥、すなわち女王ミニベットがいる大きな木の場所へ、こっそりと向かっていった。
そこには今はミニベットが枝にとまっているだけだった。
「よし、まだアオゲラやイカルたちはいないな。」シュラーが言った。
ミニベットは枝で毛繕いをしていた。女王の名にふさわしく、紺色の美しい羽の一つ一つを手入れしていた。
ミニベットの周囲を見渡してみる。一見鳥は何もいないようだが、よく見ると奥には小さな石がひとかたまりになって置かれている。「あれは魔法で石にされたオレの仲間さ。」シュラーが言った。
一つの可愛らしい鳥の形をした石があった。
ミニベットはそれを自分の傍らに置き、時々眺めている。
「あれは?」ロックが聞いた。
「オレも詳しくないが、お気に入りのシジュウカラがいて、いつでも女王が気休めに眺められるように、ああやって石にされたらしい。」
「あれがきっと、ムクドリのスターリングの友だちのティットなんだ。」

ロックとシュラーは、西と東の空に飛ぶ準備をした。
「シュラー、いいね。上空で僕がフクロウのローリーを呼ぶ。魔法を解く言葉を教えてもらったら、一緒に叫ぶんだよ。」
2人は同時に飛んだ。2人が空でホバリングの体勢に入った時だった。
ロックの方へ猛烈なスピードでアオゲラのグリュンたちが襲いかかってきた。
シュラーの方を見るとイカルのグロスビーたちが遅いかかっている。
「おい、イソヒヨドリ、お前たちが来るのを待っていたぞ。せいぜい女王に命乞いをするんだな。へへへ。そしておとなしくミニベット様の手下になれ。」
グリュンはロックの羽をむしろうと爪をたてた。別のアオゲラはロックに噛みつこうと横から突っついてくる。
ロックも必死に応戦した。しかし次第に力を奪われていった。羽の何枚かはむしり取られ、突かれた体は傷だらけになった。
「もうダメかもしれない…ローリーはどこにいるの?」
そう思った時だった。 

「ロック!待たせたな!」
遠くの方から白く大きな鳥が群れで飛んできた。
「ウミネコのテイリーだ!」
テイリーが仲間を連れて助けにきたのだった。
ウミネコの群れの中にウミネコ以外の鳥も混じっていた。
よく見ると、トビのミラン、ヒヨドリのブルース、イソシギのバートン、ムクドリのスターリングもいる。
「おいロック、皆で助けにきたぞ。」バートンが言った。
テイリーたちはアオゲラに圧倒的な数で襲いかかり、追い払った。シュラーを襲っていたイカルたちにも追い払った。
「あの枝にいるやつが女王ミニベットか?」テイリーが言った。

女王は怒りの目でロックやテイリーたちを見た。「おのれ、お前たち、全員を石にしてくれるわ!」そう言ってミニベットは長い2つの翼を大きく広げた。そうやって魔法をかけるのだ。
「ははは、思い知るがよい!」ミニベットは薄ら笑いをしながら魔法をかけようとする。
すると突然「ギヤー!」という苦しそうな声を出して女王ミニベットが羽をばたつかせた。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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