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スペイン巡礼2018回想記(13)ロス・アルコス〜ログローニョ

 2018年5月18日。
 この日はロス・アルコスからログローニョまで27.8kmの行程。つまり、トレッキング経験のない人間がスペイン巡礼を始め、足腰ヨロヨロになったり回復したりしたのちに、初めて30km近い行程に挑戦することにした。

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(ロス・アルコスの街も、写真を見直すとなかなかよい雰囲気)

 なにせ30kmもあるのだから、朝は早めに出ようとか思っていた気がするのだが、いつもどおり呑気にしていて出発は朝8時をすぎ、街はずれのホテルを出て巡礼路に入ったころには巡礼者の姿はまばらになっていた。
 ログローニョの宿は、宿なしの恐怖を味わいかけた過去から、もちろんBooking.comで予約済。安心して粛々と歩けばよい。一歩一歩あるけば千里の道も踏破できてしまうのだ。30kmぐらい軽いはず。

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 とはいえ、多少気が急いた私は、リズミカルに歩くべくこの日初めて歩行時に音楽を導入してみた。
 私のiPhoneに入っている曲は、性格上どちらかというとヒーリング傾向の曲が多く、軽快に歩けそうな曲は少ない。
 前職在職中、職場の最寄り駅から職場に向かう20分を歩くのに使っていたのが、ズートピアのオープニングテーマだ。が、この曲はものの3分で終わってしまう。20分なら7回弱ですむが、30kmずっとはさすがにつらい。
 入れるだけ入れておいてあまり聴いていなかった「君の名は。」のサウンドトラックやらsekai no owariやらを遍歴した末、最終的にユーミンのベストアルバムで落ちついた。ユーミンの曲は運転にも合うし、さすがの汎用性だ。

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 ログローニョへの道のりのときは、まだ歩行に合う音楽探しのはじめのころだったので、「君の名は。」の日常テーマの曲を聴いていたときだったと思う。韓国人女性巡礼者に話しかけられた。
 音楽を聴きながら無我夢中で足を急がせていたので、ちょっとビクッとした。欧米系の年配男性と歩いていたその女性に、写真を撮ってくれと頼まれたのだ。
 彼女のコンパクトデジカメで撮ってあげてから、少し3人で雑談した。2人はそれぞれひとり旅で、男性はウルグアイから来たという。

「ウルグアイ、遠いですね。地球の裏からはるばるいらしたんですね」

 と言いかけて、はたと気づく。

 現在位置を考えれば、むしろ遠いのは日本のほうだった。
 のちのち、ガリシア地方(巡礼終盤)のある場所で、その場所と世界各地と巡礼の最終地点サンティアゴ・デ・コンポステラとの距離を示した標識を見かけたが、日本は圧倒的に遠方だった。
 私が自分中心にしか考えてなかったのが、ちょっとおかしくて、なんとなく印象に残ったできごとである。

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 ウルグアイの男性は、今回の巡礼では次の街ログローニョまでで帰国するとのことだった。スペイン巡礼では、区間を分けて何回も何年もかけて歩き切るというやり方もある。

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 さらにその男性は、後日、日本にも行く予定だと言っていた。日本での目的は、塩の道トレイル。新潟から長野にかけて歩く日本のロングトレイルだが、当時はまったくトレッキングの知識がなかったので、「知らないですねえ」ということしかできなかった。
 日本でもスペイン巡礼と似たようなことができると知ったのは、帰国後いろいろと調べてからだ。さすがに四国のお遍路の存在は知っていたが、塩の道トレイルをはじめとするロングトレイルはいくつもあり、あのとき何も知らなくて何もコメントできなかったのがちょっと悔しい。

 私は急ぎ足だったので、ゆっくりめ歩行の2人とはそこで別れた。
 韓国人女性のその日の目的地が次の街ヴィアナだと言っていたので、珍しく通過した街のことを覚えている。ヴィアナは街並みがすばらしく、ログローニョまで行く予定でなければゆっくりしたいぐらいだった。

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 宿を先に予約してしまうと、こういう点が弱い。でも、早起きしてのアルベルゲ獲得競走に参加できるキャラクターではなく、予約して予定を立てていくほうが私には合っていた。

 昼食は、ログローニョにだいぶ近づいた時点の、キッチンカータイプの店でとった。公園のようなスペースの一角でやっており、注文すると石のテーブルまで運んでくれる。キッチンカーなのにけっこうサービスがよいのがおもしろかった。

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(この旅初のパエリアでした)

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(ログローニョはワインが名産のリオハ州)

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(歩道橋も巡礼路の一部)

 ログローニョは、これまた橋から入っていく大きな街だ。

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 初めて約30kmを歩き切り、若干ふらふらしながら橋に向かっていくと、何やら白いふわふわしたものが飛んでいる。川の水面にもそれがたまっていた。

 調べると、プラタナスの綿毛らしい。日本にもあるようだが、綿毛が飛んでいるのを見るのは初めてだった。雪のようでもあり、なかなか情緒的な光景だ(記事下部のインスタから動画が見られます)。

 プラタナスの光景に背中を押され、ログローニョのアルベルゲまで最後のひとがんばり。

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 ログローニョのアルベルゲは、アルベルゲ・サンティアゴ・アポストル。

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(教会リノベーションのアルベルゲ)

 それなりに清潔で夕食もつく快適なアルベルゲだったが、なんとなくはっきり覚えているのが、隣のベッドに来た巡礼者が太めで、いびきがうるさい方だったことだ。寝返りをうって顔がこちらを向くたびに音波が向かってきた。
 巡礼中、ちょっと太った方がいるなと思うと、まずいびきがひどかった。こちらも疲れて耳栓して寝てしまうので、いびきのために眠れないということはなかったが、太っていればたいていはいびきをかくのだから、少しは準備してきてもよいと思う。
 なお、私は耳栓以外にも、疲れた自分がいびきをかく可能性を踏まえ、鼻の通りをよくする「ブリーズライト」と、口を閉めたままキープしてくれるテープ、ついでに喉を保湿するマスクとアイマスクも持参していた。見た目はおもしろくなってしまうが、これでだいたい快適だったし、体調も崩さなかった。いびきを防いでいたかどうかは自分では不明である。

 ちなみに、数日に一回の割合で、アルベルゲで大いびきをかいてひと足先に爆睡し、他の巡礼者に指をさされている方がいた(本当に「犯人はあいつだよ!」「あいつだぜ!」みたいな感じで指をさされていた)。
 アルベルゲないし「ドミトリーあるある」のひとつだろうか。

 さて、無事たどりついたものの、私は初の30km歩きでくたびれ果てていた。
 そのため、チェックイン時にアルベルゲの受付でナヘラという街に行くバスの時刻表を発見した私は、さっさと「明日はバスでスキップしたれ」と決意した。

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(2018年5月時点の時刻表)

(スペイン巡礼2018回想記(14)に続きます)

(リアルタイムで更新していたインスタ)

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