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ロックの冒険(8)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

スポッティ親子を後にして、ロックとクロウは川を上っていった。
ちょうど川の中流くらいまで飛んで、2人は休憩していた。
ふと見ると、川に打たれている杭の上に一羽のカワウがとまっていた。
だけどカワウは何か悲しい表情をしていた。

「どうかしたの?」ロックが聞いてみた。
それでもカワウから悲しい表情は消えなかったな。
「僕の名前はロック。隣にいるのは友だちのクロウ。君は?」
「僕?僕の名前はコーモラン」
よく見るとコーモランは泣いてるようにも見えた。「ねぇ、コーモランどうしたの?何か悲しいことがあったの?」
コーモランはロックの方を向き、こう言いました。
「ねぇ、あそこにいる鳥を見てよ。」とクチバシを少し離れた竹林の方を指した。

その竹林には、たくさんのサギの仲間が集まってさぎ山になっていた。まるで緑の中に白い宝石が散りばめられてるような景色だった。
ダイサギ、コサギに頭がオレンジ色のアマサギもたくさんいる。
コーモランは悲しそうな表情のままで、ロックたちにこう言った。

「あそこにいるサギたちが僕にこう言うのさ。『お前の羽は黒くて汚らしい。悔しかったら俺たちのような白い羽にしてみろよ』って。」
クロウの目がつり上がって言った。「俺の羽だって黒いぜ。黒がそんなに嫌か?」
「そうじゃないけど、たしかにサギたちの綺麗な白い羽に比べたら、全然綺麗じゃないでしょ?いつもあいつらにいじめられるんだ。」
コーモランはそう言っていっそう悲しい表情になった。

空は夕陽がかかって、オレンジ色に変わりつつあった。コーモランは沈む太陽をずっと眺めていた。
「あー、僕の羽も綺麗な白い羽だったらなぁ。」
夕陽を見つめているコーモランの目に涙がこぼれた。夕陽がコーモランの涙に反射して静かにきらめいた。
「ねぇコーモラン、そんなことで泣くのはおよしよ。君は気づいていないかもしれないけど、君の瞳はサギたちに真似ができないほど美しいよ。君ほど綺麗なエメラルド色の瞳を持った鳥は他にはいないよ。」ロックはコーモランにそう言った。
「そうだぜ。俺だって黒い羽だけど、別の鳥に何か言われたら無視するだけさ。気にすんなよ。」
コーモランはロックとクロウの方を向いてニッコリ笑った。
エメラルド色の瞳は夕陽に輝いていて、いつの間にか笑顔になっていた。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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