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白い巨塔という現実

 思い出話をしましょう。

 テレビドラマでも話題になった『白い巨塔』は鬼才・山崎豊子先生の最高傑作のひとつです。不朽の名作である同書を初めて読んだのは高校に入学して間もない頃でした。医療の裏側を見たような臨場感と人間の欲望や謀略の錯綜は、そのすべてを理解することはできずとも、実に刺激的な体験でした。

 医師として働いてきて思うのは、白い巨塔はほぼ事実を書いた小説であろうという感想と、事実は小説よりもヤバいということです。

 日本の大学の役職を整理しましょう。

 2007年に法律が改正されて一部の名称が変わりました。白い巨塔は法律改正前の小説ですから、この点には注意を要します。

 教授、助教授、講師、助手の順番から、
 教授、准教授、講師、助教、助手の順になりました。

 大学医学部附属病院の「医局」を考えますと、組織によって多少の差異はあるものの、役職の序列は絶対的で逆らうことは困難です。

 教授の権力は大きく、管轄地域の医師人事権を掌握しています。医局崩壊という言葉もありますが、まだまだ大きな影響力のある立場です。
 准教授は教授の補佐的役割で、改正前の助教授と同等です。医学部では教授の専門と少し異なる領域を得意とすることが多いように感じます。次期教授、あるいは他大学の教授職や総合病院の要職に転職することが多いでしょう。
 講師は准教授に続く役職で、教授選に立候補することができます。明確な規定はありませんが、最前線の臨床業務よりも研究や論文執筆、学生教育に割く時間が大幅に増えることが特徴です。
 助教は臨床業務のリーダーを任される立場でありながら、後進の教育と自身の研究にも追われ、講師以上への昇進を目指す役職です。
 助手または医員と呼ばれるのは序列最下位で馬車馬の如く働きます。
 この下層に研修医がいて、しばしば(比喩表現ではない)人権問題が勃発します(ただしこの15年くらいで随分と世論も変わって労働環境が改善したと思います。)。

 

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