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チューズ・フランス!(3/15)

"Choisir la France(フランスを選ぶ)"という非常にキリッとした意志の感じられるスローガンを掲げるフランス大使館へ、ついに書類の提出に行った。フランス語で"アポイントメント"のことを"ランデブー"というが、この言葉にロマンチックだったりエロティックな印象はない。どちらかというと「アポイントメント」がもたらすイメージに近いもののような気がしている。知ったかぶりっぽい余談だ。

「むしろフランスを選ぶために来たんですけれども、あなたがこちらを選んでくれないと(=VISAを発給頂かないと)フランスを選ぶことは出来ないんですよこちとら」と一億冷やかに総ツッコミしそうなスローガンが、よりによってVISA申請窓口の真後ろの壁に大きく書かれいるものだから、口を尖らせたくもなるのである。勿論、記念写真は撮った。

会社員時代に幾度となくフランス大使公邸にも伺ったし(大使から招待を受けているのはフランスのスター達であり、私はプロダクトマネージメントの立場(雑に言えば身の回りのお世話係))、その時期の文化参事官とは朗らかに会話をしてきたはずだが、会社を辞めて10年と少し経った今、こんな気持ちでここを訪れるなんて妙な気分である。
有栖川公園の近くのカフェでは昔よく顔を合わせていた隣のオフィスのフランス人にもばったりと会ったが、なんとなくそそくさとカフェを後にしたのだった。

Choose France このすぐ裏がVISA申請窓口

有栖川公園の近くのカフェでぷらつくほど巻いて広尾まで自転車を漕いだのには切ない理由がある。これを読まれている方々には是非ともハンカチの用意をお願いしたい。

東京にマンションを借りて以来、上の階の人の騒音に度々ため息をついてきたのだが、実は騒音主がお隣さんだった事が最近判明した。朝7時くらいからガンガン洗濯機を回し(旧型なのか、わんぱくな音と振動がする)、子供達は叫ぶは駆け回るわの大騒ぎ。8時台にはDIYで棚でも作っていらっしゃる?と言わんばかりのパーカッシブな音色が大地を鼓舞する。その上、引き戸の建て付けはなんとかした方が良さそうな音でそれらに呼応していくのである。

上の階にせよ、お隣にせよ、子育て中のご自宅に「子供の足音とか声がうるさい」と指摘するのは、子供にも親にも酷だよなと思い、長らく忍耐の方法を考えてきた。自分の育った環境に起因するかもしれないが、こういうご近所さんとのいざこざが発生した時に、親のイライラが子供に向いて、子供たちがきつく叱られて抑圧されてしまったり、自由度の低い生活を常に心掛けなければならなくなるのは心苦しいのだ。
高機能の耳栓をするとか、朝活したら気にならないかなとか色々工夫をしてきたが、それでも余裕がない時、疲れている時、仕事で早く寝れなかった翌日の朝っぱらの、この時間ロスはイライラとしてしまう。

ある意味で自己中心的な物言いになるが、期限付きだったら検討してくれるかも?「私が退去するまでの40日ほど何とかなりませんか」と管理会社の方を通じて相談しようと意を決したが、結局今日も入電をせずにお茶を濁していた。どうしてもイラつく親と、その親に何かと怒られる子供達を想像してしまう。お隣のご両親が殴ったり蹴ったりヒステリックに怒鳴ったりするとは限らないのに、人は基本的に自分の生い立ちをベースに思考してしまう生き物だ。

朝活と言っても9時起きの私にとって7時前に起きるのは結構身体にダメージが強く、せめてもということで有栖川公園でコーヒーを飲みながら太陽を浴びてみた。太陽の恩恵によって、私のイライラをチャラにしてもらおうという目論見である。(ここで、先ほどの旧知のフランス人に遭遇)

それなりにチャラになったイライラだったが、私のVISA(フリーランスとしての就労VISA)は難易度が高いものなので、審査に時間がかかる旨を聞いた。芳しくない雰囲気で面談が終了。「失った分のイライラは、すぐに取り戻すんだ!」みたいな、ダイエット後のリバウンドのような生存本能が勘違いして顔を出してくる。

先人たちの体験談を聞くところによると、3ヶ月くらい合否の報せがなく放置され(ている間は勿論パスポートは預けたまま)結局VISAは下りなかったとか、2月末に渡航予定の方のVISAがまだ下りていないまま(本日は3月15日)進展や合否を問い合わせる権利がないとか、不安にさせられる話ばかり。

こういうものは心でがっしりと受け取ってしまうと凹むだけなので、そういう可能性として頭にインプットして収める。渡航予定日までにパスポートを返してもらえされすれば、合格だろうが不合格だろうが一旦フランスには行こうと決めている。3ヶ月は滞在できるのだから、その間に次の手を考えれば良い。
しかし、通常、VISAの発行には2〜4週間の審査期間と書かれているが、どの国もお役所は我々平民と違って、特別ルールや例外勤務態度自由制が設けられまくっているようである。羨ましい限りだ。

いずれにしても、今の家は解約し、殆ど全ての持ち物を売るか譲るか廃棄しようと思っている。日本の家がなくなってパリに行けないという最悪のパターンだと金銭的には大損となるが、それはそれで経験として面白い気もしており、人生単位で考えるとどう転んでも元が取れると踏んだからだ。挑戦は、した時点でだいたい勝ちパターンだと思う。

奇しくも5月に公開の映画のプロモーション期間が重なっており、本日も吉田監督との収録で赤坂まで自転車を漕ぎ、それから帰宅した。帰宅してからはしっかり通し練習ができたし、セットリストもしっくりきた。

今日まで本当に頑張ったのだから!と奮発して寿司でも買うため駅前まで足を運んだが、実際に寿司コーナーに行くと1500円の寿司が高く感じられ(いつまで平成の物価やってるねん)、結局5%引きになっていた貝尽くしパック780円を購入した。妥協のようだが、貝は大好物なので充分に贅沢な気持ちに浸れた。妥協などという言葉をあてがったら貝に失礼というものである。"貝には貝を"とその昔ハムラビ界隈で言われていたそうなので、コストコで買ったシジミ汁も一緒に添えた。こうして貝たちのぶつかり稽古は美味しく終了した。

その後はこの日記を書くまで修正の依頼が来ていたテレビ局関連の音楽制作の仕事を。修正の方向性が曖昧なまま作業をするのはモヤモヤとするが、作業自体は始まれば大抵楽しい。
それから、来週からクランクインする映画の脚本(最終稿)が丁度ポストに入っていたので、これは糸島で読もうかなと荷物に詰め込む。

結局使い所のなかった皆様のハンカチは、そっとしまって頂ければ幸いである。そんなわけで、また明日。

貝たち


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