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DQMシリーズ総合ガイド

DQM(Dragon Quest Monsters)はDQ派生作品の1つであったが、その人気の高さによりシリーズ化し、今では25周年にもなっている。当然、その間に発売された作品の数も多く、入門者が何から始めるべきか分かり難くなっている。そこで、本稿ではDQM作品間の関係を整理し、現行機種で遊べるかどうか、登場モンスターやシステムの面で他の作品と差別化される固有の強みがあるかどうか、この2つの観点から優先順位付けを行う。


DQM作品の系譜

DQM作品は多々あるが、登場モンスターやシステムという点では、その関係は次の図のように整理することが出来る。

DQM作品の系譜

色枠の中の文字が作品名(の略称)を表しており、それらの配置と矢印により関係性や位置付けを表現している。黒の実線はモンスターとシステムの継承を表す。継承先の作品は継承元に登場したモンスターとシステムのほぼ全てを保持しており、その上で追加や発展が行われた拡張となっている(世界観やストーリーも継承される場合には太線)。ゲームデザインにおける続編ということで、これらが基本的に横一列に並ぶよう配置した。

その一連の繋がり(系譜)が縦に並んでおり、上が古く、下が新しい作品群となっている。系譜間においても直前のものとのシステムの変更が特に大きい箇所が見受けられる為、青い破線を引いてそれを示した(DQMCHからDQMJの変化は特に大きいので、線を太くし特に大きな変更点の説明を加えた)。
2つの破線によって系譜が3つに分類されるが、上から順に第1期、2期、3期のように以後呼び分けるものとする。

但し、各系譜間は完全な独立関係ではなく、時に系譜を跨いだ関係性を持つことがある。それを黒い破線で繋ぎ、説明文を加えた。例えばテリワン3DはJ2Pから実線、DQM1から破線(世界観と表ストーリーが同じ)が伸びているが、これはJ1~J2Pを発展させたシステムでDQM1をリメイクしたが故にこのようになっている。

作品名を囲う枠の色が赤と青の2種類あるが、赤枠は筆者が入門者にとって重要だと判断した作品である。判断基準は最新機種で遊べるかどうか(中古屋巡りが不要であること)と継承関係・系譜から見て内容が充実している(固有の強みがある)ことの2点である。現行機種で遊べる作品を第1~3期それぞれから1つずつ、極力継承関係の終端かつストーリーの重複が無いように選択した。

1位:現行機種かつ固有の強みがある

DQM1

DQMシリーズの初代。Nintendo Switch及びスマートフォンに移植されており、第1期の作品の中で唯一現行機種で遊ぶことが出来る。

システムは第2期以降の作品とは大幅に異なっており、配合の際に両親からスキルではなく特技を直接受け継いでレベルアップで習得する、+値の高さに応じて両親から耐性を引き継ぐ等、現在では採用されていないものが多々存在し、この時代ならではのやり込みがある。古いゲームであるが、今より単純で内容が浅いという訳ではないのだ。

特に魅力的なのは配合の作り込みで、1種類のモンスターに数十種類の特殊配合のパターンが用意されていることも珍しくない。繰り返しゲームを遊んだり攻略本を読み込むことで別の配合パターンを知るにつれ、より効率的な配合ルートを思い付き、上達を実感出来るであろう。これ程濃密な配合体験はDQMJ以降の作品では味わえない。極端に配合パターンが多いモンスターとして下の画像に示すストロングアニマルが知られている。

ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド 公式ガイドブック下巻 
究極モンスター育成編 p94

移植の際に通信要素が削られているものの、シリーズ最大のヒット作にして原点であるから、是非一度はやるべき作品である。

イルルカSP

Nintendo 3DSで発売されたイルルカを追加要素と共にスマートフォンに移植したもので、ゲームのボリュームにおいてシリーズ最大を誇る。このことはDQM作品の系譜の図を見れば、数多くの作品から矢印が伸びていることより確認出来るだろう。特に903というモンスター数は圧倒的で、単なる色違いを除いてDQ1~11のモンスターの約90%をカバーしている。DQのモンスターを集めて育てて戦わせるというDQMのコンセプトを最大限に体現しているという訳である。

通信機能もきちんと搭載しており、オンライン他国マスターという非同期のAI対戦の他、いろんな人と対戦というリアルタイム対戦も実装されている。イルルカ時代から存在した称号というシステムも併せ、やり込み要素の多さは随一。期間限定でしか入手出来ないモンスターも存在せず、当然今からでもその全てを堪能出来る。

まさにDQMの終着点とでも言うべき作品で、これを極めることこそDQMを極めることなのだ。

DQM3

Nintendo Switchで発売されたシリーズ完全新作。他の現行機種作品は旧来機種からの移植である為、グラフィック等はシリーズ最良である。モンスターの3Dグラフィックが他のDQ作品と同じものになったというのは感慨深い。

本作の特徴はシステムの簡略化である。DQM第2期はJ3P、イルルカSPの2つがシステムの継承における終端であるが、複雑化が進み過ぎて初心者の参入が難しくなっていた。本作ではシステムを刷新し、ハードルを下げている。それと同時に、第1期のシステムの一部を現代的にアレンジして復活させ、マンネリの打破も意図されている。例えば配合においてはDQM1、2のような系統×系統で生まれる種族が決まる系統基本配合の概念が、第2期の位階配合のようにモンスターのランクの影響を受けるという形に改変されて復活している(これは結果的にはDQMCHのランク転身に似ている)。

またストーリーにも力を入れており、DQ4の登場人物を主役とし、あり得たかもしれないDQ4の別のストーリー、ifを展開している。詳細を見ていくとDQ4と矛盾点があり、DQ4の展開に寄せる為に無理をしている部分は見受けられるものの、DQはナンバリング作品しか経験してこなかった人にとっても興味を引くものとなっている。システム簡略化もあり従来のDQMシリーズのヘビーユーザーには物足りない作品ではあるが、やり込みではなくストーリークリアを目標としてDQM初体験をするには向いているであろう。

マクドナルドとのコラボモンスターが3匹存在し、彼等は通常プレイでは現在入手する手段は無いものの、それ以外のモンスターの入手には影響はせず配信限定モンスターへのこのゲームの依存度は低い。これも評価点。

2位:現行機種

テリワンSP

Nintendo 3DSで発売されたテリワン3Dを追加要素と共にスマートフォンに移植したもの。スマートフォンに最適化された操作性は非常に良く、作品それ自体は初心者から上級者までお勧め出来るクオリティ。3DS版には存在した配信限定モンスターも、本作でなら全て通常プレイで仲間に出来る。但し、ストーリーはクリア前部分がDQM1と共通し、登場モンスターはイルルカSPに完全に包含されている。故にストーリーとモンスターの2点で強みを主張し辛く、その点で評価を若干下げた。一応テリワンSPの固有要素として口伝技が存在している。

3位:旧来機種だが固有の強みがある

DQM2

DQM1の順当な発展形。それだけで面白さは保証されているが、本作の魅力は当然不思議な鍵である。不思議な鍵で行ける世界はランダム生成世界であり、大陸、町、ダンジョン、ボスの城、これらが複数存在する立派な一つの世界なのである。これはDQM2の世界観や表ストーリーを継承したイルルカの錬金鍵が、ストーリーで行ける世界のマップの一部を切り取って作られた世界でクエストをクリアするだけなのと比べると大きな違いである。鍵を集めることの楽しみはこちらの方が遥かに大きいと言えるだろう。

通信機能においても対戦のような定番のものだけでなく、協力プレイや夢見るタマゴ(イルルカの同名システムとは内容が大きく異なる)等、他の作品には無い固有のものが存在している。協力プレイは貴重なモンスターの実質的な増殖が可能で、夢見るタマゴは不思議な鍵でダンジョンに挑み続ける動機になる。物珍しいシステムであるが一般のユーザーにとって無縁のものではなく、ちゃんと楽しめるものだったのだ。

世界観や表ストーリーは基本的にイルルカと同じである為、既にイルルカSPを遊んだユーザーからは新鮮味は薄いかもしれない。クリア後のストーリーは別物であるし、DQM1のテリーやミレーユが登場し、会うことが出来るという魅力はある。

DQMCH

DQM最大の異色作。パーティをモンスターではなくガードモンスターと人間の乗り込んだ馬車のセットで構成し、配合ではなく転身によってモンスターの種族を変えて強く育てていく、フィールドでは戦闘だけでなくイベントが発生し、食料の管理やベースキャンプの作成や移動……DQMどころかDQ全般の他作品には全く見られない固有のシステムが極めて多い。モンスター育成のシステムではDQM1、2と共通点が比較的多いので今回は第1期としたが、本作だけで独立した位置付けにしても構わないくらいである。加えて登場モンスターも本作オリジナルかつ他作品に再登場していないものが多い。DQM他作品からは得られない独特のユーザー体験を約束する。冒険の舞台はDQ2の遥か未来で、楽曲もDQMのものとDQ2のものが入り混じり、そこも新鮮に感じられる。

J3P

世界観やストーリーの点でジョーカーシリーズの完結作。J3にストーリー、モンスター、システムを追加したプロフェッショナル版。第2期の継承関係の終端の1つで、もう1つの終端であるイルルカSPは基本的なシステムがイルルカ準拠である為、システムの複雑さに関しては本作が更に上、その中でも特にライド合体が特に有名。理解に労力を要し人を選ぶものの、本作の魅力はそこにあると言えよう。

但し、登場モンスターという点では、色違いが異様に多いJ3がベースである為、700種類以上という数字に比して体感的には多く感じ難い。J3及びJ3Pが初出のモンスターもその殆どがイルルカSPに収録されたので、ダイの大冒険とのコラボモンスターを除くと本作特有の魅力となるものに乏しい。そして配信限定モンスターやそれを配合に使う必要のあるモンスターも多い。3DSのインターネットサービスが終わり、対戦やモンスター収集に支障が生じるようになると、本作の価値はやや薄れざるを得ないであろう。

4位:旧来機種

DQMJ

ジョーカーシリーズ第1作目。グラフィックの完全3D化、シンボルエンカウント、スキル、特性、耐性の簡易化と可視化、位階配合等と、システムの大変更が行われた革新作。しかし本作の時点ではモンスターやスキルの少なさから潜在力が活かされていたとは言い難い。これが花開くのは次作のJ2からである。また、低ランクモンスターはどれだけ鍛えても弱く、高ランクモンスターには敵わないというゲームデザインであり、任意のモンスターがしっかり鍛えれば強くなれるこれまでの作品とは全く異なっており、これは反発と批判を招いた。この欠点はJ2P~イルルカで漸次的に改善される。少数とはいえ配信限定モンスターは存在したり、1匹しか仲間にならないモンスターを使う配合パターンが複数ある。このように一人プレイにおけるモンスター収集の障害が増え始めたのも今作から。

J2P

完成度が高く第2期の長期に渡る発展の礎となったJ2の拡張版なので、ゲームそれ自体は優良。しかしそれだけに後続作に本作の要素はほぼ全て継承されており、後続作を遊んだ後に本作をやることの意義は薄い。更には配信限定モンスターが異様に多く、特にタマゴ入手手段の制約から、新規に作成したセーブデータでは、他のプレイヤーとの通信機能を利用しても、決して全てのモンスターを仲間にすることが出来ない。一応、高難度の勝ち抜きバトルはあり、一人プレイのやり込みを行う人はいるが、初心者には関係の無い話である。

5位:拡張版がある

J2

モンスターにサイズという概念が追加され、モンスターやスキルも増加し、DQMJで作られたシステムがその本領を発揮し始めた名作。本作の成功のお陰でDQM第2期は多数の作品を長年に渡って発売し続けられたと言えることだろう。ただ、ストーリーにしろモンスターにしろ、プロフェッショナル版のJ2Pの方が充実しているので、基本的にはJ2Pで十分。一応、本作は通信機能を使えば配信限定モンスターも含め全てのモンスターを仲間に出来、J2Pは一部のモンスターはJ2から連れて来ないと入手出来ないこと、この2点はJ2Pをやっていても残る本作の価値ではある。

テリワン3D

システム的にはJ2Pからの発展で、世界観や表ストーリーはDQM1を踏襲した作品。パーティの枠数が増え、最大4匹のモンスターで構成出来るようになった。巡り合いの扉というものが登場したことにより、一度仲間にした種族のモンスターの再入手が可能となり、図鑑完成の通信依存度が下がったのも長所。他のプレイヤーとの通信によって入手可能ではあるものの、配信限定モンスターは存在する。ゲームそれ自体は優良ではあるが、スマートフォンに追加要素ありの移植が行われているので、今ではテリワンSPを差し置いてこちらを遊ぶ意義は薄い。

イルルカ

システム的にはテリワン3Dの更なる発展で、世界観や表ストーリーはDQM2を踏襲。超ギガボディという今までより更に巨大なモンスターが登場。本作はモンスター数が803と多く、イルルカSPを除けばシリーズ最大。そのことから分かる通り、ゲームそれ自体としては傑作なのだが、イルルカSPが存在する現在では本作をやる意義は薄い。他のプレイヤーとの通信によって入手可能ではあるものの、配信限定モンスターは存在する。

J3

名称に反し、DQMJから続いてきたシステムの全ては継承せず、様々な変更が行われた作品。フィールドや戦闘中にプレイヤーがモンスターに乗るというライドシステムが登場した。しかしライドの都合からモンスターのグラフィックやモーションがほぼ全て作り直されており、その労力故かモンスター総数のテリワン3Dやイルルカと比べた大幅な減少、及び膨大な色違いによる水増しが発生した。意欲作ではあり、また対戦において運要素が少なく実力が出易いゲームバランスが玄人から(J3Pではなく本作が!)評価されていたりと長所はあるのだが、初心者には勧め難い。モンスターの追加が行われ欠点が緩和されたJ3Pをやればそれで十分であろう。配信限定モンスターも存在する。一応、J3Pでは一部のモンスターの入手に本作が必要である。

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