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川口ちゃんの衣装計画#39 吉川康雄さんの考え方が好き

自問自答の末、ありのままの自分を肯定したいムードの私が、今最も心を掴まれているメイクアップアーティスト、吉川康雄さん。

惜しまれながらも終了したキッカ、そして今はアンミックスというコスメのブランドをやっている方で、かつてベースメイクはマットが主流という時代にまさかの「ツヤ肌」を提唱した革命家。

そして、憧れの誰かに似せるメイクではなく、その人自身の美しさを引き出す「見えないメイク」を施すことをモットーにされている方である。

女性のメイクをずっとしてきて、「今日は素顔の感じで」とオーダーをされた時でも、僕は必ずメイクをします。“素顔”は僕のなかで、“素のままの顔”という意味ではありません。
限りなく素顔に見えることを意識しながら、それでいて生き生きとした肌づくりと血色感によってコンディションのよい日を演出するようなイメージ。
メイクがきれいなのではなく、むしろメイクしていることを感じさせないのに「私って悪くないかも…」って思える、そんな“見えないメイク”をするのです。
UNMIX公式サイト Beauty Message of Yasuo Yoshikawa


吉川さんの存在自体は以前から存じ上げていた。
もう何年も前の話だが、ファンデの色はデコルテで決めるという独自のメソッドや、製品の綺麗な色とそれぞれに付けられた可愛らしいネーミングに惹かれて、キッカの商品はいくつも持っていたし、吉川さんの著書「生まれつき美人に見せる」も購入して読んだ。だがしかし。

"僕が女性の力になれるのだとしたら、それはその人の存在や本来持っている美しさに寄り添うことで、個性を消さないことがすごく大切。“○○風メイク”というのは説明しやすいし売りやすいと思うけれど、もうそんな時代じゃない。だから提案する側には、もっとデリカシーを持ってほしいし、そうじゃないと人は幸せになれない。"

(「美しさに正解はない」 吉川康雄が新ブランド「アンミックス」に込めたその想い)


おそらく当時の私は、〇〇さんが愛用している口紅が欲しい!〇〇さんみたいな眉毛にしたい!という、吉川さんの言うところの“○○風メイク”の欲求が激しく、彼の理念に根本的には共感できなかったのだと思う。受け入れはしたけど、そういう考え方もあるんだな、くらいで終わってしまっていた。

その頃とは打って変わって、最近は吉川さんの思考と自分の思考がかなり重なるようになってきて、著書やインタビューの言葉のひとつひとつに頷いてばかりいる。特に気づきが多かったのがこちらの日本人の「ファンデーション」に対する価値観の話。

――吉川さんは日本とニューヨークを行き来していますが、美容に対する意識は違いますか?

吉川:日本とアメリカで化粧の上手い下手はないですが、化粧品の広告に影響されるから、どうしても厚化粧になる傾向はどちらにもあります。唯一異なるのはファンデーションの考え方。日本では高校を卒業して化粧の仕方を教えてもらう際に、まずファンデーションを塗ることから始まるけれど、海外では何か肌にトラブルがあるとき以外は、若い人はほとんどファンデーションを塗りません。なぜなら「人の肌ってきれいだよね」との考え方がベースにあり、「きれいな素肌が一番」という価値観が刷り込まれているから。日本の場合は、せっかくきれいな肌をしているのに、出かける時はファンデーションを塗る前提になっているのはすごく残念。
(「美しさに正解はない」 吉川康雄が新ブランド「アンミックス」に込めたその想い)


この「人の肌ってきれい」「きれいな素肌が一番」という価値観…!
吉川さんが仰る通り、日本人にはこういう感覚は薄いと思う。化粧は社会人の身だしなみ!って人もまだ沢山いる。私も前職(美容部員)の時はファンデ絶対!と刷り込まれていた。当時から化粧品会社のあからさまに肌を修正した広告は異常だと思っていたにも関わらず、それを受け入れていた。

最近はマスク生活で半ば強制的にファンデーショ信仰が薄れてきている感じはあるものの、代わりに高機能の下地やフェイスパウダーが人気だし、「とりあえず何か塗る」という国民性(?)は変わっていないような気がする。さすがに肌がきれいな若い子までもベースメイクをすることに違和感を覚える人は多いかもしれないけど。

でもこのインタビューを読んで、大人だって、必ずしもファンデを塗らなくていいんだよなと気付かされた。

確かにね、テカリを撲滅!といわんばかりに仕上げにイニスフリーのパウダーを叩き込んだサラサラ真っ白な顔よりも、スキンケア後の、クマも赤みもニキビ跡も見えているけど、ツヤツヤした肌の方が生命力に溢れて素敵なことは薄々気づいてた。
これからは「とりあえず塗って補正信仰」に縛られずにメイクしたいと思った。


それに、肌荒れに対しても新しい考え方ができるようになった。

「人の肌ってきれい」って、素晴らしい感覚だけど、肌荒れに悩んだことがある人はどうしても共感しづらい価値観だと思う。なんなら生まれつき美肌族に嫉妬してキレる。

私もかなりニキビが酷かったのでわかるつもりだが、ニキビがあるとそこばかり気になって、それを覆い隠すのに必死で、ツヤや血色が作り出すイキイキとした美しさが失われたこと、そもそもその美しさが自分にあったことには気づけない。

でも、髪、服装、体型、仕草や表情、雰囲気…人の印象は顔だけではないから、魅力的でいるためには、一度手鏡を置いて全体のバランスをとるべきなんだなと今は思う。

きれいな肌=きれいだけど
きれい=きれいな肌 ではない。
そこに気が付けたことは自分的に結構大きい。

「肌にハリも明るさもなくなってきて、化粧のノリが悪くなった、目の印象がぼんやりしてきた……。それをカバーする手段は確かにたくさんあります。けれど、僕は問うんです。『その肌に厚塗りをして素の肌を隠せば綺麗になれるの? そもそも目をパッチリと大きく見せる必要があるの? それって美しいの?』って」
(美の定義に革命を起こす吉川康雄(前編))

ぐさっと刺さる、吉川さんのそもそも論。私もついメイクのことを、自分を活かすものではなく変えるものとして捉えていたなと反省。

私の場合、一応ナチュラルメイクにこだわってはいたが、それはありのままの自分を愛するというよりかは、加齢によるノイズを消して、余計なものは足さず、少女のような顔でいたいというバリバリのアンチエイジング思考からだったので。

ナチュラルにこだわる前も、眉を左右対称に描こうとしたり、左右の目の大きさを揃えたくてラインの幅を変えたり、面長を誤魔化したくてチークの位置を工夫したりしてきたし。

そんな私のメイクに対する態度はやっぱり不自然だし、アンチエイジングというよりアンチ現在の自分ってことなのかなって思って、一回やめた。

絵を描く要領で鼻筋やら涙袋やらどんどん描いていき、すっぴんとはだいぶ離れた顔立ちに仕上げるメイクもあるけど(本当にすごいと思う)、今私がメイクに求めているのは、そういう変身的な高揚感ではなく、現在の自分をちゃんと受け止めて愛する態度かなと思う。

さて、アンミックスのブログでは吉川さんとの対談形式で、さまざまな人の考え方を知ることができるのだが、その中のこちらのブログを読んで、メイクだけでなくスキンケアまで変えちゃった。

「モデルさんでも吹き出物を恐れてお手入れをオイルフリーだけでやっている人も多かったりしますよね。そういう人は大抵肌がカサカサでしっとりしてない感じですけど、本人はそういう肌触りの感触も好きだったりして。メイクする人としては乾いた肌はお化粧がのりにくいから困っちゃうんだけど、長い目で見ても、シワができやすかったり、肌が敏感になったりして…。でも、それはそれで別個に考えてスキンケアしたり。原因はつながっているんですけどね。
人の肌には油分と水分の両方がちょうどいいバランスで必要というところを目指して一貫したお手入れして欲しいですよね。」

まさに「油分が大敵、ピーリング命!」だった私はドキッとした。
そして、吉川さんがそういうなら…そこまで言うなら(言ってない)一度やってみようかしら、とおそるおそるスキンケアを変えてみた。

具体的には、定期的なピーリング洗顔と、朝晩の洗顔代わりの拭き取りをやめ、さらに最後に塗るオイルフリーのジェルを、今まで白ニキビが沢山発生するので避けていたクリームに変えた。とはいえ、あまりこってりしていなそうなものにしたが。

すると、ニキビだらけになったらどうしよう!!という不安とは裏腹に、肌の調子が前より良くなった。劇的にとまではいかないが、油分を与えたことで肌がふっくらし、そのおかげで毛穴が詰まりにくくなったのかニキビが減るという現象が起きた。乾燥も和らいだのか、マスクをすると夕方に目立ってくる顎の角栓も落ち着いた。皮脂分泌も前より落ち着いた。すごい。全方向に感謝。
(※ちなみに私はサミュのPHセンシティブクリームを使用。こちらは脂性肌の私でも問題なく使えているので油分苦手勢にもオススメ!)


こんな感じで、今は自分の顔立ち、自分の質感を損なわないように気をつけてメイクとスキンケアをしている。ちょっと前まで粉物命だった私だが、今はパウダーをほぼつけていない。本当に信じられない。自分の柔軟性を褒めましょう…。

今年の初めに趣味で愛用コスメの記事を書いたのだけど、スタメンが見事に様変わりしているので(なんせポリシーが真逆になったからね)また改めて書きたい!

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↑私が今持っているアンミックスの商品(机から溢れる生活感)。この先、吉川流ファンデが出るらしく、楽しみすぎる。微力ながら買い支えたい〜。そして、健康的なツヤ肌で素敵なワンピース着て街を歩きたいわ。

もし吉川さんにご興味を持たれた方がいましたら、「いくつになってもキレイ!になれる NY発ビューティー・メソッド ツヤ肌メイク12の方法」というためになる本が今ならKindleアンリミテッドで読めるので良かったら読んでみてください。


あ…最後に伝えたいことが…。
こんなに吉川さんを推しておいてなんなんですが、眉の書き方や上手なぼかし方、手首の動かし方みたいな具体的なテクニックが知りたい方は、吉川さんと同じく大御所メイクアップアーティストの藤原美智子さんのYouTubeを見るのがおすすめです。

吉川さんって考え方の性質上、メイクのテクニックの情報はあんまりない気がするので。
「このコスメどうすれば上手に使えますか?」「そもそも必要ないよ。」みたいな禅問答的展開が多いです(笑)
必要な部分がうまくできんのや!!!という方は、自然なメイク方法を、初心者にもわかりやすいよう丁寧に解説されているので、藤原美智子さんの動画をぜびご覧になってみてください。参考までにおすすめの眉毛の動画貼っておきます↓

まさかの藤原美智子さんで終わる(笑)



信じないことが信条🍤