BL小説【親友悪友腐れ縁?!】3ページ目
※最後まで無料で読めます。投げ銭方式です※
「フッ…。ハズレだ。残念だったな、巽」
咄嗟にポーカーフェイスをかましてみた。
上手く誤魔化せるか、微妙に心臓がドキドキしている。
「…そうか」
お、意外とあっさり引いてくれたぞ。
これはもしかして…オレの勝ち?
「じゃあ今回の賭けはオレの勝ちってことで。ワックバーガーのデラックススペシャルバーガー楽しみにしてるぜ~」
ポーカーフェィスがバレるのもイヤだったから、さっさとその場を立ち去ろうとした瞬間――。
「ちょっと待て」
「へ?うわっ!」
ぐいっといきなり胸倉を掴まれた。
「徹クン。ひとつ尋ねたいんだけど…。じゃあ、あのときキミはいったい何を考えていたのかな」
「そ、それは」
ああ。
にこやかすぎる笑顔がかえってコワイ。
「すぐに答えられないってことは…さっきの嘘だろ」
げー。
やっぱりバレてる。
「そ、そんなことねーよ」
こうなりゃ、とことん嘘をつくしかない。
…巽相手にどこまで通用するかわからないけど。
うわっ…。
自信ねえ。
「俺言ったよね?嘘ついたらペナルティだって」
「だ、だから嘘じゃねーって」
「へぇ~。まだシラ切るつもりなんだ」
ぎゃーっ!
巽、マジで怖ぇっ!!
「…すんません。嘘つきました」
「わかればよろしい」
素直に謝ると、パッと身体を離してくれた。
「じゃあ、賭けは俺の勝ちだな」
「…なんでオレが嘘ついてるってわかったんだ」
納得がいかない。
確かに、巽とは昔から仲が良かったけど、たったそれだけで他人の考えていることなんてわかるもんなのか?
どう考えたって普通ならあり得ない。
「――…どうしてだと思う?」
「知るか」
オレの返事に軽くため息をつきながら、くしゃっと髪の毛をいじる。
「女の子をナンパするための策は思いつくのに、どうしてそれ以外に頭が回らないのかねぇ」
「んなもん、興味がないからに決まってるだろ」
「うわ~。そこで言い切るお前もお前だよ」
「…ほっとけ」
どーせ、オレは巽みたいに他人のことに気が回らねーよ。
「ま、いいけどさ。さて、約束通り俺の言うことを何でも聞いてもらいますよ~」
「くそ~。なんかムカつく」
「ちなみに嘘までついたんだからペナルティも含めて、な」
ニヤリと笑う巽。
ぞぞぞぞぞ。
さっきのも凄かったけど、いまのはもっと怖い…。
なーんて弱みを見せても仕方がない。
ここは潔く負けを認めてやろうじゃないか。
「ふ、ふん。オレも男だ。約束したからには何でも言うこと聞いてやるさ」
「うーん…。潔い徹が見れるなんて明日天変地異でも起きなきゃいいケド」
「どういう意味だっ!」
人がせっかく意を決して、なんでも言うこと聞いてやろうかと思えばこの仕打ち…。
あー…。やっぱりコイツの言いなりになんてなりたくねぇ。
「そういえば、お前明日までの英語課題大丈夫なのか?」
いきなり先ほどの話とは無関係の話が急に飛び出してきた。
なんで、そこでいきなり話題が変わるのかナゾだけど、気にしないでおこう。
「げっ。そーいえば、あの遠藤とかいう先生って成績悪い奴には容赦ねぇんだよなぁ…」
いままで忘れていたのに、思い出しちまった。
勉強なんて考えたくもない。
考えるだけで憂鬱になる。
オレのリアクションを見るなり、巽は目の前で盛大な溜め息を吐いた。
「やっぱりな…。どーせ、おまえのことだ。誰かに見せてもらえばいっかー。とか考えてたんだろ」
「そんなこと考えてねーよ」
「じゃあ、そんなことすら思いつかなかったってことか…」
ぎくっ。
巽の言葉を聞くなり、視線を反らすオレ。
実は図星です、ハイ…。
「ノーコメントってことは、当たってるんだな」
また溜め息。
「な、なんでそういう風にオレの考えを簡単に決めつけるんだよ!少しくらいオレが真面目人間だー、っていう考えは持てないのかよ?!」
「生憎、今までの経験上のことを考えるとそれはありえない」
「くぅ~っ!いちいちムカつくヤツだなお前は~っ」
「お誉めるめにあずかり光栄だね」
「誉めてねーよ!」
「はいはい。戯言は後でいくらでも聞いてやるから、まずは英語の課題ちゃっちゃっと片付けよーね~」
そう口にするやいなや、巽はオレの手を握っていた。
「うわっ。てめー、なんでオレの手握ってんだよ?!」
いつの間にか巽に手を捕まれていた。
まるでオレを逃がさないかのように…。
「なんでって…。明日の課題教えなくていいんだったらこのまま帰すけど?」
「…それは―…」
ぶっちゃけ、このまま巽と別れたら確実にオレは課題をやらないだろう。
んで、明日英語の先生にこっぴどく叱られたあげく、居残りで補修授業決定ー。
あんな、ねちっこい先生と一緒に補修するのだけは勘弁だ。
「優秀な俺様が教えてやるって言ってんだから、徹はおとなしくついてくればいーの」
「イヤミなやつだな~」
「はいはい。教えて欲しいならさっさとついてくる。いまならスペシャル特典として、かの有名な高宮のショートケーキがついてきますよ~」
「行かせていただきます」
力強く巽の右手を握りしめる。
「お前って本当に現金なヤツだな~」
「うるせー」
笑われながらも、オレは英語の課題を片付けるために巽の自宅に向かった。
◆ ◆ ◆
「わからねー…」
巽の自宅にくるなり、早速ぷち勉強会が始まって数十分。
意味不明な英単語にオレは頭を悩ませていた。
「もうギブアップか~?まだ一問も解けてないじゃないじゃん」
まだ休憩には早いというのに、どうやら巽はケーキとコーヒーを持ってきてくれたようだ。
く~っ。
目の前のケーキがオレを呼んでいる~!
どーせ巽のことだ。
勉強が終わらなきゃ食べさせてくれないだろう。
「うっせーなぁ。オレは生粋の日本人なの。だから日本語以外は、脳みそが受けつけねーんだよ」
「生粋な日本人は、手当たり次第に女の子をナンパしたりしないと思うぞ」
「やかましい。おまえだって似たようなもんだろーが」
「俺は別に徹みたいにナンパしてないし。普通に歩いてたら、勝手に彼女たちのほうから声をかけてくるだけだ」
「うわーっ…。イヤみな奴」
なんだこれ。
巽の自慢話聞いてるみたいで、イライラが募ってくる。
「ほーら。口動かしてないで頭と手を動かせって。じゃないといつまでたっても終わらないぞ~」
「へーへー」
ぺしぺしとノートで頭を叩かれながら仕方なく机の上の教科書を見る。
「あ~…。そーいえばさ」
「なんだ、まだ何かあるのかよ」
半ば呆れたような声でため息を吐かれた。
「さっきから気になってたんだけど、オレはおまえの何を聞けばいいワケ?」
「徹…。おまえ、そうまでして勉強したくないのか…」
だーっ!
んな、哀れむような眼差しをオレに向けるんじゃねぇっ。
まるで、オレがバカだから勉強したくないみたいに見えるじゃねーか!
「ちげーよ。あんまり変なこと言われても困るだけだ」
「ふーん…。ま、せっかく徹のほうから聞いてきてくれたことだし。んじゃ、ま。俺のお願い聞いてもらおうじゃないか」
ニタリと笑う、その何か企んでいるよーな笑顔は止めてほしい。
どーせ、ロクなお願いじゃないだろうけど…。
賭けはオレの負けだったし。
巽の言うことを聞かなきゃいけないってのは、仕方ないといえば仕方ないが―…。
やっぱりなんか屈辱的だ。
そんなことを考えながら巽の方を見ている、巽がやたら真剣な表情でこっちを見てきた。
(な、んで…。そんな目するんだよ)
真剣過ぎる眼差しに一瞬身体が強張った。
「徹。女遊びをヤメロ」
巽の唇から紡ぎ出された一言。
眼力がいつも以上に鋭い気がした。
「は?」
「だから、いい加減に手当たり次第女性を口説いたりするのをヤメロって言ってんの」
と、思っていたのに、いきなり真剣な口調からガラリと変わっていつもと同じ口調の巽。
…気のせいだったのか?
「アホか、お前。オレにとって一番大切な女の子たちとの付き合いを、どーして止めなきゃなんないんだよ」
「迷惑だから」
「言ってる意味わかんねーよ」
迷惑?
オレと女の子が付き合うことで巽にとって迷惑なことって一体なんなんだ?
女をオレが横取りするのが迷惑?
それとも目の前でイチャイチャしているのが迷惑とか?
いまいち巽の言っていることがよくわからない。
「とにかく!オレの青春は女の子たちとデートすることなの」
冗談じゃない。
せっかくの高校生活を、女の子ナシで過ごせっていうのか?
そんなつまらない人生、オレは歩みたくないぞ。
たとえ、親友であってもオレの青春を奪おうとするヤツは許さん。
机を挟んでいるとはいえ、巽が目の前にいるのが気に入らなくて後ろのベッドに腰掛ける。
「おいおい。約束が違うぞ」
「いくら賭けの約束でもこれだけは聞けねー」
「…賭けに勝ったら、人にワックバーガーのデラックススペシャルバーガーを一ヶ月間奢らそうとしたくせに…」
「そ、それは~…」
ぽそりと呟かれた言葉に、ぐっと詰まる。
「…徹の願いはお金がかかるのに、俺のはタダ同然…」
「ぐぐぐっ…」
そこまで言われると返すに返せない。
くそ~。
人を悪者にしようと、ねちねち攻撃してきやがって~。
「…男のくせに約束破るのか…?」
その一言が、オレの中の何かを爆発させた。
「だーっ!うるせぇっ!わーったよ!んじゃ、こうしようぜ」
ただでさえ嫌いな勉強をやりにきたのに、さらに巽の小言を聞かされちゃー堪ったもんじゃない。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?