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僕が地元のマラソン大会出走を決意するまで

秋も深まってきた10月末の22時。いつもの通り、遅めの夕食を済ませた後、1時間ほど経ってから、たった5kmほどの自分だけのランニングコースに走りに出かけた。埼玉県のはずれの田舎町の夜は、人とすれ違うことは少ない。夏であれば、カエルや昆虫に出会うことはあったが、10月も終わりに近づき、日を追うごとに冬の香りが増すと、夜に生きものに出会うことすら一切なくなった。そんな暗い夜道を走り始めると、5分と持たずに、雨が降り出す。

「まただ」

そう思わずにはいられないほど、相変わらず、僕が行動を起こすと決まって雨が降り出す。驚異の雨男ぶりだ。
でも、そんな雨も、決して悪いことばかりではない。その日は雨に打たれながら走っていたら、ふと頭の中で、何かが舞い降りてきたかのように、新しい目標に出会うことができた。

走りながら思い浮かんだ尊敬すべき2人

自分を変えたくて始めたランニングも、ようやく1ヶ月が経った。月間走行距離は50kmほどだろうか。だが、「早く走りたい」とか、「フルマラソンに挑戦したい」といった上昇志向は一向に生まれてこない。むしろ、「なんで走るんだろう、なにが楽しいんだろう」というネガティブな思考が常に頭に浮かんでいた。

 こうして、暗がりを走っている時に、ふと思い浮かんだのが、昨年10月に交通事故で最愛の兄を亡くしたFリーガーの諸江剣語選手のことだった。彼のお兄さんは、金沢マラソンに挑戦するために、マラソン練習中に後ろから軽自動車に突っ込まれて、その短い一生を終えた。日頃から、彼が家族をとても大切にしている姿をみて、微笑ましく感じていたし、自分ももっと家族を大切にしなければと思わされてきた。だからこそ、彼のお兄さんが亡くなったのを聞いたとき、僕もいたたまれない気持ちになったのを、昨日のことのように覚えている。

 「もうあれから1年が経つんだな。俺だって、もしかしたら、今、後ろから車が来ても、気づかなければ、死ぬかもしれない。後悔しないように生きたいな」

などと思いながら、暗闇を走っていた。

その日、僕がランニングしながら聴いていた音楽は、藤巻亮太(レミオロメン)の3rdアルバム「北極星」だ。決してランニング中のBGMに適したようなリズミカルな曲ばかりではないが、ソロ活動を開始して以来の最高傑作と言われたこのアルバムは、彼の現在地をとてもよく表していた。40歳にして、所属事務所からの独立を発表し、新たな道を歩き始めた藤巻亮太から、いつも「お前は今のままでいいのか」って問いかけられているように感じる。常に不安を持って生きているアラフォー世代のど真ん中にいる僕は、彼の生き方に大いに感銘を受けており、その心境を如実に表しているこのアルバムへの共感度は、本当にハンパないのだ。

 そして、この日、ちょうど雨が降り出した時に流れていた曲は「北極星」という、アルバムタイトルにもなった曲だった。藤巻亮太が自らの原点である故郷の山梨県で書いたこの曲は、まさに彼自身の道しるべというべき曲だ。彼はナタリーという媒体のインタビュー記事でこんなことを言っている。

「この街の景色が僕にとっての北極星で、これからも僕は変わっていくだろうけど、ここで起こったこと、感じた何かが自分の感性の深い部分を作ってるんじゃないか」

なんだか、「お前も原点に戻ってみろ」って、そう言われたような気がした。

僕の原点

いまの僕のライター活動の原点は、間違いなく、数年前に立ち上げた地元埼玉県のローカルWEBサイトにある。ローカル情報が地域住民にどこまで求められているのかをテストすることが目的だったこのサイトでの取材・執筆活動が、結果的には、僕の礎となって、プロの執筆者として活動に繋がっていった。

「ならば、一層のこと、久喜マラソンに出場してみよう。」

雨に濡れながら、こんなことが頭をよぎったのだ。

走るのなんて好きじゃない。先日、文京区で行われたリレーマラソンに参加してみたが、やっぱり楽しいとは思えなかった。むしろ、辛いことだらけだった。それでも僕は、2019年3月24日、はじめて久喜マラソンに挑戦する。地元の街並みの景色を確かめながら、これからも変わり続けていく自分の原点を、この身体に刻むのだ。

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瀬川 泰祐

ライター。東洋経済オンラインやITメディアビジネスオンライン、OCEANS、キングギアなどで執筆中。スポーツ・アスリート交流会も主催する。最近の取材テーマは「Beyond Sports」。スポーツと社会の接点からスポーツの価値を探っている。

スポーツチャレンジ日記

44歳になっても、まだまだ新しいことにチャレンジしたい。新しいスポーツ・レジャーにチャレンジしたことを、このマガジンに。どうやったら初めの一歩を踏み出せるのか。自分が感じるままに書いてみます。不定期更新。
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