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寝違えた貴方へ捧ぐ/特効のツボ治療

 先日、妻が寝違えました。

 軍曹のような妻は、大抵の痛みは表に出しませんが、この日は朝から表情が不穏でした。なんだか微妙に俯いて猫背気味になり、動きが緩慢です。

「Sir, 軍曹。何か問題が発生しましたか?」

 訊ねると、軍曹は気恥ずかしそうに応えました。

「む、君か。実は首を痛めてね。どうやら寝違えたようなんだが、ほら、この状態から動かない。少しも上を向けないよ。困ったな。」

 これは由々しき事態です。
 彼女の不調は家庭の危機。

「Sir, 軍曹。
 畏れながら、鍼治療を提案いたします。」

 Sirは通常男性に用いられる敬称ですが、軍曹然とした彼女への敬意を表するのにMa’amはしっくり来ないのです。

「…君にそれができるのか?」

「Sir, Yes, sir!!」

 ドイツの医学薬学は世界一ィィィ!で有名なシュトロハイム少佐の登場シーンで少佐の髭を剃っていた淑女のような気持ちで、私はジョジョに彼女の治療を始めました。

 寝違えた状態を西洋医学的に表現すると、筋組織への阻血、筋痙攣あるいは一時的な拘縮、頸椎関節炎などということになりますが、原因も治療も定かではありません。勿論、寝違えたと思っていたら他の病気が隠れていた、ということもあり得ますから要注意ですが、多くの場合、寝違えたときには東洋医学的治療が有効です。(頸椎椎間板ヘルニア、神経根症、脊椎腫瘍、脊椎炎、関節リウマチなどは西洋医学的な鑑別疾患に挙がります。)

 「寝違え」は古来、落枕ラオチェンと呼ばれてきました。中医学的には該当する経絡に気結(気の流れが滞って溜まること)が生じ、その結果として必要な組織への血流が不足したり筋肉の過緊張が起きたりすると解釈します。日本の漢方薬では葛根湯類や芍薬甘草湯を試しますが、私の経験上、寝違えたときには中医学的な鍼治療が良く効きます。

 手元に豪鍼ごうしんはありませんから、鍉鍼ていしんと置き鍼での治療を行いました。治療を始めて15分もすると、痛みが軽くなり首が少し動くようになりました。1時間後には日常生活ができるくらいに回復し、翌日には僅かな違和感を残すものの殆ど完全に治癒に至りました。

 皮膚に刺入するプロの鍼治療の方が早く良く効くかもしれませんが、今回私が用いたのは指圧に近いような刺さない鍼と、細さ0.18mmで長さ1mm程の置き鍼です。道具がなくともツボを知っていれば、できることは多いでしょう。

 経絡治療は画一的に論ずることのできないオーダーメイド医療。同じような症状でも同じ治療が最適とは限りません。この先に治療の内容を記載しますが、あくまで参考として、ご理解いただける方のみお進みくださいませ。

(記載内容の性質上、メンバーシップ限定公開とさせていただきます。)

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