県議の年間報酬のコピー

【福島県】県議会をダメにする専業議員

年間80日前後で1400万円の法外報酬


今年は県議会議員の改選期(10月31日告示、11月10日投票)。といっても、一般県民からしたら県議会は決して馴染み深いものではなく、中には、「県議(議会)はどんなことをしているのか」と思っている人も少なからずいるだろう。そのくらい、県議会の存在感が希薄ということもできる。一方で、県議の年間報酬は約1400万円で、そのほかに〝余禄〟もある。 


県議会の定数は58で、現在は欠員1(水野さち子氏が今夏の参院選に立候補し、辞職したため)。

 福島県議会のHPを見ると、「県議会のしごと」として、以下のように記されている。

 ①議決権

 立法に関する議決権▽県条例の制定、改正、廃止などを決めます。

 財政に関する議決権▽県の予算を決めたり、決算を認定したりします。

 その他の議決権▽一定金額以上の工事請負契約を結ぶことや、市町村の合併などを決めます。

 ②選挙権

 議長、副議長、選挙管理委員会委員を選びます。

 ③同意権

 副知事、教育委員会委員、人事委員会委員、公安委員会委員、監査委員などを知事が選任または任命する場合には、議会の同意が必要です。

 ④調査権・検査権

 県の仕事が議会の議決したとおりに行われているかどうか、事務の内容を調査(検査)したり、必要によっては関係する人を呼んで調べたり、意見を聞いたりすることができます。

 ⑤意見書提出権

 県民の幸福や利益のために、政府・国会に対して意見書を提出することができます。

 ⑥請願受理権

 県民から提出された請願をよく審査し、採択、不採択を決め、採択したものは知事や関係方面に送付してその実行を求め、県政に反映させます。

 いろいろあるが、やはり最大の仕事は、執行部(知事)が提案する議案の審議や、予算が適正に支出されるか等々をチェックすることだ。

 ただ、例えば内堀雅雄知事が就任した2014年11月(同年12月議会)以降で、知事提出議案が否決されたことは一度もない。もちろん、それ自体が悪いわけではない。ただ、本当に議論を尽くしたうえで可決されたのか、議会が承認した議案(予算執行)などによって県の発展につながっているか、ということを考えると疑問を抱かずにはいられない。何でも通す〝ザル議会〟では困るということだ。

 もう1つ言うと、選挙になると政策的なことを公約に掲げる候補者がいるが、県議会(地方議会)は政策立案機関ではない。事実、前述した期間(2014年12月議会以降)で、議員提案によって「議員定数」や「政務活動費」など、議会そのものに関わる条例(改正を含む)が定められたことはあるものの、政策的な条例が制定された事例はない。

 一方、意見書提出はそれなりにある。昨年9月から今年6月の定例会4回で、25件の意見書提出を可決している。なお、意見書提出については地方自治法で定められ、《普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる》(99条)と規定されている。地方議会の意見を国政に反映させるため、政府・国会に提出するものだが、政府や国会に対しての拘束力はない。

 以前は、県議の最終学歴が県議会報などで公表されていたが、県議会事務局に問い合わせたところ「いまはそういった情報は公表していない」という。加えて、県選挙管理委員会に選挙立候補時の略歴調書があるかを問い合わせたところ、「略歴調書の提出をお願いしているものの、義務ではないため、出さない候補者もいる」とのことだった。そのため、県議の最終学歴をすべては把握できていない。

 ただ、少なくとも東大卒の内堀知事と対等に渡り合えるだけの知力はあるまい。もし内堀知事が〝暴走〟してしまった時、県議会にそれを抑止できるだけのパワーと知力がなければ、佐藤栄佐久元知事(※こちらも東大卒)時代の「県政汚職事件」の二の舞になる恐れがある。

 もっとも、本誌は偏差値が高い議員を求めているわけではない。かなり古い話になるが、天野光晴元衆院議員(故人)は尋常高等小学校卒でありながら国の要職を務め、県勢発展に大きな功績を残した。

 つまるところは、もっと勉強して政策立案ができるようになったり、予算を厳しくチェックしたり、県民の意向を反映させたり、と存在感を発揮してほしいということだ。こうした本来の職責を考えると、いまの県議会は著しく物足りない。同じように感じているのは本誌だけではあるまい。


県議会の活動実態


 県議会の活動実態はどうなっているか。県議会HPの「議会カレンダー」欄から、昨年度の実働(本会議、常任委員会、特別委委員会)を拾ってみた。カッコ内は開催・活動日数。

 4月

 広報委員会(1日)

 議会定数等検討委員会(1日)

 5月

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会(1日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会(1日)

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会(1日)

 各常任委員会県内調査(3日)

 広報委員会(1日)

 6月

 議会定数等検討委員会(3日)

 広報委員会(1日)、同委員会県外調査(2日)

 議会運営委員会(5日)

 政務活動費検討会(1日)

 本会議(5日)

 7月

 各常任委員会(3日)

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会(1日)、同委員会県外調査(3日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会(1日)、同委員会県外調査(3日)

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会(1日)、同委員会県外調査(3日)

 広報委員会(2日)

 議会定数等検討委員会(1日)

 議会運営委員会(1日)、同委員会県外調査(3日)

 本会議(1日)

 8月

 総務、企画環境、福祉公安の各常任委員会県外調査(3日)

 9月

 議会運営委員会(5日)

 広報委員会(1日)

 本会議(5日)

 各常任委員会(2日)

 10月

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会(1日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会(1日)

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会(1日)

 統括審査会(1日)※本会議で審議を尽くせなかった問題や、複数の常任委員会にまたがる問題などについて質問・質疑するため、全常任委員が出席して行うもの。

 各常任委員会(1日)

 広報委員会(2日)

 議会運営委員会(1日)

 本会議(1日)

 決算審査特別委員会(2日)

 11月

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会県外調査(3日)

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会県外調査(3日)

 議会運営委員会(1日)

 12月

 広報委員会(2日)

 議会運営委員会(5日)

 本会議(6日)

 決算審査特別委員会(1日)

 各常任委員会(3日)

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会(1日)

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会(1日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会(1日)

 1月

 広報委員会(1日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会県内調査(3日)

 農林水産、土木、商労文教の各常任委員会県外調査(3日)

 2月

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会(1日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会(1日)

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会(1日)

 議会運営委員会(4日)

 広報委員会(1日)

 本会議(6日)

 政務活動費検討会(1日)

 3月

 本会議(4日)

 議会運営委員会(4日)

 各常任委員会(4日)

 広報委員会(1日)

 交流人口拡大・過疎地域等振興対策特別委員会(1日)

 健康・文化スポーツ振興対策特別委員会(1日)

 避難地域等復興・創生対策特別委員会(1日)

 統括審査会(2日)

 整理すると、本会議が28日、各常任委員会が19日(県内外の調査を含む)、統括審査会が3日、特別委員会(交流人口拡大・過疎地域等振興対策、健康・文化スポーツ振興対策、避難地域等復興・創生対策)が12日で合計62日。そのほか、議会運営委員会、広報委員会などに所属している議員もおり、それらを含めると、80日〜90日程度になる。


議員報酬と〝余禄〟


 一方で、県議の年間報酬は別表の通り。期末手当は条例では「報酬月額×1・45×1・65」が6月、12月の2回で、表に記した金額になるが、昨年12月は乗率が1・65から1・725に引き上げられた。そのため、昨年に限ると、期末手当・年間報酬額はもう少し多くなる。

県議の年間報酬のコピー

 そのほかに〝余禄〟もある。

 1つは旅費。「県議会の議員の議員報酬等に関する条例」によると、議員が本会議や委員会に出席すると、交通費1㌔当たり25円、日当3300円が支給されるほか、「住所が福島市の区域内にない」議員が宿泊すると宿泊料1万4900円(1泊当たり)が支給される。

 そのほか、「議会の招集に応じたとき」以外(視察、調査など)の旅費は、交通費1㌔当たり37円(鉄道、船舶、飛行機などを使用した場合は実費)、日当3300円、宿泊費1万4900円、食卓料3300円が支給される。

 2つは政務活動費。「調査研究その他の活動」のために、会派を通して支給されるもので、月額30万円(条例では35万円となっているが、現在は5万円を減額している)。

 県議会は7月8日、2018年度の政務活動費の収支報告書を公開した。それによると、自民党は交付された9660万円を全額使用した。そのほかの会派は、県民連合が交付額6870万円、返還額2万7551円、共産党が交付額1800万円、返還額1万4871円、公明党が交付額1080万円、返還額59万8993円、ふくしま未来ネットが交付額360万円、返還額7496円だった。全体の99%以上が使用されたことになる。

 この件を報じた福島民報(7月9日付)には、吉田栄光議長の次のようなコメントが掲載された。

 「議員の調査研究など政務活動に伴う費用であるという条例の趣旨に基づき執行されたと考える。各会派、議員が公金の認識をさらに高め、適正に執行する。政務活動費検討会などでさらなる透明性の確保に努める」

 これは、福島県政務活動費の交付に関する条例(第10条)で《議長は、前条の規定により提出された収支報告書について必要に応じて調査を行う等、政務活動費の適正な運用を期すとともに、使途の透明性の確保に努めるものとする》と規定されていることから、こうしたコメントを発表したものと思われる。ただ、公金を適正に執行するのは当然であり、「初歩中の初歩」である。にもかかわらず、わざわざ条例にそうした文言があること自体、不適切な使途が横行している実態を匂わせる。

 3つは、県の持株の関係で、議員は関係会社の役員に就き、報酬を得ている。福島テレビが代表例で、そのほか議会選出の県監査委員などがある。


半数以上が専業


 こうした〝余禄〟があるのは、執行部による懐柔策が根底にあるほか、選挙には相応の金がかかるため、一定程度の報酬が確保されてきた側面がある。ただ、それは古い話で、いまは選挙運動費用の上限額(法定選挙費用)が定められている。これは公選法に基づき、各選挙管理委員会が定めるもので、県議選の場合は「有権者×83円÷定数」+390万円で計算できる。

 例えば、福島市であれば、有権者が約23万5000人で、定数が8だから、「23万5000人×83円÷8人」で約244万円に固定額の390万円を加えた約634万円となる。ほかの選挙区でも大きな差はない。選挙運動の費用はこれを超えることができない。

 一方で、県選管が昨年11月に公表した2017(平成29)年分の政治資金収支報告書を見ると、現職県議関連で1000万円以上の収入があった政治団体はなかった。ただ、数十万、数百万円単位で政治資金を集めている人はいると思われる。

 7月8日、2018年の県議の所得が公開された。それをまとめたのが別表。なお、所得報告書提出は昨年1年間、議員を務めた人が対象で、昨年中に補選によって県議になった7人は対象外。

県議1のコピー

県議2のコピー

 前述したように、正副議長を除く県議の年間報酬は約1400万円だが、表で示したのは「所得」で各種控除後の金額になる。表の金額で言うと、所得総額1173万円の人が県議の報酬のみということにな

る。なお、それを下回っている勅使河原氏と杉山氏は事業所得がマイナスになっているため。

 関連会社の報告をしたのは17人で詳細は次の通り(肩書きなどは本人申告。所得総額が多い順)。

 高宮光敏▽ミヤデン代表取締役、アイシー二本松代表取締役

 吉田栄光▽ヨシダ電子役員

 斎藤健治▽斎藤組社長、鏡石学園理事長、福島テレビ取締役

 太田光秋▽東北建設嘱託

 佐藤憲保▽福島テレビ取締役

 大場秀樹▽菊秀社員

 西山尚利▽ウエストエステート取締役

 宗方保▽保土原屋会長取締役

 小林昭一▽江戸屋酒店取締役

 瓜生信一郎▽福島テレビ取締役

 宮下雅志▽みやした代表取締役

 渡辺義信▽大東土建社員

 佐藤雅裕▽東陵学園評議員

 渡部優生▽東電用地職員

 そのほか、昨年の補選で当選した佐々木彰氏(伊達市・伊達郡)が掛田木工所代表取締役、佐藤政隆氏(本宮市・白沢村)がJAあぶくま未来理事、アグリシャガー代表取締役、丹治智幸氏(福島)がつながるファーム代表取締役――の関連会社を報告している。

 前段の〝余禄〟のくだりで説明したように、斎藤健治氏、佐藤憲保氏、瓜生信一郎氏が福島テレビ取締役に就いているほか、長尾トモ子氏と古市三久氏が監査委員の報酬を給与所得に計上していた。監査委員の報酬は月額6万8500円、監査委員として実際に活動した日に日額1万6000円が支払われ、昨年は約40日だったから計約150万円。そのほかラジオ福島の役員もおり、斎藤勝利氏が就いていたが、昨年7月に亡くなったため、今年公開された県議の所得報告書に同社の名前は出てこない。以前は、県議会から東北電力の役員も出していたが、いまは同社の役員欄に福島県議の名前はなく、県議会の関連会社の報告にもない。

 こうして見ると分かるように、全体の半数か、それ以上が専業議員ということになる。その場合の最大の問題点は、落選したら収入がなくなるため、何よりも再選を優先させる恐れがあること。いまの内堀知事はそんなことはしないだろうが、かつての佐藤栄佐久元知事だったら、自分のやることにケチを付けようものなら、次の選挙でその議員を落選させるべく刺客を立てるようなことをしただろう。そうなると困るから、執行部に厳しい目を向ける姿勢がなくなる。結果、県議会全体が活力を失ってしまう。いまの県議会の存在感の希薄さはそこにも一端がある。

 そういう意味で、専業議員は〝ガン〟で、仕事を持ちながら議員を務めるのが本来あるべき姿だ。前述した実働日数を加味してもそれができないとは思えない。


HP

http://www.seikeitohoku.com

facebook

https://www.facebook.com/seikeitohoku

Twitter

https://twitter.com/seikeitohoku

よろしければサポートお願いします!!