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ロックの冒険(17)

僕の名前は「ロック」。イソヒヨドリだよ。
森を目指してハシボソガラスのクロウと旅をすることにしたのさ。

だんだん森が近づいてきた。そんな時だった。ロックがナーシーに出会ったのは。
キビタキのメスのナーシーは、広葉樹が茂る木の根元で、ちょこっと座っていた。
つぶらな瞳と愛らしい表情にロックは一瞬で恋に落ちてしまった。
ロックが最初にナーシーにかけた言葉は、「ここにはエサはたくさんあるの?」だった。ロックはなんとも気の利かない言葉をかけてしまったものだと後悔した。

明らかにロックよりお姉さんであるナーシーは、余裕の表情でこう返事をしたんだ。
「エサ?エサならこの辺の林にはたくさんあるわ。別にエサがあるからここにいる訳じゃないわよ。ほらここはお日様の光がとてもいい角度で差してくるでしょ?毛繕いに一番いい場所なのよ。羽の様子を見ながら毛繕いができるのよ。」
そう言ってロックを見た。
大人のキビタキの女性に見つめられて、ロックはドギマギした。
「えーっと、えーっと名前を教えてもらってもいいかな?」
ロックは相手の顔をまともに見れないまま、恐る恐る尋ねた。
「ナーシーよ。あなたは?イソヒヨドリのようだけど。」
「僕の名前はロックっていうんだ。」いつもは青いロックの顔が、ほのかに赤みをもった。
こんな素敵な女性がいるものだろうか?本当に可愛い鳥だ。
ロックは、本当に恐る恐るナーシーの顔を見るだけだった。

「ねぇロック、あなたここで何やってるの?あそこにいるカラスは誰?」と後ろの方でエサを探しているクロウを見てナーシーが尋ねた。
「僕は森へ行く途中なんだ。あそこにいるのは友だちのクロウ、2人で旅をしてるんだ。」
ナーシーはロックに興味を持ったのか、ロックにいろんなことを聞いた。
以前はどこにいたのか?どうして森に行こうと思ったのか?
ナーシーに聞かれていることには答えていたけど、ロックはナーシーのような可愛い鳥と一緒にこうして話をしているだけで舞い上がってしまい、何を話せばいいのか分からなくなっていた。
「ねぇナーシー、君はしばらくここの林にいるの?」
「そう、そのつもりだけど、あなたは?」

実はロックはクロウとは、しばらくここで休息をとったらさっさと森に向かおうと言っていた。ところがロックはこう返事をしてしまった。
「僕らもしばらくここにいるつもりなんだ。」
後ろの方で、ナーシーとロックの様子を見ていたクロウは「はあ?なんだそれ?」と、あきれたように黒い右の翼を頭に当てて目を吊り上げた。

(次回に続く)

#小説 #冒険小説 #野鳥

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