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経過報告 ー2019ー


今年は初連載もありメインとしていた仕事も少しセーブさせてもらい、いろいろとギリギリではあったが、自分の漫画で主な生計を立てた一年だった。
在宅での仕事が増え生活のスタイルが変化し、外出することがかなり少なくなった。そうすると体調面に不安が出てくる。基本的に虚弱体質で体を動かさないと不調が現れるので、結果、時間のできる深夜に一人で町を走ることにした。
不思議なもので、座り仕事で体も頭もヘトヘトになればなるほど走りに行きたくなり、真夜中、いろんな疲れを振り払うような気持ちで走った。そして走りながら少し先のいろんな事を考える。連載のことやきつねとたぬきのことや、その時に直面している問題のこと。
一日の終わりに「走る」ということが気分転換となり、日々のバランスを整えていたのだと思う。
そんなとある深夜、走り終えて自宅に戻る途中、一軒家の薄暗い庭先に人影を見た。背格好からどうやら男のようで、中腰になり庭の窓から中を覗いているようだった。一瞬覗き魔かと思ったが道路からすぐ近く、歩いている私との距離は1メートルもない。こんな大胆に覗くわけないかという気になり、窓の開閉の調子を確認するその家の人だと結論づけた。
帰って風呂に入り、湯船に浸かってぼんやりしてさっきのことを考えると「…やはりあの怪しさ、微動だにしない感じ、覗きだったのでは?」という気持ちになってきた。
お節介だけど、その家の人に「覗き魔に気をつけて」とか言うべきか。いや、自分が言うほどのことでもないか。それに今となっては「覗き」かどうかも確認しようがない。何か悶々としたものが頭に残ってしまった。嫌なものを見てしまった、という感じ。

その後も深夜に走り続けたが、ある日変化が起こった。覗かれていたその家の主人らしき男性が、たまに家の前に立つようになったのだ。何をするわけでもなく、ぶらぶらと体を動かしたり、たまにタバコを吸っていた。
「もしかしたら覗きの対策では…。覗きをされていると気がついたのでは」そう推測した。主人らしき男性になんとなく「おつかれさまです」といった風に眼差しを向けてみた。私の視線に気づいた男性は思いの外、鋭い視線を返してきた。
深夜1時。確かに。どう考えても自分、怪しいですよね。違います、違います。あらぬ容疑をかけられたような気になりながらも、そそくさと家に帰り湯船に浸かった。


ー2019年経過報告ー

1月  「それはまるで呪いのよう」投稿
2月  コミティア127  初めての合同誌「どうぶつとひと」頒布
3月  初連載「3時のとらちゃん」 開始「noteでマンガがお仕事に」投稿
5月  コミティア128 「きつねとたぬきといいなずけ おまけブック」 頒布
6月  「きつねとたぬきといいなずけ」 タコシェ、ポポタムに続いて青山ブックセンター本店にて委託取り扱い開始
       「その先の紙の本」投稿
7月  紙と本を楽しむ会 参加
8月  コミティア128 「きつねとたぬきといいなずけ#4」 頒布
       「夏の終わりの通り雨」投稿
9月  noteにてインタビュー掲載
10月  「3時のとらちゃん」 最終回
11月  コミティア130  「合同誌どうぶつとひと#2」頒布

2019年に行った主なことを並べてみました。
案外いろんなことやっていたなという感じです。上に書き出したものはどれも印象深く、とても良い経験となりました。
1月の「それはまるで呪いのよう」は、Twitterでいわゆる「バズる」ことになり、沢山の方がフォローしてくれて、自らの漫画を多くの人に読んでもらえる切っ掛けとなりました。(描いたのが随分昔の印象で「これ今年だっけ?」と、ちょっと驚きました。)
2月の「3時のとらちゃん」は初めてのマンガ連載でした。初連載が「週間連載」とは想像もしてませんでしたね。
11月の合同誌「どうぶつとひと vol.2」。これは自分の夢が叶ったような出来事でした。豪華な布陣です。

こうしてみると、去年と同様ですが自分の実力以上に運の良さを感じます。いろんな人の力を借りて走ったり登ったりしてきた感覚があります。

こちら、noteから届いた2019年まとめレポート。

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すごい数の人が読んでくれてるんだなと驚きました。本当にありがたい。

note、Twitter、InstagramらのSNSで、また紙の本で読んでくれている方、応援してくれている方、関わってくれた皆さんに感謝しています。おかげで今年も描き続けることができました。

2020年も新しい何かや楽しいものに手を出しつつ、わちゃわちゃと頑張ろうと思います。よろしくおねがいします。


以下、つらつらと雑記です。

今年何で笑ったかなと考えたら、自然と村上ショージさんのことを思い出した。中川家のラジオ、その日のトークゲストの村上ショージさんが自らのR-1出場のエピソードをお話されてて、それを聞いて腹がよじれるほど笑った。傍らで茶々を入れる中川家のお二人も本当に楽しそうで相乗効果で幸せな気分にもなった。
あと、ワッキービーン2019。あれも繰り返しtverで見た。最高に狂ってておかしかった。加賀屋のコンビニのコントの加賀さんの表情。これは笑ったし感嘆した。昨日のオールザッツの白桃ピーチよぴぴもヤバかった。昔から笑えるものを貪欲に求めていました。今年もラジオにテレビに、とても救われましたね。

音楽はナンバーガールが復活して喜んだ。YOU TUBEでフジロックやいろんな音楽フェスが中継されたりもして、見知らぬ音楽に触れる機会も多かった。折坂悠太さんのアルバム「平成」が良くて何度も何度も聞いた。アフター6ジャンクションのライブも素晴らしかったな。
崎山蒼志さんや唾奇さん、さとうもかさんもよく聞いた。あとtofubeatsさんが紹介してたJET SETの「アーティスト・DJが選ぶ2019年のベストディスク」。紹介者のどれもが良くて時間を恐ろしいスピードで食われた。なかでも坂本慎太郎さんの紹介してたPETER IVERSを知れたことは本当に良かった。https://www.jetsetrecords.net/feature/485/
出会いや発見をすると、喜びとともにホッとする。知ってる人には当たり前のことも、(例え、求めていたとしても)遭遇しない人は永遠にそれに遭遇しない。

マンガも今年はたくさん買って読んだ。本当に数年前まで全然読んでなかったのが嘘のよう。
植田りょうたろうさんの「はなちゃんと、世界のかたち」、てらだこうじさんの「2年8ヶ月」、奥田亜紀子さん「心臓」、和山やまさん「夢中さ、きみに」、田島列島さん「水は海に向かって流れる」、三木よう子さん「イカちゃんクマちゃん」、ながしまひろみさん「やさしく、つよく、おもしろく。」、Gao Yanさん「隙間」、松虫あられさん「自転車屋さんの高橋くん」、Bastien Vivès「年上のひと」、Manuel Fior「The Interview」(順不同)…他にもたくさん買って読みました。
今更ですが思い知ったのは、買ってすぐ読んで面白かったら発言しなくてはということ。殆どを買ってはしばらく置いて読んで感動して何か出遅れて発言もせぬまま…。反省。

いろいろと出会いの年だったのかもしれない。合同誌に参加してくれた方たちもそうだし、編集さんとの出会いもそう。自らで出向いたというより向こうから会いに来てくれた人が多い。これが当たり前と思うことはよそう。来年は自らが沢山の誰かに会いに行く年にしたい。


最後に、主にここまでこれを読んでくれている人は「きつねとたぬきといいなずけ」を楽しんでもらえている方たちだと思います。どういう形にせよ、可能な限り続けていきたいと思っているので、よかったら応援お願いします。来年以降、何かしら形を変えての届け方が進行中。いろいろと考えながら先に進んでいこうと思っています。

今年ももう終わり。お付き合いくださり、またお世話にもなりました。良いお年をお迎えください。気楽にまた来年もどうぞよろしくお願い致します。

                           トキワセイイチ

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