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ジョグジャカルタ原則がもたらした不条理について・著ジュリー・ビンデル & メラニー・ニューマン・・・翻訳

全てに優先する トランスの権利 トランスの人々が自分の性別を実際に決定可能にする法律では、女性の人権は考慮されなかった

2021年4月
著:ジュリー・ビンデル & メラニー・ニューマン:The Critic 


2004年、ジェンダー承認法(GRA)が可決されたことにより、英国は世界で初めて、医療行為なしにトランスジェンダーを異性として法的に認める国となった。この法案は議論を呼ぶこともなく、メディアで取り上げられることもほとんどなかった。



 この法律は、性転換者(transsexual/当時、立法者や殆どのトランスの人々が使っていた用語)が、弁護士や医師で構成された新しいジェンダー承認審査員からジェンダー承認証明書(a gender recognition certificate)を取得しなければならないというものだった。


多くの場合、証明書を取得するためには、性同一性障害(gender dysphoria)であること、後天的な性別での生活を2年間継続していること、継続する意思があることを専門医が確認する必要がある。なお、これには手術済みである必要はない。


証明書が発行された人は、後天的な性別の出生証明書を新たに発行してもらうことができ、後天的な性別から見て異性の人(つまり同性の人)と結婚することが可能になった(この頃、同性婚はまだ法制化されていなかった)。


ただし、スポーツの場合は注意が必要とされた。この法律では、スポーツ団体が証明書を持って いる人を排除できるのは、そのスポーツが「ジェンダーに影響を与える」もので ある場合、つまり、強さ、スタミナ、体格などが不当に有利に働く場合に限られるのだ。


今となっては懐かしい話だが、今では廃案となったGRA(ジェンダー承認法)の修正案は、法的に性転換するために医療行為を必要としないというもので、女性専用の施設を維持しようとする フェミニストと、内面的な「感覚:feeling」に基づいて「トランス女性は女性である」と主張するトランス活動家との間で、文化戦争を引き起こした。この法律が2000年代初頭に国際的な舞台で及ぼした影響は、あまり知られていない。イギリスでジェンダー承認法が成立した2年後、インドネシアで開催された会議で、LGBTの認知と処遇に関する29の指針が示された。


この「ジョグジャカルタ原則」は、医療行為を必要とせず、自分で定義したジェンダー・アイデン ティティを法的に認めることを要求しており、ジェンダー承認法をイギリスの曖昧な法律から全世 界の最低基準へと変えた。このジョグジャカルタ原則は、キングス・カレッジ・ロンドンの人権法 教授であるロバート・ウィンテミュート氏を含む、弁護士、人権専門家、トランスの権利活動家の グループによって起草され、署名された。

しかしそれ以降、ウィンテミュート教授は考えを変えた。会議では女性の権利が考慮されておらず、原則のいくつかの側面に異議を唱えるべきだったと、彼は述べている。同性愛者であるウィンテミュート教授は、男性器を持ったままのトランス女性が女性専用スペースを利用しようとすることを「考慮していなかった」と認めた上で、「女性の意見に耳を傾けたことが、私の意見を変える重要な要因となった」と語る。


このジョグジャカルタ原則は、レズビアンとゲイの権利と、「性自認」の保護と表現の権利を統合したもので、個人の感情に基づく「性自認」が生物学的性別に優先するという見解の基礎となるものなのだ。

第3原則は以下の通り:各々が自分で定義した性的指向やジェンダー・アイデンティティは、その人の人格と一体化して おり、自己決定、尊厳、自由の最も基本的な側面の一つである。何人も、自らのジェンダー・アイデンティティを法的に認めるための要件として、性別適合手術、不妊手術、ホルモン療法などの医療行為を受けることを強制されない。また、出生証明書やパスポートなどの法的文書には、自らが定義したジェンダー(self-defined gender identity)を反映させなければならず、これらは「法律や政策によって性別による個人の識別や分離が必要とされるすべての状況」で承認されなければならないとしている。

ジョグジャカルタ原則に法的効力はないが、「ジェンダー」の解釈を含め、国際的に非常に大きな影響力を持っている。アルゼンチン、アイルランド、デンマーク、マルタなどの各国政府や、カナダのいくつかの州では、自認に基づく「ジェンダー・アイデンティティ」の承認を導入しており、その影響力は大きいと言われている。


この原則は、アムネスティ・インターナショナルのような人権団体の姿勢を支えるものでもある。アムネスティ・インターナショナルは、女性としてのアイデンティティを持つ手術前の男性を女 性専用の宿泊施設に収容するよう、世界中でキャンペーンを行っているのだ。アムネスティの報告書の中には、香港に対し、囚人を「彼らの性自認に合致した」施設に拘留するよう求めているものがあるが、この報告書では、スコットランド監獄局の方針を紹介している。

報告書によると、こう書かれている:性器の手術を受けずに永久に女性として生活する男性から女性(A male-to-female person)の拘禁者は、女性の施設に割り当てられるべきである。女性を自認する男性受刑者は、他の拘禁者に高い性犯罪リスクをもたらすとただちにみなされるべきではなく、他の拘禁者との人間関係を自動的に制限されるべきではない。


ジョグジャカルタ原則の女性への影響を考慮した上で、「第3原則の『自認したジェンダー・ア イデンティティ:self-idefined gender identity』と『身分証明書の変更があらゆる状況で認められる』という記述に異議を唱えるべきだった」とウィンテミュート博士は述べている。


「女性の権利と対立する可能性を考慮する必要があったが、私はそうはしなかった」とウィンテ ミュート教授は語る。彼の知る限りでは、原則が起草された会議に出席していた他の誰もが女性の権利と対立する可能性を考慮しなかった。女性の権利は問題にされなかったのだ。
元国連特別報告者や委員会メンバー12名を含む人権専門家が参加していたことを考えると、これ は驚くべき失敗だったとウィンテミュート教授は認めている。


欧州人権条約では、「他人の権利と自由」に影響を与える場合には、ある種の権利が制限される可能性があることを明確にしている。 ウィンテミュート教授は次のように釈明する。「トランスジェンダーの人たちが苦しんでおり、この原則こそ彼らが必要と言っているものだ...という感覚がありました。2006年当時、手術をしないことやセルフIDの意味合いは、私たちには理解できていませんでした。なので、私の記憶では、未手術の性器を持ったままの男性が女性の空間にアクセスするとは、誰も考えておりませんでした。」

ジョグジャカルタ第3原則では、法的移行前の医療行為の要求を明確に否定していたにもかかわ らず、ウィンテミュート教授は、ほとんどのトランス女性が手術を希望するものと思っていたと言う。


「今振り返ると、診断、待機期間、その他の保護措置を要求するかどうかについて、第3原則は意図的に触れていないことがわかります。」

アムネスティ・インターナショナルは、女性の人権とトランスの人権の衝突の存在を認めることさえトランス嫌悪であるという見解を採用しているようだ。
2006年のジョグジャカルタでの署名者の大半は男性とトランスの男性(Trans men)だった。
 「男女別のスペースへのアクセスの問題は、主に女性に影響し、男性には影響しません。そのため、男性たちはLGBTの権利への関心に流されて、女性への影響を無視しがちでした」とウィンテミュート教授は語る。 出席した女性たちの中には、健康など特定の分野に焦点を当てるように言われ、その分野に限定して貢献した人もいたという。ウィンテミュート教授の記憶では、他の女性署名者たちは、女性の権利とトランスジェンダーの権利が対立する可能性について質問をしなかったのだそうだ。

この女性の視点の欠落は単なる見落としではないのかもしれない。
 この会議の女性共同議長であるブラジルの性的権利活動家ソニア・コレア(sexual rights activist Sonia Correa)は、人権に関する言説から男女間の不平等についての言及を排除したいと考えている。コレア氏がジョグジャカルタ原則を倣うべき模範としている理由は、「女性:woman」という言葉に言及していないからだ。 コレア氏は、「女性の権利」という言葉を使うことを拒否しているという。というのも、フェミ ニズムは女性の身体に関係するべきではなく、生物学的性別は19世紀の西洋の社会的構築物であると考えているからだ。


彼女の主張では、男女の生物学的差異が物質的に重要であるという見解は「原理主義者:fundamentalist」だ、ということになる。(編注:このような生物学的性別を社会的な構築物とする見解は「クィア理論」と呼ばれ1990年以降、ジェンダー論学者の間で広がっているものです。)

2017年、ジョグジャカルタの署名者の一部が再結集し、追加の専門家とともに、10の追加原則に署名した。 この原則は、当初の原則よりもはるかに踏み込んだ内容となっている。第31原則は、すべての国が「出生証明書などの身分証明書における性別(sex and gender)の登録を廃止せよ」と主張して いる。

性別(sex or gender)の登録を続行する場合は、「自己識別(self- identification)に、精神医学的診断...年齢、配偶者の有無、その他の第三者の意見」などの制約が無いことを前提としなければならないのだ。

ウィンテミュート教授は、新しい原則の起草には招かれなかった。
 彼は、第31原則についてこう語っている。「とんでもない話です。出生証明書への性別登録を 廃止した国は、世界にはありません。」2006年版のジョグジャカルタ原則は、たとえ一国であっても、世界のどこかに実在する法律に基づいていたのに...と、彼は述懐している。

しかしながら、ウィンテミュート教授は2017年の変化には気づいていなかった。LGBTの人権に注目していたにもかかわらず、世界中で繰り広げられているフェミニスト団体とトランス活動家の激しい議論は、ウィンテミュート教授の視界には入っていなかったのだ。


 ウィンテミュート教授がようやくその対立に覚醒したのは、2018年、サマースクールで講義をしていたときだった。ウィンテミュート教授は講演で、移行する者の配偶者に、トランスすること (transitioning)が法的に認められる前に結婚を無効化する権利を与える英国の「配偶者拒否権:spousal veto」規定についての議論にも触れた。 「私は次のように説明しました。配偶者は同性婚に同意したわけではありません。ですから、同性婚をするには配偶者の同意が必要なのです」と。


「すると、会場にいたトランスの男性(A trans man)が異議を唱えたので、私は、他の人の権利 を考慮する必要があり、トランスの権利が他のすべてに優先することはないと説明しました。しかし、そのトランス男性は怒って部屋を出て行ってしまったのです。」

それ以降、異性を自認する男性(正式な証明書の有無は不明)が、女性に与える影響を示す証拠がどんどん出てきた。英国、カナダ、アルゼンチン、アイルランドでは、女性の受刑者が、「女性にとって重大な脅威」と評された者を含む暴力の履歴を持つトランス女性と、一緒に掲示収容施設で 拘禁されているのだ。

女性が、男性器を見せている男性(a male with visible male genitalia)に、ジムの女子更衣室か ら出て行くように依頼したことで、警察に通報された。
アイルランドでは、「有意義な」移行(Transition)を行ったことや、長期間異性として生活した ことなどを要件とせず、18歳未満も含めて性自認(self-identification of sex)を認める法律を制定している。 2015年にアイルランドが、トランスの人々が合法的に異性を自認(self-identify)することを認めるバージョンの法律を可決したとき、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、同国を「世界のトランスジェンダーのリーダー」と称賛した。アイルランドは、セルフIDのゴールドスタンダードモデルとして、不利な影響を受けた女性はいないという主張とともに、トランスの権利を主張する活動家たちから支持されている。

2019年12月、裁判官はとあるトランス女性(a trans woman)に、2年間に渡って児童への性的暴行を10件、児童虐待を1件行ったとして、懲役6年6ヶ月(うち6ヶ月は執行猶予付き)の判決を下したが、この被告人(控訴中:被害者の身元を保護するため名前は出せず)は、子供に対する犯罪を犯した頃にジェンダー移行をしている。
この判決を不服として控訴したトランスジェンダー女性(a transgender woman)の弁護士は、判決官はトランスジェンダー女性である依頼人が刑務所で直面する困難を「十分に考慮」しなかったと主張した。控訴者は、控訴審の判決が出るまで女性刑務所に収容されている。

活発なフェミニズム運動があるにもかかわらず、女性の法的・政治的・社会的権利に関する記録が衝撃的に少ない国、マルタは、2015年に性自認法(gender self-identification)を導入した。

2015年、欧州評議会は、「ヨーロッパにおけるトランスジェンダーの人々に対する差別」に関す る決議を採択した。この決議案を作成したマルタの議員デボラ・シェンブリは、決議案の作成に先立ち、事実調査のために英国を訪問した。

イギリスでもマルタでも、トランスジェンダーのイデオロギーやセルフID(self-identification)に 批判的なフェミニスト団体はこの政策決定に際して意見を述べる機会がなかった。一方で、法律上 の性別(legal sex)をジェンダー・アイデンティティに置き換えることを提唱する団体は政策決定に関与している。


シェンブリ議員はフェミニストの味方ではない。国賓訪問の際に売春宿を訪れたことが暴露され た男性同僚の大きなスキャンダルの後、シェンブリ議員は男性の同僚議員を保護するために新たに 厳しいプライバシー法を提案したのだ。
マルタでは、トランスの囚人は、自認する性別(the sex in which they identify)、つまり異性と 一緒に収容される。それを受け入れる側の女性の囚人には声を上げる機会はない。デンマークやノルウェーでも同様だ。

レディング大学のローザ・フリードマン教授はこう指摘する。

 「デンマークの人口は600万人しかありません。そして、その社会では女性の権利や女性運動が中心となっています。しかし、女性用スペースにアクセスした自称『女性』による女性への暴力やレイプの事例がすでにあります。ノルウェーも同様です」


2016年6月、ノルウェーでは、診断書や医療報告書、長期間異性として生活していたことの証明 (proof of having lived as the opposite sex)を必要とせず、誰でも法律上の性別(legal sex)を変 更できるようになった。少なくとも片方の親の同意があれば6歳以上の未成年でもジェンダー変更が可能だ。

トランス女性(trans woman)のデビー・ヘイトンがノルウェーの女性に聞いて知ったことだが、この法律が施行された直後、ある女性がジムの女性用更衣室から男性(男性器が見えている)に出 て行くように頼んだことで警察に通報された。この裁判は2年以上も長引き、最終的には控訴審で ハラスメントの疑いが晴れが、しかし、それは彼女の発言がトランスジェンダーの女性(the trans woman)に向けられたものではないと判断されたからだ。
自称トランス女性(self-declared trans women)は、すべての女性専用施設を利用できるだけで なく、「ミスジェンダリング:ジェンダー誤認」を含む可能性のある「トランスフォビックなヘイトスピーチ」からも「最高で3年の懲役刑」を持って、保護されている。ヘイトスピーチ法は、生得的女性(natal women)を保護するものではないのだ。

ウィンテミュート教授は、当初の立場から大きく離れ、今ではGRAとそれ以前の法律がヨーロッパで成立すべきだったのではないかと考えている。
 *GRA(ジェンダー承認法)

英国では、トランスの女性(trans women)が病室に入ることに反対する女性患者を人種差別主 義者として扱うべきだという指針がNHS(国民保健サービス)から出されており、患者のプライバシーや尊厳の権利が無視されている。
公的なデータ収集の際に、ジェンダー(社会的性)とセックス(生物学的性別)が混同されているため、犯罪件数など、女性を明確な性区分として捉えた統計が損なわれる危険性がある。 トランスの女性(trans women)を一部の女性スポーツに参加させることは、女性の安全面での リスクを増大させること、あるいはテストステロンを抑制しても男性の解剖学的・生理学的な利点 があるため本質的に不公平であることを示す証拠が増えてきている。 先日、下院の女性平等委員会(the recent House of Commons Women and Equalities Committee’s)が行った男女共同参画に関する調査に雇用弁護士協会が提出した証拠は、英国の雇 用法におけるトランスジェンダーの取り扱いについて、かなりの不確実性があることを浮き彫りにしている。

例えば、女性(a woman)が性差別(sex discrimination)を主張する際に、比較対象としてトランス女性(a trans woman)を引き合いに出すことができるかどうか、またどのような場合に引き合いに出すことができるか否かについては、不明瞭である。これは、女性が男性を比較対象として挙げなければ、同一賃金請求を行うことができないため、特に重要なのだ。

女性の声に耳を傾け「目を開かされた」ウィンテミュート教授は、当初の立場から大きく離れ、 今ではジェンダー承認法とそれに先行する関連法がヨーロッパで成立すべきではなかったのではな いかと考えている。 「当時の主張は、異性に見えるように最大限の努力をしてきた人々が、その外見が公的な書類と一 致しないことで、暴力やハラスメント、差別を受ける危険性がある』」というものだった。

現在のウィンテミュート教授の考えはこうだ
「法律上の性別(legal sex)を変えるのではなく、法律上の性別と外見の違い(their presentation)によって引き起こされる被害から人々を保護することを、法律は単純に求めることが できたはずです。そうすれば、トランスの人々の出生時の性別(birth sex)を法的な性別(legal sex)として認めつつ、性別に適合しない外見や行動(gender non-conforming appearance or behaviour)に基づく差別からの保護を確保することができるため、現在の争いの多くを取り除くこ とができるでしょう。」

さらに教授は付け加える。
 「同性婚が法制化され、年金受給年齢の男女等しくなったなど、現在では出生時の性別は以前ほど重要ではなくなりました。しかし、出生時の性別(birth sex)は取るに足りない瑣末な事柄ではなく、男女別だけの環境は性自認によって自動的に「切り捨られる」べきではないと、認識してい ます。
この見識は、ジェンダー承認法が成立する前に意見を述べる機会がなかったと主張する女性の人権を擁護する団体の間で有力視されている。1月にはキャンペーンサイト(http:// www.repealthegra.org)が開設され、「生まれた時の性別を偽る(misrepresent their birth sex)」 など許されない、と主張している。

一方、アムネスティ・インターナショナルは、女性の権利とトランスの権利の間に対立があることを認めない姿勢を貫いている。それどころか、衝突の存在を認めることさえトランスフォビアの証拠であるという、活動家グループ TransActual の見解を採用しているようだ。

2018年、アムネスティは、法的な性別移行(a change of legal sex)における医学的診断(the requirement for a medical diagnosis)の要件を撤廃するという政府の提案に積極的な対応を促しつつ、次のように述べている。

「トランス女性は女性(Trans women are women)であり、男女別の施設に危険を及ぼすことはありません。報道やソーシャルメディアで、トランスの権利と女性の権利を対立させようとする議論を耳にしたことがあるかもしれません。このような議論は、偏見と誤った情報に基づいていま す。」

性別自己決定(Self-ID)の結果、女性の人権が侵害されているという数々の証拠を無視し、政府との協議において「性別自己決定制度(セルフID)を導入している国では、トランスの人たち自身以外に影響があったという証拠はありません」と述べた。

2020年の終わり頃、アムネスティ・インターナショナル・アイルランドは、「トランスジェンダーの人々の性別自己決定の権利(the right to self-identification)に反対する」 人々に「もはや正当な代表権(legitimate representation)を与えない」よう政治家に呼びかける書簡に署名した。

この書簡には、アムネスティ創設者の孫娘から非難の声が上がった。

ウィンテミュート教授は、アムネスティの姿勢を理解し難いと言う。

「私はトランスの人権を求める運動の大部分に同意しています。しかし、その要求が他の人の権利に影響を与える場合には限界を設けるべきです。」

国際的な人権専門家であり、バンコクにあるチュラロンコン大学の法学部教授であるヴィティッ ト・ムンターボーン氏(Vitit Muntarbhorn)も、この原則の原案者のひとり。
 しかし、ウィンテミュート教授とは異なり、ムンターボーン教授は「性自認:ジェンダー・アイ デンティティ」という概念を支持しており、それが女性の性に基づく権利の低下につながっていることを認めてはいない。

「トイレでのトランス女性の話? 多くの国にはトイレがないのだから、どうしてそんなことが第一の関心事になるんです?」

ジョグジャカルタ原則がさらに注目されるかどうかは、他の署名者が勇気をもってウィンテミュート教授の側に立ち、自分たちが間違っていたかもしれないと認めるかどうかにかかっている。

他にも多数の方にコメントを求めた。コレア氏(Correa)には連絡が取れなかった。女性に与える影響についてを十分に考えていなかったと答えた署名者もいた。



あの時、女性への影響を考慮すべきだったのだろう。

しかし、女性の人権は常に後回しにされてきたのだ。


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