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スペイン巡礼2018回想記(10)プエンテ・ラ・レイナ〜エステージャ

 2018年5月15日。
 プエンテ・ラ・レイナを出て、エステージャまで行く約22kmの行程。一日20〜30km歩くのがスペイン巡礼では一般的なので、ようやく身体が一般レベルに対応してきた。
 荷物運搬サービス利用の楽さかげんに味をしめた私は、この日も大きいザックはさっさと預けてしまって歩きはじめた。

 出発後、いったんアルベルゲから街に下りて、長年憧れだった橋に別れを告げる。インスタにコメントをくれた前職場のおしゃべり仲間が、「西洋絵画のままだね」といったこの橋の光景を、私は一生忘れないだろう。

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 この日も麦畑などの横をずっと歩いていく。途中からブドウ畑が見られるようなってきて、やがてワインが名産の地域に入る。

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 今日の目的地エステージャは、この「フランス人の道」でおそらくもっとも有名な、いわゆる「名物スポット」がある街だ(正確には隣村か)。これについては、また後日。

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 今日も楽しく歩いてエステージャに着いたとき、街の入り口にあった歴史案内の看板が何気なく目に入った。

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「新ユダヤ人街」と書かれている。

 なんだと!?
 私は文字どおり、看板に飛びついた。

 私はなぜ忘れていたのだろう。
 スペインといえば、スペイン・ユダヤ人だ。スペインはかつてユダヤ文化の花開いた地。
 あの1492年のユダヤ人追放令までは。追放されたスペイン・ユダヤ人は、セファルディムと呼ばれるユダヤの一大勢力として知られる(※大雑把な説明です。詳しくはググってください)。

 私は大学でユダヤ史を専攻し、それで卒論を書いた。時代と地域は19世紀末のパレスチナのユダヤ入植村。
 19世紀末にパレスチナに移住した人々は、ユダヤのもうひとつの一大勢力アシュケナジム(ドイツ・東欧系。わりと世俗派)なのだが、パレスチナ移住時に先の400年間に先住していた正統派のセファルディムとけっこう揉めたりしたので、卒論のときもそれなりに出てきた。

 つまるところ、私はユダヤと名のつくものには興味しんしんなのである。スペイン巡礼の前年にはスペイン・ユダヤ人最大の華といえる街トレドを訪れ、ユダヤ人街に宿をとったりしている。

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(トレドといえばこの眺め)

 スペイン巡礼といえばカトリックだから、巡礼の計画を立てるにあたってスペイン・ユダヤ人のことは念頭になかった。巡礼中の観光を検討した際、意識したのは「大好きな回廊(主に修道院に付属)に山ほど行ってやるぜ……!」だけで、ユダヤ人のことは忘れていた。

 だから、通りすがりにスペイン・ユダヤ人の旧跡に遭遇し、ものすごくテンションが上がってしまった。
 このときから私は、回廊&ユダヤをテーマに巡礼路上の街を見ていくことを決意する。

 私はいったん「新ユダヤ人街」跡を離れた。
 エステージャには見たい回廊があり、観光と休息を兼ねてこの街で連泊するつもりだったので、明日また来るつもりだ。

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 エステージャで連泊するアルベルゲは「アゴラ・ホステル(Agora Hostel)」、Booking.comで予約済。
 ここははっきり言って、巡礼路全行程中「最高」のアルベルゲだった。エステージャに宿泊される巡礼者の方は、ぜひ泊まっていただきたい。あ、好みは人によりますけど。

 アゴラ・ホステルは以下の重大な特徴をもつ(※2018年5月時点)。

・超清潔でキレイで新しい。シャワーももちろんピッカピカ。ちょくちょく床を拭きにスタッフさんが来ていたような記憶。
・壁埋め込み式の二段ベッド。上段の人が動いてもギシギシしたりしないし、プライバシーがかなり守られる。壁が片側にあるのとないのでは大ちがい。
・鍵付きロッカーあり。
・枕元に電源がある。
・自分で洗濯することは禁止されている。代わりに6ユーロで洗濯をお願いできる。袋に入れてポル・ファボール(スペイン語で「お願いします」)するだけだ。けっこう巡礼中はポンコツ洗濯機に悩まされたので、個人的にかなりうれしかった。
・Wi-Fiが元気。
・もちろん、オスピタレイロ(宿のスタッフ)さんも親切で気さく。

 思いだすだにいいホステルだ……。

 さて、レセプションでチェックインして日本人だとわかると、頼みがあるという。
 オスピタレイロがとりだしたのは、日本の扇子だった。細かいことは忘れたが、扇子に名前か何かを日本語で書いてくれと言われた気がする。ちょうど別の日本人も泊まっていて、その人たちにも書いてもらったとかなんとか言っていた。
 ほう、日本人がいるのか。と思いながら、私もとりあえず書いた。

 それで外に昼食をとりにいったり、洗濯を頼んだりして、再びレセプションに通りかかったとき、ちょうどどやどやと人が入ってきた。
 その中に、見覚えのある日本人のおじさんたちがいるではないか。

 お互いに「あー!」と叫ぶ。

 しかもおじさんたち、もとは2人組だったのが、3人に増えている。増えたのも日本人だ。

 ロンセスバージェスで別れて以来の再会だった。ついでにいえば、これまたオリソンでテーブルが一緒だったアメリカ人女性にも再会し、再び「あー!」をやった。

 近所に私の好きな中東料理を出す店があり、そこでまたおじさんたちと一緒に夕食をとった(アメリカ人女性のほうは、英語が問題なく話せそうな連れを探していた)。

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 1人増えたおじさんは、なんと80代のひとり旅。2人組のほうも60代と70代ではあったが、80代というのはちょっと驚きである。70代でも欧米系の巡礼者たちに「クレイジー」と言われたそうだが、これまた輪にかけてクレイジーな日本人おじさんの登場だった。
 80代でまだスペイン巡礼ができる、しかもリピーターではなく初めてのチャレンジ。希望のある話だなと思う一方、たしかマラソンをやっている方とのことで、並ないし並以下の体力の私には微妙に参考にならない気もひしひしとする。

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 おじさんたちとの食事を終えて、エステージャの夕暮れの街をぶらぶらと歩いた。
 宿の近くに、雰囲気のよい建物があり、人がけっこう出入りしている。

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「あの建物、何でしょうね?」
「入ってみよう」

 おじさんは、ためらいなく入っていく。
 おじさんはスペイン語ができるわけではないので、そこが何なのかわかって入ったわけではない。私ひとりだったら完全に尻込みして逃げてしまうこの状況で、おじさんは入っていけるのだ。

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 というわけで、私も便乗した。
 古い建物をリノベーションした図書館だ。たしかに入ってもまったく問題ない。写真もOK。よくわからない建物に入るのは尻込みする私だが、写真はよく撮るので、写真撮ってもいいですか? なら訊ける。

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(スペイン語もわからないのに本を見てまわり、ハンターハンターを発見して喜ぶオタクこと私)

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 楽しい一日だった。
 明日はエステージャ一日観光。回廊&ユダヤ旧跡めぐりの一日である。

(スペイン巡礼2018回想記(11)に続きます)

(リアルタイムで更新していたインスタ)


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甲斐桂

Web小説書き。ファンタジー特化。日常生活では歌ったり踊ったり登ったり、やりたいことをやりたいように。

スペイン巡礼2018回想記

甲斐桂が、2018年5月から6月にかけて歩いてきたサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路(フランス人の道)の旅を思いだして書きます。
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