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スペイン巡礼2018回想記(7)ロンセスバージェス〜トリニダード・デ・アレ

 2018年5月12日。
 朝起きると、心配したとおり大雨だった。

 何度も書いているとおり、私は登山経験がなく、雨の中をザックを持って歩いた経験などなかった。前日のピレネー越えの疲れが残っていたのもあって、私は土砂降りの雨を窓越しに見やりながら、

「今日はもう……いいかな☆」

 と、完全に日和りモードに入った。

 朝食に下りていくと、例のおじさんたちが食べ終わったところだった。
 雨が降っているから今日はいいかなと思いまして〜みたいな私に対し、おじさんたちは「いや普通に行くよ?」という感じだった。おじさんたちは普段から登山をしているという話だったので、雨の移動にさほど精神的ハードルがないらしかった。

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 そうなのか〜おじさんたちは行くのか〜とモヤモヤしながらも、私は引き続きグズグズした。結局、ひとまず雨で身動きとりづらいし、ロンセスバージェスを観光しよう! それから考えよう! と決めた。

 私は建築が好きで、特に修道院の回廊が大大大好きなのである。
 ロンセスバージェスで宿泊したのは修道院を改装したホテルだったが、近くに回廊を公開している教会があるのはネットで調べていた。

 それがこれである。
 土砂降りの雨だが、やはり回廊という空間はステキなのである。最高。

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 回廊を堪能するうちに、私のテンションは回復してきた。ついでに、徐々に雨も弱まっていった。
 午後、すっかりやる気を取り戻した私は、やはり今日も歩くことを決意した。

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 予定していた行程はスビリまでの約22km。
 到着は夕方になるだろうが、スペインの5月は日が高いので、なんとかなるはずだ。小降りの雨のなか、私はザックを背負って歩きだした。

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 雨でしっとりした森の中を進んでいく。

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 出発がめちゃくちゃ遅かったので、出会う巡礼者は少なかった。

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 17時すぎたころには少し焦りを感じてきたが、やはり日の高さに助けられた。とはいえ、夕刻を過ぎると、明るいながらもやはり寂しげな空気があり、山の中はちょっと怖い。

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 無事、山を下りてスビリに入ったのは、18時すぎだったと記憶している。
 へとへとになりながら、目星をつけていたアルベルゲ(巡礼宿)のインターホンを押した。

「今日は満室だよ。近くのアルベルゲもみんな埋まってるよ。観光案内所ももう閉まってるよ」

 と、オスピタレイロ(アルベルゲのスタッフさんのこと)は言った。

 なんだと!?
 自分のテンションまかせで何も考えず出てきてしまったので、宿がなくなるなんて一切考えていなかった。

 疲れていたのもあり、えええ……?? とまごつくばかりの私。

「忙しいからちょっとここで待ってて」

 玄関脇のランドリールームに座らせてもらう。
 ポカーンと待っていると、

「いま食事の支度で忙しいから、ひと段落したら泊まるところを探してあげる。ここで待ってて」

 と言って、チョコをくれた。あ、天使ですか……?

 むこうのダイニングでは明らかに夕食の時間が始まっていて、楽しげな声が聞こえてきた。ちょっと寂しかったが、ともかく身の振り方が決まったので、私はぼんやりと待った。
 しばらくして、手の空いたオスピタレイロがあちこちに電話をしてくれ、タクシーも呼んでくれた。いくつかアルベルゲの候補を決めたうえで、タクシーのお兄さんにもよく頼んでくれ、送りだしてくれた。うう、やさしい(もう基本半泣き)。

 タクシーのお兄さんもたいそう優しく、英語で自分の小さい街の外にはほぼ出たことがないとかそんな雑談をしながら、目星をつけたアルベルゲに行ってくれた。
 最初はスビリから少し進んだララソアニャのアルベルゲ、ここも満室だった。次に、スビリから約15km先、巡礼開始前に一度立ち寄ったパンプローナの手前にあるトリニダード・デ・アレのアルベルゲ。なんとかここでベッドがみつかった。
 いきなり15kmもタクシーでスキップすることになるとは。私は引き続きポカーンとしながら、明日歩くはずだった道をすっとばしていった。

 優しいタクシーのお兄さんから、優しいオスピタレイロに引き渡され、無事ベッドにありついた。私は優しさに生かされていた。
 古い教会の一部をアルベルゲにしているところで、正直設備はとてもボロかったが、もうとにかく寝られるところさえあれば何でもよかった。

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(この橋を渡ってアルベルゲにたどりつくのはロマン……しかし私は車で着いた)

 遅く到着したのでもちろんベッドは上段。一応まだ20時前だったと思うが、部屋はもう消灯されて、巡礼者はみな寝ていた。寝る支度をするのにゴソゴソしていたら、下段の巡礼者に寝ているんだから静かにしろと怒られた。
 私は支度もそこそこに、もうシャワーを浴びる気力もなかったので、とにかくベッドで息をひそめていることにした。

 やれやれ、長い一日だった。

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 このときの宿なしの恐怖を反省した私は、これ以降は常にBooking.comで宿を予約しながら進んでいくことになる。おかげでのんびりと巡礼することができたので、早起き&アルベルゲ獲得競走に参加したくない方にはこれがオススメだ。

 ちなみに、スビリで助けてくれたアルベルゲ「スセイア」のオスピタレイロは、同じように路頭に迷った巡礼者たちをたびたび助けているそうで、「カミーノの天使」とかなんとか呼ばれているのだと、後日知った。

(スペイン巡礼2018回想記(8)に続きます)

(リアルタイムで更新していたインスタ)


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甲斐桂

Web小説書き。ファンタジー特化。日常生活では歌ったり踊ったり登ったり、やりたいことをやりたいように。

スペイン巡礼2018回想記

甲斐桂が、2018年5月から6月にかけて歩いてきたサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路(フランス人の道)の旅を思いだして書きます。
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