見出し画像

ファンとトンボに愛された男・荻野忠寛

荻野忠寛。

かつて千葉ロッテマリーンズで、多くのファンに愛され、そして、トンボにまでも愛された男をご存知だろうか。

唐突に「トンボ」というキーワードが出てきたように感じる方もいるかもしれないが、もちろん、長渕剛の代表曲「とんぼ」ではない。グラウンド整備で使う「トンボ」でもない。夏の終わりから秋になると男の子が夢中で追いかける、あのトンボだ。

実は荻野さんとトンボには、切っても切れない関係がある。

全国的に高気圧に覆われ、晴れが続いた2009年の9月。千葉マリンスタジアムにオリックスバッファローズを迎えて行われたデーゲーム。千葉ロッテが2点リードし、迎えた終盤の8回よりマウンドに立った荻野忠寛はオリックスの打者に対し、全身をしならせた美しいフォームでキレのあるボールを投げ込んでいく。するとそのシーンは唐突に訪れた。

なんと、荻野さんの帽子に、大きなトンボがとまっているのである。

荻野さんの後頭部あたりだっただろうか。

しかも、そのトンボは、いくら荻野さんが全力で投げても、帽子の位置を変えても、いっこうにその場を離れようとしない。まるで、母親にべったりくっついて離れない園児のようだ。

当の荻野さんも全く気がついていないようで、終盤の緊迫した場面での珍事に、その対比を楽しみながら、荻野を応援したファンも多かったのではないかと思う。

前置きが長くなったが、そんな「トンボにまで愛された男」、荻野忠寛さんの記事が「OCEANS」ウェブサイトにて、公開された。

ここまで荻野さんとトンボのエピソードをさんざん書いておきながら、OCEANSの記事では、このことには一切触れていないのだが、もしよければ、ぜひ読んでもらえたら嬉しい。




実は僕が荻野さんのことを記事にするのは、これで2度目だ。 なぜ、2度目を書きたいと思ったか。いやなぜ2度目を書かなくてはいけなかったか。 それは1度目の取材記事が僕にとって、少し不本意な形で終わってしまったからだ。

「ITメディアビジネスオンライン」の「SHIFT」というコーナーの中で掲載された記事は、実ははじめから「戦力外通告」という明確なテーマが与えられていた。 僕は、閉塞感が漂う時代に、人々に元気を与えたり、喜びを与えることができるのがスポーツの大きな魅力だと思っている。だからこそ、「戦力外通告」というテーマを「過去と未来をつなげるポイント」だと捉えて記事を書いた。そのつもりだった。

だが、そんな意図は、つけられた記事タイトルによって、いとも簡単に吹き飛ばされた。その非は自分にあるのだが、いずれにせよこの記事で改めてタイトルの重要性を思い知らされることになった。

※その時に感じたことは僕のホームページにも書いているので、もし興味があるという悪趣味な方がいたら、読んでみてください。

ということで、今回は、ある意味では、前回の記事のリベンジというつもりで書いた。荻野さんは、「スポーツで得た力は、スポーツ以外でも活かせる」ということを理論として体系化しており、共感するところがたくさんある。

ただ、今回の記事で、僕は「スポーツセンシング」という荻野さんが体系化した理論の詳細まで触れることができなかった。言い訳をあげればキリがないが、結局は、取材者・執筆者としての僕の能力不足が原因だ。

誰でも行き詰まるときはある。そこで打開できる術を持っているかどうか。再び自分でイメージを描いて、イメージに寄せられるか。

僕はいま、自分自身の「センス」が試されているのかもしれない。

瀬川泰祐の記事を気にかけていただき、どうもありがとうございます。いただいたサポートは、今後の取材や執筆に活用させていただき、さらによい記事を生み出していけたらと思います。