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【ネタバレ有感想】『本好きの下剋上』第五部を読了したオタク、無事放心。

はじめに

あ~ 良かったねぇ~。

好きポイント語ろうね~。



1.作品全体を通しての魅力


1-1. 緊迫と安心

何事も順風満帆に進むわけではなく、むしろ波乱万丈と言えるほど苦難の連続に見舞われていたのがこの作品の大事な味だと思う。事件の解決自体は割とあっさりとしているけど、ピンチに「どうせ全部主人公が解決して終わるんでしょ?」と簡単には思わせない緊迫感があった

「全てを主人公の超パワーで解決! 良かったね!」だったら読み終わった後にこんなに放心してないと思う。「面白かったね」「このキャラ好きです」くらいで終わってたし記事も書いてないんじゃないかな。

「解決はあっさりしている」というのも主にフェルディナンドが有能すぎるおかげであって、ローゼマインは自分の手の届く範囲でできる限りのことを頑張ったというだけだ。エーレンフェストの防衛なんて、ジルヴェスターが奇跡的に即死毒を回避したから何とかなったものの、ローゼマインの知らない所でゲームオーバーになりかねないピンチだった

物語としての緊迫感に対して、キャラクターがブレずに安定して立っているという安心感が作中を通してあったのも良かった。キャラクターが「物語」に振り回されているのではなく、「出来事」に振り回されて動いていた。

キャラクターの得意不得意が確固なものとして存在していて、状況によってキャラクターが都合よく扱われるわけではなく、あくまで状況によってもともと持っていたその人の資質が良い方向にも悪い方向にも表れるという多面性のリアリティ。それがキャラクターに呼吸をさせていた。

緊迫感と安心感のバランスが本当にちょうどよかったのだ。


1-2.着実に「歩く」キャラクター

現代知識を持ち込む転生は、色々とすっ飛ばして技術に革命をもたらして終わりがちだ。しかし、本作では紙の制作に試行錯誤して、印刷の導入も少しずつ、貴族院での流行発信も一気に行うのではなく少しずつ……と、過程をすっ飛ばしすぎないところに読み応えがあった。

浦島太郎状態になったローゼマインのあの取り乱しようも効いている。
ユレーヴェはあまりにも色々と「すっ飛ばし」すぎた。あれがあったからこそ、一歩一歩の重みはさらに増したんじゃないかな。

また、1-1の話とも繋がるところだが、マインやフェルディナンド、その他大勢のキャラクターが問題を全て解決できるわけではなく、飲み込まざるを得ない困難がたくさんあったからこそ、彼らの一歩は大きく輝いていた


1-3.キャラクター同士の「双方向の」関係性、複雑な人間関係

(双方向の関係性については、2-1で詳しく書く予定)

複雑な人間関係についてはそのままの意味。マインが直接的には関わらないところにある因縁や関係(マティアスとグラオザム、ゲオルギーネとジルヴェスター、トゥーリとベンノやルッツ、アウレ―リア周辺など)そういう群像劇としての魅力も詰まっていた。

先ほども書いたエーレンフェスト防衛戦は特に群像劇の側面が強く、上手く回すな~と唸った。書籍版では各人物視点の物語が加筆されているけど、なろう版だとあくまでマインの一人称で各人の武勇伝を聞くという形で防衛戦が消化されていて、それはそれで綺麗だと思う。


1-4.『本好きの下剋上』は魔力同調薬みたいなもん

この作品にはすごい仕掛けがある。仕掛けといっても作者が狙ってやっているわけではないだろうと思ってはいるけど。

仕掛けとは、マインの本への執着やハンネローレ、リュールラディなどの本を楽しみにしている空気感が、この作品にハマリ始めて「続きはよ! 読ませて!」と思っている自分にリンクして感じられるということだ。

倫理観は現代日本のそれとはいえ割と尖った主人公だから、最初は一歩引いたところから読んでいたつもりが、気付いた時には物語に同調している。
恐ろしいぜ……。


2.第五部終盤(11巻、12巻あたり)について


2-1.女神の化身。そしてフェルディナンドォォ……

正直、「女神の化身」というサブタイトルを見た時、なんやかんやでローゼマインが神々の力とグルトリスハイトで全てを取り戻して大団円! というのを想像していた。確かに大団円ではあったんだけど、「女神の化身」になることそのものが一番ヤバい困難になるとか聞いてない

戦いの後には魔石恐怖症、メスティオノーラ降臨で家族の記憶を失い、神々の力で死にかける……そうだったよ、これ『本好きの下剋上』だったよ。そう簡単にいくわけないわな! 

でも考えてみると、身に余る神の力を手放して人間としての歩みを取り戻すという流れには、物語のテーマとは少し違うところにある、作者の人間讃歌が反映されているような気がした

まあ人として立ったところで神様たちには振り回される運命にあるんだけど(ハンネローレの貴族院五年生を読みながら)

さて。生活自体に問題はなかったけど、記憶喪失はこの作品で最も厳しい困難だったと思う。特にフェルディナンドにとって。マインに遺言を発している時点でマインへの感情の重さは分かってたし、救出時の「家族同然」もウルっときてしまったんだけど、正直ここまで重いとは思ってなかった。100kgくらいだと想像してたら1tくらいあった。

やっぱ意識(記憶)の同調は神シーン。3回読み返して3回涙目になってる。
というか記憶を失ったマインにされた「家族同然」の話、あれ可哀想すぎる。希望を持ってからな分、ヴェローニカからの仕打ちより堪えてそう。

あと伏線の回収が綺麗すぎる。婚約魔石の言葉もズルじゃん。
読んでてマインと同じこと言っちゃったもん。


……と、フェルディナンドの激重感情にばかり目を向けてしまったが、ここで「双方向」の関係性という魅力について語っておきたい。

自分は一めんどくさい関係性オタクとして、一方的な激重感情だけでは「関係性」について語るのは難しいと言いたい。

それはキャラクターの深みであって「関係性」の深みとは違うところにある(領域は隣り合っていて重なる部分はあると思うし、だからこそ語ろうと思えば関係性として語れてしまう)からだ。

感情を相手が認識して、何らかのリアクションでもって返すことでようやく完全な意味での「関係」が出来上がるのだと思う。そういう意味で、フェルディナンドから記憶を見せるまでのマインとフェルディナンドの関係は、ある意味では深く、ある意味ではとても浅かった。一方的な想いと一方的な想いがぶつかり合っていたとでも言うべき部分が多く、キャッチボールとしては上手くいっていなかったからだ。

意識の同調でフェルディナンドの感情が可視化されて、ようやくマインとフェルディナンドの関係は完成した。ローゼマインがアナスタージウスに言った「率直に話し合って伝えろ」がそのままマインとフェルディナンドの関係にも当てはまった形になる(マインはずっと率直だけど、フェルディナンドが心情を隠していたから)。


おめでとうマイン、フェルディナンド。
俺、婚約式のエルヴィーラと大体同じテンションでこの記事を書いてる。


2-2.最終的なマインの心情について

個人的に、即座に「恋」にしないでくれたのは本当に良かったと思ってる。恋の段階を飛ばして愛だけカンストしてるのがマインだよ。
もちろん「恋するマインなんて嫌だ」なんて思っているわけではない。急に恋に目覚めてほしくなかっただけだ。12巻で加筆されたエルヴィーラとのやり取りにあるように気持ちは「後からついてくる」んだと思うし、仮にそうならなかったとしても、それはそれで良いと思う。

一応、ギュンターを「理想の人」と語ったことが婚約式でフェルディナンドからもらった魔石で回収され、フェルディナンドが「理想の人」の条件を満たした以上、マインの心に恋が存在するスペースは出来上がっている。

これから恋が少しずつ萌芽していくのか、すでに恋はしているけど認めたくなかったり、まだ自覚できていないのか。それともずっと家族愛なのか。その微妙なバランスが今のマインの愛おしさであってアーカワイイ。


エピローグがルッツ視点なのも良かった。マインの心情としては今までと大きな変化はないんだろうけれど、第三者視点で見るとダダ甘カップルっていう。「恋」も「恋じゃない」も両方味わえる欲張りセットじゃん。

「はよくっつけ」って言葉が既にくっついてるから使えないのバグなんよ。

とはいえ。
焦る必要はない。マインには今まで通り「一歩一歩」を大事にしてほしい。

本編最後のフェルディナンドとマインの絵、フェルディナンドの表情すごくない? 貴族的な無表情の中に今までで一番の穏やかさがある。泣ける。


3.キャラクターについて語ろう

流石にメインキャラだけでも全員は無理! 特に語りたい人だけ!
申し訳ないけど、前に書いた記事とほぼ同じことになりそうな人はカット。だから下町の人たちはあまり出てこないと思う。

3-1.ヴィルフリート

あえて最初に兄上の話をしよう。
あのね、なんというかね、悪い奴じゃないんだよ

最終巻の人気投票でも20位に入ってなかったし、実際、物語終盤では良いところはあまりなかった。彼の言動にイライラした人も多いんだろう。でも悪いやつじゃないんだ。兄上の印象が下がりまくったところで完結してるから、悪い印象が強くなりすぎてるところもあると思う。彼のいいところを出しづらい物語だったというか。そもそもずっと向いてないことをやり続けてるんだから、悪いところが目立つことになるのは当たり前なんだよね……。

(あまりにも等身大の男子すぎるんだ……)

彼は物語において絶対的に必要で、欠けてはならない人物だった。ヴィルフリートがいるからこそ、人間関係のドラマは味わいが濃く複雑になっている。ありがとうと言いたい。

正直、自分としても人気投票でヴィルフリートに票を投じることはない。3票あればダームエル、エルヴィーラ、ハンネローレに入れる。
もしも今後ヴィルフリートがすごく活躍する何かがあっても彼が「1番好きなキャラクター」になることはないだろう。

自分は「魅力的な物語の主人公、ヒロインが魅力的なのは大前提だ」と思っているところがあるので、人気投票企画などでは主人公たちは一旦置いておく、というタイプ。ローゼマインもフェルディナンドも大好きだよ。

でも俺はヴィルフリート憎めないし、かなり好きだよ。
皆さんはどうだろうか。


3-2.ジルヴェスター

前記事のキャラクター紹介で「扱い難しいな……アウブだってところまで書いちゃうのはちょっとネタバレが過ぎるし……でもそこを隠すと何も伝えることないよなぁ……」ということでバッサリカットして「エーレンフェストの領主」として濁したので、やっと語れる。

教育の過程とか積み重ねてきた年月の部分でちゃんと領主ができているし責任感もあるけれど、彼の悪いところを見ると大体ヴィルフリートと一緒になる。マインが思う「ジル様」はほぼヴィルフリートだから、「ジル様」要素が多く出すぎると印象が悪くなったんだろうな。

でも彼の土台に「アウブ・エーレンフェスト」が存在していたからこそ、彼は良い方向に輝けたんだと思う。さらに言うと、ローゼマインが貴族院に行ってからは一気に苦労人ポジに収まって「ジル様」は鳴りを潜め「アウブ・エーレンフェスト」の面が前面に出てくるようになった。そのせいで、たまに出てくる「ジル様」要素がチャームポイントみたいになっているのはちょっとズルい


群像劇において重要な役どころをもらったのも美味しかった。
ただゲオルギーネ視点を知ってしまうと嫌な奴。それでもジルヴェスターは過去を精算しきったとは言わないまでもちゃんと背負った。偉い。

ところでヴィルフリートに直感と豪運って受け継がれているんだろうか?


3-3.フロレンツィア

結局、ローゼマインの出生を知っているのはあの家族の中でジルヴェスターだけだったし、ローゼマインとの距離もあまり近くはなかった。そのくせローゼマインが起こす問題には翻弄されているので、ジルヴェスターより苦労人。

エーレンフェスト防衛戦でヴェローニカの唯一の誇りを踏みにじる書き下ろしが面白すぎる。貴族らしく計略を立てる人だったしヴェローニカへの憎しみも大きかっただろうけど、あんなあからさまに悪い顔するんだ……。

まあヴェローニカは許されないからね。フェルディナンドの問題もヴィルフリートの問題もヴェローニカが悪いし、あの程度の嫌味じゃ生ぬるいくらいだけれど、ヴェローニカを直接見ることがなかった読者としてはとても楽しい追加エピソードだった。


3-4.マイン/ローゼマイン

作者から直々に地雷女みたいに言われてるのが面白い。
でも実際、この作品をマインに焦点を当てて振り返ると「本しか目に入っていない地雷女が異世界で経験を積んで愛を育み、優秀で立派な地雷女に成長する物語」だった。フェルディナンド様と一緒にいる限りは爆発もそれなりに上手く制御するだろうから安心やね(完全に制御しきれるとは言ってない)。

なんというか、キャラクターが生きていると感じるこの作品においても、特に説得力が強いと感じる人物の一人だった(まあ主人公だからそりゃそうなんだけど)。魔力量は多いが最強ではないし、体の弱さも相まって良いパワーバランスだったんじゃないかなと思う。


まだ第四部を読んでいる頃、第五部の表紙を見て「お、やっと成長するのか!」とか思ってたけど、あんな成長のしかたをするなんて思わんかった。でも成長前と成長後で特にBP(バブみパワー)に変化はなかったね。

しかしBP5か……雑魚め……と侮ってはいけない。なんとマインには「【フェルディナンド】に攻撃する時、BP+10000」とかいうトンデモ特攻能力があるのだから。ちなみにエーファはBP3000、エルヴィーラはBP2000+(隠し部屋とのコンボで+5000)である。


3-5.フェルディナンド

ヒロイン。実質赤ちゃんみたいなもん。ユルゲンシュミットで最も優秀な赤ちゃん。最初のマインとの同調もバブみの塊だった。「意識同調」とのコンボによってマインのBPはさらに+10000! 読者は死ぬ。

彼にとってはマインが完全なる例外なだけであって、マインと家族になった今でも女性不信は治ってないはずだから、本当に運命的な出会いで良かったなと思う。彼にとっての女性は基本的に貴族のことだから。

でもローゼマインの家族として、エルヴィーラのことは少しずつ信じていってあげてほしい(アレキサンドリアにいる以上、接触の機会はあまりないだろうけど)。……いやそれは別の意味で無理だな。本のネタにされる。


物語終盤での2回目の同調は本当に凄まじいパワーがあった。どうしてここまで胸に訴えかけてくるんだろうと思って考えたんだけど、書き方が上手いということの他にも、このシーンが「同調」であったということが大きかったんだと思う。

フェルディナンドが、小さな体で必死に家族を守ろうとしているマインの姿を見つめて感嘆し、自分ではかばえないレベルの罪に足を踏み入れることに危機感を覚えている。(略)今の私にはフェルディナンドの心情に共感するほうがよほど容易い。(p.36)

(ローゼマインとトゥーリとのささやかなやり取りを見て)
……あぁ、もっと見ていたい。
そんな憧憬に似た思いを感じたのは私なのか、フェルディナンドなのか判別が難しいくらいだった。(p.46)

『本好きの下剋上』第五部12巻より 引用

マインとフェルディナンドは、ずっと対象的な人物として描かれてきた。その描写が最大限に活きるのが「同調」だ。つまり……

「感情を表に出さない」かつ「マインへの想いはあっても基本的には冷徹な貴族」だったフェルディナンドの感情が、「感情を表に出す」かつ「貴族らしくなく、情緒豊かで思いやりに溢れている」マインに流れ込んでくることによって、フェルディナンドの感情がかなりの割合で「マインの感情」としてまっすぐ、温みを増した状態で読者に届くようになっている

ただフェルディナンドの独白を読むよりも圧倒的に読者の胸に響く、素晴らしいシーンだったと思う。読者はもう完全にマインの情緒に慣れていて、マインの感情を受け入れる体制が整っているわけだから。


あと、マインの帰宅のシーンで部屋の中に招かれても「私はここで構わぬ」と廊下で立っていようとしたフェルディナンド。「今日くらいはマインと彼らの間に水を差したくない」ってことなんだろうなと思うと本当に愛おしい。本当はギュンターたちとも家族になりたいだろうし、実際あの流れで盃を交わしたけど、本当はまた別の機会にするつもりだったんだろうな……。


3-6.エルヴィーラ

俺たちのマッマ。人気投票では「出番の割に順位が高くて驚いた」と作者がコメントしていたけど、エルヴィーラはもっと高くてもおかしくないと思ってる。それくらいに好感度は高い。

ぶっちゃけエーファよりインパクトが強い母。エルヴィーラに泣かされる日が来るとか誰が予想できるか……。一般的な貴族の感覚を知った後だと、引き取るかどうか最初は悩んだとはいえ、本当によくここまでローゼマインと仲良くなってくれたなぁと思う。

マインの変える場所は平民のあの家だけれども、ローゼマインが帰る場所もちゃんとあった。アウブになったから帰ることは難しいけれど、居場所としてエルヴィーラの場所があるというのは本当に大きい。


ローゼマインとフェルディナンドの婚約式で一人だけシュタープ振ってるの控えめに言って面白すぎる。「一人だけ」ってわざわざ書かれていることや、ハルトムートの言葉の後で皆が一斉にシュタープを掲げていることから見るに、マジでただ一人感情を暴走させて先走っていただけだと思う。

そら最推しと愛娘の結婚やもんなぁ……「フェルディナンド様を幸せにし隊」的にも、一番フェルディナンドを幸せにできる人と結ばれてるわけだからこれ以上はないし、もう感動で胸がいっぱいでしょうて。


3-7.ダームエル

一番好き。

ぶっちゃけ前の記事で好きポイントは大体書いてしまったので、ダームエルについては繰り返しになるが、誰も読んでないと思うので、改めて書くことにする。というか何度でも書きたい。

「マイン」の一番の側近。個人的には彼女からの信頼が最も厚いだけでなく、彼女への忠義が最も厚い側近もダームエルだと思ってる。

ローゼマインの出生を知っている側近といえばもう一人、ハルトムートがいる。ただ、ハルトムートの方が総合火力は高いが「忠誠/忠義」の中に「信仰/狂信」が混じってしまっているので、ここは名を捧げることもなく粛々と「マイン」の大切なものを守る最高の護衛騎士を優勝とさせてほしい。


ダームエルは最初こそ下町の悪臭などに忌避感を示していたが、エーレンフェスト防衛戦において下町の家族を守るように命令を受けた時には、既に任務だからと渋々平民とやり取りするという感じではなく、彼自身の人格で兵士たちの信頼を勝ち取っていた
自分から兵士たちに気を配れる、上司にほしい男。

ハルトムートも、ローゼマインと下町の家族の繋がりが彼女の幸せにとって絶対に必要なものであるということは理解している。でも青色巫女時代を直接見ていること、下町の兵士たちと直接やり取りをする機会が多いこともあって、ダームエルの方がマインの心に「寄り添える」と思う

「下級貴族で魔力が少ないからこそ魔力を効率的に使って頑張る」というスタイルも中二心をくすぐる。

周囲からは「経歴に傷があって魔力も少ない下級貴族のくせに、なんで領主候補生の護衛騎士というおいしいポジションについているんだ」と思われているが、読者の多くは「俺はお前の努力と優秀さは知ってるからな……」ってダームエル後方腕組みおじさんになってると思う

この前に出した記事の引用

ダームエル後方腕組おじさん委員会はこちらです。

人格者だからこそ、男女の関係に関してはなかなか上手くいかないところも愛おしいよね。フィリーネと幸せにおなり。そしてマインを支えておくれ。


3-8ハンネローレ(とダンケルフェルガーの貴族たち)

ドレッファングーアに嫌われているというほど「間が悪い」ハンネローレ。その実、彼女の「間が悪い」は、

  • 「シンプルな不運」

  • 「早合点で突っ走ってしまう(空気が読めない)」

  • 「決断が遅すぎて機を逃す」

の3つが絡まりあってできている。不運や決断の遅さは完全にハンネローレの特性だと思うけど、正直なところ早合点と空気の読めなさはダンケルフェルガーの性格って感じがするよね。ハイスヒッツェとか、超特急でエーレンフェストまで来ちゃうクラリッサとか、その他脳筋騎士たちとか。

ハンネローレは思慮ある方で比較的常識人だけど、やっぱりどこかで突っ走ってしまうし、それが大体不運と重なっている。

神様はそこまで気にかけてないっぽいけど、貴族の慣用句っぽく言うなら「領地単位でほんのりとドレッファングーアから嫌われてる」ってことになるのかな。

「ハンネローレの貴族院五年生」ではドレッファングーア関連もかなり深堀りされているぞ! 


さて、ハンネローレ個人の話をしよう。


か わ い い


第五部9巻「仮縫い」のところのイラスト!
いや、特にこのシーンがかわいいだけで、ずっとかわいいんだよハンネローレ様は。優勝! しかも優しくて戦う覚悟もあるからね。連覇! 

最初は読書に乗り気じゃなかったのにいつの間にかエルヴィーラの大ファンに染まり上がったし、ほどよい距離感でローゼマインに貴族視点のアドバイスをできる存在だし、ローゼマインの友人適性はとても高い。今後も仲良しでいてくれたらなと思う。

短編や「ハンネローレの貴族院五年生」を見る限り、視点キャラクターとしての適性も非常に高い。貴族女性の中で、最もフラットにローゼマインを描写できるのがハンネローレの視点なんじゃないかなと。
とても尊敬していても崇敬まではいかないし、極端な立場にあるわけでもなく、距離が近いことで聖女じゃないローゼマインも見ている、まさに「友人」。さらに言えば、領主候補生で勝ち組領地としての貴族の常識を持っている。すげ~良いキャラクターだよね……。


3-9.ギル

あまり深く語るってわけじゃないんだけど、どうしても浦島マインに触れたかったので。

クトゥルフ神話TRPGではタイムスリップしたと分かった時にSANチェックが発生するんだけど、その時のSAN値減少値がかなり減るもんだから「そんなに減る?」って思ってたんだよ。

でもマインがユレーヴェから目覚めた後のギルが声変わりしていたり、頭を撫でられそうになったギルが「ローゼマイン様、私はもうそういう年ではないのですが……」と言った瞬間で俺の中で何かが弾けた。
初めてあのSANチェックに納得がいった。これはキツいわ。

でも、最初は最悪な態度だった子が、こんなに立派になって……


3-10.ハルトムート

怖いよ(好き)。マインがちゃんとこいつのことを気持ち悪がってくれるとなんか安心できる。でも、物語が完結した現在、こいつの欠点って「気持ち悪い」くらいなんじゃないかなあ……。ローゼマインが率直に望みを伝えている限りはダメな方向には暴走することはないだろうし、完結後はフェルディナンドもいるので大丈夫だと思う。

マイン視点だと信者を増やされるのは嫌だろうけど、そこまで害はないどころか政治的には圧倒的にプラスなんだよね……。

フェルディナンドへの名捧げ勢も似たりよったりだけど、主と一緒に死ねることに喜びを見出してるのはちょっとマジで恐ろしい。メンタルが戦国の武士なんだよなあ。

武士といえばダンケルフェルガー。割と大人しいハンネローレでさえ武士の奥方って感じだった。そう考えるとハルトムートがクラリッサと結婚したのは必然だったと思う。ローゼマインへの忠誠以外のところでもメンタリティが似てる。


3-11.シャルロッテ

ずっといい子だったので決して印象深くはなかったが、ずっと頑張っていたし、貴族として非常に優秀だった。

決して優秀な姉に甘えず、どうせ他領に嫁に出るからと腐らずに努力を続けたがゆえに最後には中継ぎとはいえ次期アウブの座を掴んだ。
良い方向での因果応報だった。

自己評価も、姉のせいで若干低いところはあるかもしれないが「自分には大胆な決断はできない」などかなり的確。
ヴィルフリートももう少し自分を客観的に見てもろて……。

ローゼマインを心配し、大変な次期にフロレンツィアを妊娠させたジルヴェスターに対して本気で怒ることができる優しさと力強さは、やっぱりその辺に捨てるには勿体ない。領地のためにこれからも頑張ってほしい。


3-12 メルヒオール

ぐう聖。

それ以外に彼を表現する言葉があるだろうか。
神殿への忌避感が薄くなり始める貴族社会で育てられた初期の世代であり、明るい未来の象徴のような存在。彼を守ることがエーレンフェストの、もっと言えばユルゲンシュミットの未来のためなのではないかと思う。

あの幼さで神殿長になって神事を行うとなると、将来グルトリスハイトを入手できる可能性もあるんじゃない? あくまで「入手可能なんじゃない?」って話であって、彼にはツェントよりエーレンフェストのアウブになってほしい気持ちのほうが強いんだけども。


あとメルヒオールって名前も聖人っぽい。東方の三博士をモチーフにしてる名前だし、そう考えてもエーレンフェストの聖女の後を継ぐエーレンフェストの聖人なのだと思う。エーレンフェストは極東に位置してるし。


3-13.エグランティーヌ

絶妙な位置にいる人。アナスタージウスと結婚するまではただただ穏やかでいい印象の人だったけど、王族という立場になった途端、ローゼマインにとって厄介な存在になってしまった。

彼女はヴィルフリート、ジルヴェスターと同じく『本好きの下剋上』の人間観を象徴する人物だと思っている。その人の性格などは大きく変わっていなくても、立場や置かれた状況によっては良い人にも悪い人にもなる。それがエグランティーヌとローゼマインの関係には色濃く表れていた。


ヴィルフリートと同じく「悪い人じゃない」って言葉が最初に来る。ヴィルフリートと比べると大体のステータスが優秀だし元々穏やかな性格なので、極端に印象が下がるってほどではなかったけれど。

ツェントとして立つ覚悟を決め短期間でそれなりに成長したみたいだけれども、「争いを厭う」という一点において極端なこともあって、ツェントには圧倒的に向いていないのでちょっと可哀想。


3-14.ジギスヴァルト

正直どうしようもない奴だけど、別に嫌いというほどではない。
流れに適応できないタイプなので変革の時代にはとことん合わない。色々とやらかして将来は明るくないとはいえ、ヒルデブラントの方が新しい時代では上手くやっていけると思う。

あと「ジギスヴァルトが悪い」というより「王族の教育、在り方が悪い」というほうが正しいと思う。王族の結晶みたいな男だから。教育が悪いという意味ではディートリンデやヴィルフリートにも通ずるところがある。


3-15.アナスタージウス

嫁馬鹿な面が目立つけれど、ちゃんと王族のダメなところの結晶でもある。エグランティーヌとの結婚のために王位を手放したために王族のダメなところが出にくかっただけで、人格がかなりマシという点を除くとそこまでジギスヴァルトと変わらない気がする。

「人格がマシ」はかなりデカい加点ポイントって言われるとそう。
減点が減っただけでは? そうかも。

まあ、総合的に見るとジギスヴァルトよりかなり良い。けど一歩間違えれば……って感じのキャラクターだと思う。


3-16.アウレーリア

出番かなり少ないのにめちゃくちゃ印象に残ってる不思議な子。
ガブリエーレに似て目鼻立ちはキツいらしい(最終巻まで顔は明かされなかった)のに、ローゼマインの後ろをちょこちょこ付いてくるというギャップよね。鴨の子みたい

「アーレンスバッハはクソ!」ってなるほどアウレーリアが輝きを増すし、アーレンスバッハも別に全部悪いわけじゃないよなって思い直させてくれる存在。めちゃくちゃ優秀ってわけじゃないだろうけどマトモな人間なので、ディートリンデたちに巻き込まれて処罰されなくて良かった。


3-17.トラオクヴァール

なんというか……詰んでるよね……。
完璧には程遠かったけど、頑張ってたと思うよ……。

与えられた領地の統括はかなり厳しそうだけど、マグダレーナがいればなんとかなるか。ヒルデブラントとトラオクヴァールはまだ比較的希望がある。


3-18.ルーフェン

ダンケルフェルガーの中でもかなり有能に入る人材なのが反応に困る。
ダンケルフェルガー全般に言えることだけど、ただの脳筋のアホじゃないのが怖いんだよ君たち。

ディッターディッター叫んでるなと思ったら急に「貴族」になるんだもん。


3-19.ギュンター

お前がエーレンフェスト貴族じゃなくてよかった。ボニファティウスと絶対相性良いと思うんだよね……。2人合わさったら手に負えない。

エピローグでフェルディナンドにメンチを切っていたが、結果的にあれはパーフェクトコミュニケーションだった。フェルディナンドにとって一番必要なものを与えたのがマインの婚約にショックを受けているだろうギュンターだった。この一連の流れは面白くてちょっとあたたかい。


3-20.ローデリヒ

側近というよりお抱えの作家という方が近い尖った性能の存在だった。ひとりの作家先生の命を救った名捧げには感謝しなければならない。

彼の作品が褒められるとなんかこっちも嬉しくなる。文章書くのって、難しいし苦しいけど、書けると楽しいし認められると凄く嬉しいよね。


おわりに

本編が終わっても厄介事を持ち込んでくる地雷女というマインの特性は変わっていないっぽい(ハンネローレの貴族院五年生)のでこれからも大変だろうけれど、マインたちが幸福であってくれればなと思う。


彼らの人生に祝福がありますように。

いややっぱ神様はあんま余計なことしないでください。


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