もう一段新しい音楽への招待 ――芳川よしの「Yumematsu Glider feat. Yuzusa」(2014)

芳川よしのの音楽を最初に聴いたのは2010年の秋で、ネットレーベルのMaltine recorsが最初に出したコンピCD(だったと思う)に収録されていた「Night Stars Dance」だった。この曲を大学のある講義(ひたすら実験的な電子音楽を流して解説するという授業だった)で聴き、そもそもマルチネの存在をここでようやく知って今に至るわけだが、芳川よしのはこの3年半もの間に新しい試みを常に試みている。そして彼がUltrapopと名付けて送り出した楽曲の一つがこの曲だ。Ultrapopとはそもそも何なのかはとりあえず脇に置くとして、少なくとも「Night Stars Dance」やその後にマルチネから発表したいくつかの曲のように、クラブでガンガン流れているような曲ではなさそうだということがこの曲を聴いて感じたことの一つだ。芳川よしのはこういう曲を作る人だったっけと思ったが、逆にいまの芳川よしのはこういう曲を作れるようになったのだと肯定的に解すほうがきっといい。もう一段、音楽の幅を広げたのは確かだ。しっとりとかわいらしく、だが力強くもあるYuzusaの歌声は語りかけるように歌う。透明な声は、だが儚くはない。

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