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困難な問題を抱える女性への支援に関わる基本方針(案)へのパブリックコメント

困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針(案)の中の第2 困難な問題を抱える女性への支援のための施策の内容に関する事項(9ぺージ)の1.法における施策の対象者及び基本理念に以下の記述があります。



「性自認が女性であるトランスジェンダーの者については、トランスジェンダーであることに起因する人権侵害・差別により直面する困難に配慮し、その状況や相談内容を踏まえ、他の支援対象者にも配慮しつつ、関係機関等ともに連携して、可能な支援を検討することが望ましい」


 
1,「性自認」という定義が定かではない、定義が曖昧な言葉を法律に使用することは混乱を招くので使うべきではない。
 「性自認」の原語はgender identityであり、ジェンダー(社会的文化的性別・性役割)についての自己認識だと言える。例えば、「ノンバイナリー」は男でも女でもない、という意味で、「ジェンダーフルイド」は、ジェンダーが流動的であるという意味だと言われている。しかし、「困難女性支援法」が言う「女性」とは生物学的女性ではないのか。性犯罪の統計によると加害者の99,45%は男性であり、被害者の95,94%は女性であり、DV被害者の76,4%は女性であり、性売買の被害者の圧倒的多数が女性であることは自明の事実である。この事実を踏まえれば、「困難女性支援法」が対象としているのは生物学的女性であることは明らかだ。
 また、gender identityは「性同一性」とも訳されている。これは「性同一性障害特例法」で使われている。「特例法」は「性同一性障害」を、以下のすべてを満たすものと定義している。
 
・生物学的性別は明らかであるのにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(他の性別)であるとの持続的な確信を持つ
・自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する
・必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致している
 
 つまり、ここでは「他の性別であるという持続的確信」に加えて、専門の医師による医学的な診断基準を満たす必要がある。「自認」または「自己認識」という、客観的指標が担保されていない定義とは、まったく異なるのである。
 また、自己の性別を「自認」することは、認識機能(前頭葉の働き)が明晰であるからこそ可能なのである。「認知症」になると自分の「性自認」が分からなくなったという事例が、海外では報告されている。
 まとめて言えば、「性自認」という言葉は「性」とは何を指すのかが不明確であり、かつ「認識」という前頭葉の機能に依存したもので、極めて不安的なものなのである。
 しかし、人間の「生物学的性別」は一生不変であり、本人が意識障害に陥っても、第三者にも判別可能である。周知のように「胎児は受精後6週目まではメスであり、7週目にY染色体とSRY遺伝子がある場合にはオスへと分化し、そのXX/XYは生涯、そして遺体となっても変わることのない事実である(人口4500人にひとりの割合で発生する性分化疾患・DSDの人であっても男女の性別は判定できる。また、性分化疾患・DSDを例にあげて、「人間の生物学的性はスペクトラムだ、グラデーションだ」などと教育・啓発することについては、性分化疾患の当事者団体(ネクスDSDジャパン)が「人権侵害である」と抗議している)。先程述べた「性同一性障害」の診断を受け、性別移行手術やホルモン治療しても「生物学的性別」は変わることはなく、XX/XYは元のままで、外見を別の性に似せて改変しただけなのである。
 
 2,「性自認が女性のトランスジェンダーの者」を施策の対象とすることは、「困難な問題を抱える女性の安全・安心」を損なうので、対象から外すように要望する。
 すでに、某シェルターの自助グループに「トランス女性」が参加したことがあると聞く。いくら外見を女性に似せてもその態度や言動などから生物学的男性であることは容易に認識できるため、参加女性たちが委縮してしまったという。「性自認が女性」を対象者に設定することは、女性支援センターの窓口で彼らの相談を受け入れるということであり、女性自立支援施設に彼らの入所を受け入れるということである。性売買を生き延びた女性、性暴力被害を生き延びた女性、DVを生き延びた女性にとって、「トランス女性」を自認しても男性は男性であり、被害女性たちにとってトラウマのトリガー(引き金)になることは明らかであろう。法律が、そして地方自治体が受け入れると定めた場合、支援対象の女性たちは、「トランス女性」を自認する男性が入ってくることを「嫌だ」と言えるであろうか?男性からの暴力に「過剰適応(これも被害によってもたらされた症状と言える)」してきた女性たちは、自分を被害から助け出してくれる人を容易に信じることができない傾向がある。「人を信じられない病」(小林桜児著・日本評論社)によると、他者への不信感から適切に周囲に助けを求めることができない「信頼障害」を抱えているということだ。もし、「『トランス女性』を自認する男性」を受け入れてみた結果で判断する」と言うのなら、それは支援対象の女性たちに、暴力・性暴力加害男性から逃げられなかった頃の「過剰適応」を再び強制することになり、せっかく支援の窓口にたどり着いた彼女たちの「信頼障害」=「人を信じられない病」を強めるだけだし、困難な問題をかかえる女性たちに新たな困難をもたらすことになる。
 
 3,これは本題ではないかもしれないが、今回の「基本方針」に関連して、「トランスジェンダー」「性別違和」の背景にある疾病・障害についても要望したい。
 「トランスジェンダー」「性別違和を訴える人」の背景には、発達障害・自閉症スペクトラム・統合失調症・境界性パーソナリティ障害、オートガイネフィリア、性被害のトラウマ、子どものころの性虐待が潜んでいることが、海外では明らかになっている(紙面の都合ですべてに亘って紹介することは出来ないが、英国のタビストックジェンダークリニックのクライアントの35%が中度、または重度の自閉症スペクトラムだという報告がある)。つまり性別違和の原因が、実は性別移行しても解決しない問題であることが多いのである。
 厚生労働省には、「性別違和」「トランスジェンダー」当事者に本当に役立つ科学的根拠に基づいた支援策を策定するために、精神科医・福祉関係者などの識者と連携して、当症例の研究を推進していただきたい。厚生労働省が「困難な問題を抱える女性」にシフトするというならば、なおさら「トランスジェンダー」「性別違和」の背景についての深い理解が必要である。なぜなら、前述のように、女性が「性別違和」に苦しんだり、男性にトランスしたいと訴えたりする場合、それは、性暴力・性虐待のトラウマの結果であることが往々にしてあるからである(本人が気づいていないことも多い)。「性別違和」のある女性の問題は、「困難な問題を抱える女性」問題と通底しているという理解を持って欲しい。
 前出の、『人を信じられない病』58~61頁にある「解離性障害」20代女性ケースの記述を参照され、適切な支援策を考えて頂きたい。

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