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シードビレッジ味坂駅店OPEN!!

9月8日(日) ~西鉄電車の旅~ 
「たねちゃん暑気払いしようよ!!」普段はお客様から誘われたりしないのだが、季節の変わる頃、決まって誘ってくれる人がいる。オープン初期からお店にずっと来てくれている大切な常連様。私の用事を推し量って決して無理に誘ってはこないところがいつも気が楽で、それに甘えて流れてしまうこともあるのだがそれでもお店に来て、懲りずに声をかけてくれるのは嬉しいし何よりありがたい。
6年前にオープンした小さな私のコーヒーショップは、地域の常連様を中心に、毎日がドラマのように活き活きと生きている。オープン直後からずっと見守ってくれるお客様というのは本当にありがたい。会うたびに私が勝手にだが、「サボるな!昔はもっと…」などと言われてるような気持ちになるからだ。
「美味しい焼き鳥屋予約しとくから~♪」
「お願いします。では、9月8日に。」
二人での食事は久しぶりで、楽しみだ。 

9月8日(日) 
私は久留米に行くことすら久しぶりだし、新しく出店した珈琲屋さんにも顔もだしたい、時間をとって昼から向かうことにした。西鉄天神駅は蒸し暑いなか、今日もたくさんの人で溢れている。
西鉄天神大牟田線、下り線。久留米行き急行。
座って天神薬院の流れる景色を眺める。みんな私が明るく元気な印象を持っているのかもしれないが私にも悩みのような考えるべきことはたくさんある、これからお店どうしていこうか。品質の高い珈琲は出しているのに、知名度がまだまだなのか、打ち出し方が悪いのか、私が満足できる手応えのようなものは感じない。窓から過ぎるたくさんのお店に、あそこはどうやっているのだろうかなどと考えをめぐらせていた。
だんだんと都心から離れていき、二日市を過ぎた車窓からは幼少住んでいた沖縄糸満の風景や、地元の五島を思い出す。小郡を過ぎるととたんに住宅が消えた。駅間が長いのか電車のスピードはグンとあがり、広がる田園風景が胸のもやもやを吹き飛ばし、私の気持ちを優しくしてくれた。
宝満川に向かって、電車はゆるやかな上り坂を上り、小さな駅を過ぎた。
!?
いま、駅に何かあった。
2枚の横断幕のようなものには
「シードビレッジ アジサカ駅店」と「COFFEE」の文字が一瞬であったが確かに見えた。
なんだろう。何もないところで何をしているのだろうか。文字通りコーヒーがあるのかな?あんなところで珈琲?売ってるのか?わからない。
時間はあるが、久留米はもう目の前である。そのまま行くか引き返すか一瞬迷ったが、次の宮の陣駅で私は飛び降りた。
それはもうなんの確信もない直感だが、なにかがある気がした。反対の上り線ホームへ向かい時刻表を見る。
20分後!? 普通電車で隣駅に行けるのは30分に一本しか来ないのだ。
そうだよな。
ベンチに座ってスマホを取り出すとGoogleに 味坂駅 とうつ。
味坂駅.Wikipedia:『駅舎は撤去。接近案内がない。無人駅の中でも唯一味坂駅だけが乗降を車掌さんが管理する。平均乗降客数190人/1日』
本当に何もないな。。。

電車から降りるとホームには小さなコーヒーショップがあった。
それを目の前にして急に聞きたいことが溢れてきた
『どうして・・・』
「ほら。田園風景。コーヒー飲みながら田園風景、落ち着きますよ。駐車場にはタープがあって人もいます。座るところも少しだけですが準備しています」迎えてくれた男性が手を指して教えてくれた。
『今日は何かのイベントでの出店なんですか?』
「そうですねぇ。今日は、西鉄様にここの椅子を撤去していただいてね、シードビレッジが1日だけ出店させていただいてるんです」
たっぷりの笑顔で男性がコーヒーをドリップしてくれた。
野外なので香りなんてすぐ飛んで行ってしまうだろうに、この空気感のせいなのか、あたり一面はコーヒーの香りで包まれているようにも感じた。
「はい。お待たせしました。自然のなかで飲むコーヒーって格別に美味しいですよ。あ、美味しいって、そう言えば、美しい味って書きますね。味坂駅の景色って、美しいっていうか味があるっていうか。」
勝手に話しを続けるあたり、かなりマイペースなヒトとみた。そのとき背中を電車が通過した。電車が起こした風でTシャツがなびく。
『ホーム、狭いですね。ちょっと怖くないですか』
「さっきから通るたびに迫力あって 笑 貴重な経験です。珈琲ありがとうございます。ゆっくり過ごしていってください。どうせ30分は電車は来ないですから。向こうにはうちの常連様たちも騒いでますから。すぐお友達になれますよ」
何もない周りを見渡しながら降りていくと、楽しそうにおしゃべりをしている人たちがいた。初対面じゃないような笑顔で皆が迎えてくれて、私は時間を忘れて味坂駅でのひとときを「アジサカ駅ブレンドコーヒー」を片手に初対面のひとたちとおしゃべりで過ごした。楽しすぎて一本送ってしまった。もう30分はこないけど、楽しいからそのときはどうでもいいと思った。
そうだ。人がいての珈琲なのだ。また来週から笑顔で珈琲を淹れよう。きっととっておきの珈琲を淹れることができる。胸の底から湧いてくるワクワク踊るような気持ちを抱えて味坂駅をあとにした。

「たねちゃん。その人の名前とかお店とか聞いた!?」焼き鳥とビールを並べながら聞かれる。
「んー。。。シードビレッジアジサカ駅店って書いてましたよ? 1日限定だって言ってたけど、名前はなんか答えてくれなくって。私にじゃないけど『ばりスター』だとか呟いてたかな、ふざけたおかしな人でしたよ。結局何考えてんでしょね、あんなところで珈琲売って」
酔いがほどよく回ったのもあって幸せな気持ちで家に向かった。
また、明日から頑張ろ。お店に来てくれるお客様のために。あの人より、私のほうがよっぽど美味しいコーヒー淹れることできるんだから。
よぉし、やるぞぉ~。
                         ~ seedvillage ~


                告知
日時:9月8日(日)10:00~18:00 
場所:西鉄天神大牟田線 味坂駅 上り線ホーム
 小さなコーヒースタンド「シードビレッジアジサカ駅店」が1日限定でオープンします。

当日は「アジサカ駅ブレンドコーヒー」をペーパードリップで。
当日限定ドリップバッグとコーヒー豆の販売も行います。

近くに遊べる場所があるわけではありませんが、日よけのタープを一個出して、気持ちばかりのテーブル椅子を並べようと思います。目の前の宝満川は泳ぎや釣りなど遊べるほど整備されているわけではありません。
なにもありません。何もないけど、シードの常連様はきっといます。何もなければシードが、みんなが価値を創ります。みなさま、お待ちしております。

いただいたサポートをもとに、もっと美味しくおもしろいコーヒーを皆様にお返しします。