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4月になれば彼女は

BOOK REVIEW おとなのどくしょかんそうぶん

4月になれば彼女は / 川村元気

読み終えて最初にどっと押し寄せた疲れ。なぜ疲れたのだろう。
満足感でも不満感でもないこの疲労。そのまま、解説ページを読み進めると、作家あさのあつこさんの解説にこのように書かれていた。

軽やかに生きていたいと望む人は、
すてきな恋をしたいと願う人は、
すてきな恋をしていると公言できる人は、
誰かが愛して、幸せにしてくれると信じている人は、
読書は楽しくてためになると口にする人は、
この本を読まない方がいいと思う。

4月になれば彼女は /解説ページより あさのあつこ

これだ、これにきっと私は当てはまるのだ。だからなのか。
読みやすく一気に読み進めたのに、現実に戻るのに時間が少しかかったのはきっとこのせいだと思う。そして、あさのあつこさんは解説でこうとも言っていた。

妙な胸騒ぎと焦燥感に似た感情に揺さぶられて、落ち着かない心持ちになるのだ。
・・・
現実に戻るためにしばらく時間を費やす。

4月になれば彼女は /解説ページより あさのあつこ

9年前の手紙から始まるこのお話。1年かけて結婚式の準備をする主人公の心の揺れ動きを1ヶ月ごとに書いてある。
年明けの1月、つまり結婚式3ヶ月前は、「彼女」からの手紙だけだった。
3月、つまり結婚式1ヶ月前のタイトルは「三月の終わりに彼は」だった。

人は、昔のことを後悔することがある。この本では、あえて昔の美しかった記憶を紐解き、解体することで人間の持つ感情そのものに近づいている気がする。だから、読み終わった時に、どっと疲れがでたのかもしれない。

「私は愛した時に、はじめて愛された。」

4月になれば彼女は/川村元気

これも「彼女」から受け取った言葉。なんて解釈が難しいのだ。
これがわかる日が来るのか、もう少し歳を重ねたら、もう一度読もう。
そのための備忘録が、この感想文。


T.M



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