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巡礼とファンタジー小説と、なりたい自分のこと

 初めまして。甲斐桂(かい・かつら)と申します。
 ファンタジーのWeb小説を書いて、個人サイトと小説投稿サイトで公開しています。

 このnoteは個人的に「文章書きたい手帳」と名づけ、2019年9月1日に始めました。
 最大の目的は、2018年5月から6月にかけて行ったスペイン巡礼の回想記を書くこと。それくらいスペイン巡礼は楽しかったし、人生を決定的に変えてくれたという感触があったんです。

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(サンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼路のうち、「フランス人の道」の風景)

 もともと、文章を書くのが好きでした。
 新卒の就職では、履歴書に「文章書けます」と書いて入社しました(中小企業の広報でした)。

 とはいえ、若いとき書いていたのは小説のみ。
 卒論のときは、うっかり小説のような文章を書きそうになるのを、がんばって阻止していました。
 小説を書いていると言うと、エッセイとかもいいんじゃない? と言われることがよくあるんですが、ずっと他の文章を書く気はさらさらありませんでした。エッセイ書くような内容もないと思っていたし。
 スペイン巡礼に行って、初めてエッセイのようなものを書いちゃおっかな〜と思えたんです。

初恋の小説との出会い

 さて、小説を書きはじめたのは、おそらく12歳ぐらいのころでしょう。
 当時は文章より漫画を描くのが好きだったので、小説は軽い気持ちで書いていました。学年の文集に感動系現代ファンタジー童話風小説を書いた記憶があります。

 かといって以後、別にまじめに小説を書くということはなく、次なる小説との出会いは17歳ぐらい。
 宮城谷昌光先生の『太公望』と出会ってしまったのです。

 羊が炎のうえを飛んだ。
 望(ぼう)という少年の目にはそうみえた。
 煙があたりに立ちこめ、草も木も白い闇のなかに淪(しず)んでゆく。その底に、炎がある。
 炎のうえに羊が飛ぶたびに、炎は鎮まり、草木の緑が焦げ色をみせて近づいた。すすむべき路(みち)はそこにしかないと望にはおもわれた。
「彪(ひょう)よ、おくれるな」
(宮城谷昌光『太公望(上)』文春文庫、2001年。p9)

 この書き出しに、私は心底しびれてしまいました。
 忘れもしません、高校の図書館で出会った本で、単行本版でした。

 それまでは、多くの歴史小説は「●●年、▲▲は誕生した」というような、年号が書き出しというものばかり、という印象をもっていました。
 いま思えば、単に無知なだけだと思いますが、個人的にこの『太公望』ほどしびれた書き出しには、いまだに出会えていません。初恋の書き出しというわけですね。

ファンタジー小説を書きはじめる

 この作品を知って、それこそ寸暇を惜しんで読破した私は、小説のおもしろさを知ってしまいました。
 その後、絵を描くことに自信がもてなくなったのもあり、漫画から小説にシフトしていったのでした。

 当時書いていたのは近世ヨーロッパ風異世界ファンタジー「Regina」という作品です。
 このプロローグにあたるエピソード100枚程度を書き、友人が「泣いた」と言ってくれたとき、私の人生は決定的に方向づけられました。
 しかし、大学受験であわただしくなると、頭が焦りでいっぱいになってしまい、書けなくなってしまいます。「Regina」は2章の最初までで、今でも止まったままです。いつか続きを書きたいですね。

 大学に入ったあとは、自分の好きな勉強をしながら、再び小説を書けるように努力しました。
 光明が見えたのは、大学入学後に開設した個人サイト「春秋(しゅんじゅう)」の定期更新ネタとして、高校時代に描いていたファンタジー漫画を自分でノベライズしたときです。異世界ファンタジーで「精霊呪縛」という作品でした。

 この作品の執筆にのめりこみ、一時はいつ何時でも作品世界にとらわれていたほどです。いろいろな意味でちょっと危なかったですね。幸せではありました。

 あれは個人サイトのオンライン小説が全盛だったころ。当時それなりの人に読んでいただけたと思いますが、今度は就職活動が始まり、卒論も始まり、頭が焦りでいっぱいになってしまい、書けなくなってしまいます。またかよ。

書きたくて書きたくて書けない

 今度の書けないは長く続きました。
 10年以上、私はろくに小説が書けませんでした。短編3、4本と長編2本ぐらいでしょうか。
 しかし、書いても、自分が書きたいものは書けていないと感じました。ダメだということだけがわかっていて、知人の同人誌に頼まれて書いた短編以外、ほとんど人に読んでもらうことはありませんでした。
 また、個人サイトで連載していた作品「精霊呪縛」の続きを書きたくて、ずっと努力していたのですが、何回見直して何回再開しても、なぜかうまくいきませんでした。

 その末、前職の最後の一年、SF風ファンタジー長編「メテオ・ガーデン」を完成させることができました。
 この作品は、ようやく自分が書きたいものを書けた、と思うことができ、少しうれしかったです。

 ですが同時に、なるべく5時台に起きて職場に早く出勤し、空き部屋で少しだけ「メテオ・ガーデン」を書き、始業の9時前に仕事部屋に下りていったあの一年間について、「あれをもう一回やるのはムリだ」という気持ちがはっきりありました。

 そのときは、私はもう小説を書くことはできないのかも、とも思いました。
 しかし、どうやらそういう問題でもなく、それからしばらく経った2017年12月、私は新卒で入って10年以上働いた会社にうんざりし、辞める決意をするのでした。

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(辞める決意をする前日に高萩に小旅行にいき、沁みるように楽しかったのでした。そのときはまだ辞めるつもりはなかったんですが、翌日いきなり決意)

スペイン巡礼で「好きなように書きなよ」

「会社を辞めたらスペイン巡礼に行こう」と思っていたことは、「スペイン巡礼2018回想記(1)ことのはじめ」に書いたとおり。
 2018年5月から6月にかけて、私はサンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼路のうち一番メジャーな「フランス人の道」を旅しました。
 このとき、巡礼仲間であるおじさんたちに出会い、

「好きなように書きなよ」

 と言ってもらったことも、note書き初め記事に書いたとおりです。

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 長年ろくに書けずにいるのだと話した私に、おじさんたちは軽い気持ちでそう言ったのだと思います。けれど、好きに書く、という単純な真理こそ、いろいろなことでがんじがらめになっていた私にとって、希望になりうる考え方だったのです。

スペイン巡礼の効能

 スペイン巡礼は、とにかく楽しかった!
 詳しくは「スペイン巡礼2018回想記」で書いていきますが、本当にひたすら楽しかったです。正直何度でも行きたいです。実際、スペイン巡礼のリピーターはめちゃくちゃ多いです。私もその一人にきっとなるでしょう。

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「楽しい」の中身は何かというと、ざっとこんな感じです。

 無心で歩くこと、食べること、疲れて寝ることを繰り返すうちに、前職在職中の疲労がとれ、長年悩みの種だった肩こりも、ある朝、突然消えました。そしてそれと同時に、信じられないような多幸感とともに目覚める朝がやってきました。

 前職在職中、一時は「30歳すぎると、もう子供のときみたいな幸せな気分は訪れないのかな」と思ったこともありました。
 整体や漢方クリニックなどに通って多少改善したこともありましたが、根本的には変われませんでした。しかし、そう思ったことが嘘だったかのような幸福感が、スペイン巡礼中のある朝、いきなりやってきたんです。

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 あと、巡礼路を歩きはじめた当初は、歩いているとときおり前職の上司の顔が脳裏をよぎることもあり、そのたびに嫌悪感に襲われていました。
 しかし、2週間ほど歩いたあとで、ある日、上司の顔が遠くなっていることに気づきました。
 それからは、歩きながらもっと別のことを考えられるようになったんです。この楽しいスペイン巡礼のことをブログにこんなふうに書こうとか、途中で止まったままの小説「精霊呪縛」をこういうふうに展開させようとか。自分がずっと考えたかった「生産的」なことを。

 これらは、ウォーキングによってセロトニンが分泌されたとか、無心で歩くことで瞑想に近い効能があったとか、歩き疲れて寝てしまうと10時間以上の睡眠になることもあって在職中の睡眠負債を返済できたとか、生理的にもいろいろ説明がつくでしょう。

 何より、長年自分がやりたいこと(小説を書くこと)を思うようにできなかった私には、自分が長年やりたかったスペイン巡礼をいま実現している! ということは、自己肯定感につながりました。

巡礼は終わり、新しい人生が始まる

 スペイン巡礼からの帰国後は、全身がこれ幸福といった風情でした。
 再会した同僚は、私の元気ぶりと明るさにびっくりしていたものです。寒中見舞いを出した受験時代の恩師も、文面から元気さが伝わると書いて寄越しました。

 ですが、私にとっての本題はあくまで小説を書くこと。
 スペイン巡礼は、あくまでも休暇。

 食べていかなければならないので、再就職のことも考えなくてはなりません。

 スペイン巡礼で歩くことに目覚めた私は、あの多幸感を求めて日本国内でできることは何か検討した末、登山デビューしました。
 近所の高尾山をメインに、近場の山をちょこちょこ登っています(現在も継続中。2019年夏には富士山に登りました)。

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 再就職については、帰国後しばらくして、やってみたいことがみつかりました。
 帰国直後は、とにかく前職と同じことはしたくないという気持ちしかなく、具体的に何をするかはわかっていませんでしたが、2018年秋から通信教育での勉強をスタートさせました。

「何でもいいから文章を書こう。書きたい」

 さて、小説を書くことはどうなったでしょうか?

 巡礼からの帰国後は、バタバタした時期もあったりと、なかなか書くことに手をつけられませんでした。
 ところが2019年4月末、ある日突然、それがやってきたのです。

「何でもいいから文章を書こう。書きたい」

 襲われた、といってもいいぐらい、急激な訪れでした。

 スペイン巡礼から、かれこれ一年近く経っていました。これもnote書き初め記事に書いたとおりですね。

 そのときから、とにかくブログを始めようとは決めていましたが、通信教育や試験などがあって、またまた手をつけられず。8月に多忙がひと段落したとき、ようやく手を動かしはじめました。

 学生時代に個人サイトを開設した日と同じ8月31日。
 私はオリジナルファンタジー小説サイト「春秋」を再オープンし、本文完結済の作品「メテオ・ガーデン」の連載を開始しました。
 翌日、このnote「文章書きたい手帳」を始めます。「スペイン巡礼2018回想記」はまたその翌週に書きはじめました。なにぶんエッセイは初めてなのでどう書けばいいのかわからない気持ちはありましたが、とにかく書くんだ! と思い切って。

 ずっとなりたかった自分に、今ようやく近づきつつあります。
 そのきっかけが、スペイン巡礼でした。

今後こんな感じでやっていきます

・メテオ・ガーデンを完結まで掲載します(個人サイトエブリスタさん小説家になろうさん)。→しました。
・未完のまま停止している作品「精霊呪縛」の更新を再開します。→しました(個人サイト小説家になろうさん)。最新話はtwitter連載中
・noteで「スペイン巡礼2018回想記」全50日間の旅、全部書きます。→書きました。
・回想記が完結したら、登山のことやそのとき考えたことを何でも書く場所にします。また2、3年後に新しいスペイン巡礼回想記書きたいですね。→いろいろ書きはじめています。これとか。新しいスペイン回想記……いつになるんだ〜!
・折をみて、短編小説もnoteに掲載しようかと考え中。まずはスペイン巡礼回想記から進めます。→回想記が完結したので、短編小説を載せました

甲斐桂の個人サイト・小説投稿サイト・SNSまとめ

・オリジナルファンタジー小説サイト「春秋」(Wixさん)
・作品を掲載してもらっている小説投稿サイトその1 エブリスタさん
・小説投稿サイトその2 小説家になろうさん
・小説投稿サイトその3 ステキブンゲイさん(短編のみ)
・旅行写真を掲載しているinstagram
・日常生活と更新情報を載せるtwitter

 ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
 今後も気がむいたときにご覧いただけたら、これ以上の幸せはありません。

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