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時間の歪がもたらす絆(#3)

確かに二人で撮したのに…
どう考えても腑に落ちない菫は部屋のドアをノックする。部屋から『何?』と返事が返ってきた。菫は弟琢真の部屋のドアを開ける。
「どうしたの?言っとくけど前借り無理だからね。俺今回大きな買い物してバイト代すっからかんだから!」
「前借りの頼みごとじゃないわよ、てか大きな買い物って何買ったの?」
琢真は机にあるものに指を指した。「あれ」
机の上にあったのは立派なノートパソコン。そりゃ確かに大きな買い物かもしれない。
「どこ見てんの?あのパソコンは学校が貸し出してるやつだよ」よく見たらノートパソコンの横に新作のゲームソフトがあった。琢真のバイト代でこんな立派なノートパソコンが買えるわけがない。
「で、姉ちゃん何しに来たの?俺に用事あるんじゃないの?」
あ、そうだった!と菫は声を出した。
「この写真見てくれる?」
菫はさっきゆかりに見せて菫以外誰も写っていないという写真を見せた。
「これ、姉ちゃんしか写ってないじゃん」
やはり琢真にも見えないのか…
一か八かで菫は今までユカリと出会った経緯を話した。
琢真は最初姉の頭でもおかしくなったかという顔つきで話を聞いていたがとてもふざけてそんなことを言っているわけではなさそうと判断したのか一応信じてくれたようだ。

次の朝菫はいつものように学校に行く、琢真はこの日学校は行事のため休みだった。昨日の菫の話が気になり菫が家を出たあとこっそり後を付けてみた。
菫はのんびりと歩道を歩いていた。数人登校途中の子供がいたが明らかに中学生や小学生だ。
そんな中菫の背後から少し離れた場所からスッーと人が現れたよう見えた。その人物はそのまま菫の背後から肩を軽く叩く。それに気が付き『あらユカリさんおはよう』と言う声が聞こえてきた。
姉の話は本当だったのだ。しかしどこからその少女は現れたのだ?どこかの角から曲がってきたとかそういう現れ方ではない。何者なんだ…?

午後を過ぎ夕方近く菫は学校から下校したがこの日はとても暗い表情だった。泣いているようにも見える。トボトボと家に向かって歩いていると後ろから声がかかる。ユカリだ。
「どうしたの?今日は何か暗いね」ユカリが声をかけてくる。その途端菫の目から大粒の涙が流れ出した。
「わかったわかった、私で良かったら話聞くよ」
ユカリは制服からポケットティッシュを取り出し涙を拭くよう菫に手渡した。
菫は涙を拭くと「ありがとう、私の話聞いてくれるの?」と涙声で訊ねた。
ユカリは無言で頷くと菫は口を開き始めた。

この日は菫の通う学校で会社説明会があった。
様々な会社が集まり就職希望者には面談等をしてくれる。菫は進学希望だったが進学費用なんて賄えないと思い就職することに決めたのだ。
そんな中、菫はある会社に目がとまり面談を受けることにしたのだ。
面談は最初のうちは良かった。しかし他の面談者がいなくなり菫だけになった途端持参した履歴書等を見るなり『あんたのお母さんシングルマザーなんだ、それならろくに躾もされてないからうちの会社で働いても数ヶ月で辞めるんじゃないのかな』ととんでもない事を面接官に言われたのだ。最初は我慢をしていた菫だが面接官の暴言は段々と悪化しついには菫は泣いてしまった。
菫の異変に気がついた他の面接官がやって来て謝罪したものの菫の心の傷は塞がることはなかった。
「そんなことあったんだね。そいつムカつくやつだねぇー私ならぶん殴ってるかも。けど私もこんな事今日あったよ」
今度はユカリが話を始めた。
To Be Continued(不定期連載)

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