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小田急民、江ノ島に泊まる

物心ついたときから小田急線沿線に住んでいて、一度引っ越したものの、相変わらず小田急沿線にいる。

「江ノ島」といえば、小田急民にとって「遠足」の行き先だ。近場で旅行といえば箱根、登山といえば(丹沢)大山、遠足といえば江ノ島。

先日、箱根よりずっと近い江ノ島に、初めて泊まりの旅行にいってきた。

結論としては、すばらしかった。

海といえばなぜか茨城ばかり行っていた我が家だが、片道1時間の海もすばらしい。遠くの海もいいが、近くの海もいい。そんな当たり前のことを、今さら知った旅だった。


腰越方面から江ノ島を望む

憧れの宿、岩本楼

小田急民ならそうそう泊まることのない江ノ島に泊まることにしたのは、憧れの近代建築お宿、岩本楼があるからだ。

近代建築ファンにとって、近代建築のお宿があるということは、すべての壁を越える。といってももちろん、あまりに宿泊料金が高すぎるとそこそこ高い壁になるのだが、岩本楼の場合、値段も手頃。

泊まるには近すぎるだなんて、大した問題ではない。手頃なうえに近代建築もあるのだ。ましてや、多くの宿代が高騰する昨今、朝夕2食付きで1人20,000円を切るのは実に良心的(※3名1室・日曜から1泊)。

ということで、仕事の校了を終え、休憩する間もなく土曜にイベント出勤して発生した代休を使い、小田急民は近場の行楽地・江ノ島へ「旅立った」。

江ノ島初日

何しろ近いので、旅立つといっても、早起きの必要はない。

前日に土曜出勤でヘロヘロになっていた私は、江ノ島行き当日午前10時を過ぎても全力でゴロゴロし、一緒にでかける両親を「行く気あるのか⁉︎」と半ギレさせた。

まぁ落ちつきたまえ、我々は茨城に行くわけでも、沖縄に行くわけでもないのだ。江ノ島など、ものの1時間、小田急線1本なのだから。

実際、ゆっくりお昼ごはんを食べて出発し、ちょっとぼんやりスマホで漫画を読んでいるあいだに電車は終点・片瀬江ノ島駅に到着した。駅の外観は、その昔、幼稚園の遠足で来たときとあまり変わっていない(たぶん)。

江ノ島へ

そのまま歩いて江ノ島にIN。岩本楼は、江ノ島に入ってすぐ、メインストリート沿いにある。日曜午後の大賑わいの中で、岩本楼の敷地に一歩入りこんだとたん、別世界の静けさだった。

岩本楼

宿泊客ではなさそうな外国人観光客が敷地内に入って喫煙していたが、まぁ気持ちはわかる(宿泊客だったらごめんな!)。さすが人気行楽地。日曜午後ともなれば、沿線の家族連れやらカップルやら学生グループやらインバウンドやらがキャッキャと結集。自分が若かったときは、江ノ島のあまりのリア充ムードに逃げ帰ったと思うが、歳をとったので生ぬるい目で見ることができる。

メインストリートの喧騒をよそにチェックイン。さっそく部屋へ……わー!!

岩本楼の部屋
窓いっぱいの海!

この近旅の勝利は決まった。なんて気持ちのよい海、波の音。部屋は近代建築ではないもののそれなりに年季が入っており、立て付けが悪く窓を開け放つのは大変だったが、立て付けなんてどうでもよくなるぐらい海がいい。近くてもいい海。いやむしろ、近くていい海って最高なのではないかしら?

広縁のロッキングチェア風の椅子に座る。家族全員、窓の外の海を見て海風を浴びたまま一歩も動けない。

ぴ〜ひょろろ(トンビ)

空腹に耐えかねて、岩本楼の向かいにある「たこせんべい」の有名店に並びにいった(30分待ち程度)が、あとはひたすら窓辺に座っていた。

おいしいけど食い足りないたこせん

日が落ちるころ、ようやく江ノ島の本丸、富士山のあたまが登場。おお、そこにいらっしゃったのですね。今日の空模様だと頭が限界か。

富士山のあたま
少なめタイプの夕食
小皿ちまちま食べながら日本酒飲むの好き!

夕食は、王道にして美味。日本酒は地元酒造「天青」。スイスイ飲んでしまう。量少なめのコースに設定しておけば、温泉ごはんを持て余すこともなく、何もかもが適量。天ぷらの量なども絶妙で、残す罪悪感に駆られることなくすっきり完食できた。

夕食後は、江ノ島といえばここ、サムエル・コッキング苑へ。

サムエル・コッキング苑(シーキャンドルは大混雑であきらめました)

小田急線の広報誌『ODAKYU VOICE』(愛読)では、年がら年中ここのイベントを紹介している(ように見える)のだが、毎年この時期(秋)には、地元ボランティアが人力で大量のろうそくを灯す血と汗の結晶のようなイベントが開催されているという。毎日つけたり消したり大変そうだが、これだけの人が訪れてくれれば、本望ではあるだろうな。

人力なんだぜ? このろうそく

私のような者でも、これだけろうそくが灯っていれば楽しい。ヨットハーバーや沿岸の夜景を見下ろしながらの江ノ島そぞろ歩き、ひと粒で2度おいしい。疲労困憊で江ノ島で来た身には、エスカレータで登れるのもなんとありがたいことか。

湘南港ヨットハウス、夜目にもはっきりとわかる特殊建物

江ノ島2日目

翌日、トンビと波の音で安らかに目を覚ますと、窓の外にはしっかり富士山が見えていた。何しろ江ノ島に宿泊するのが初めてなので、この角度の富士山を見るのは初めて。少しだけ冠雪した、理想的な富士山だ。

やっと会えましたね
本題の近代建築温泉!

それから、目覚めの温泉へ。

憧れの近代建築温泉宿、岩本楼の真骨頂。「ローマ風呂」である。スペインのウェスティン・パレス・マドリードを彷彿とさせる。

あちらよりだいぶ小さいが、優美なディテール。マドリードでは、宿泊も食事もせず見物していたので恐縮したが、堂々泊まってのんびり風呂に浸かりながらこのステンドグラスを見られるとはうれしい。

見るべきところが多い

岩本楼にはもうひとつ温泉があり、そちらは「洞窟風呂」という。その名のとおりのおもしろ風呂だが、男女交代制のため、女性は洞窟風呂には短時間しか入れず、写真の撮れる無人の時間帯がなかった。あとお湯がぬるいのと、底にコンクリートの破片のような砂が落ちているのが気になる。ローマ風呂が圧倒的によかった。ちなみに、どちらも温泉のクオリティを求める人には向かない。消毒の匂いがある。

朝風呂と朝の海と富士山を満喫したあとは、朝食だ。

これですよ

夕食がよければ、当然朝食もよい。こちらもすべてをたいらげ、時間ギリギリまで部屋でくつろいでからチェックアウト。

離れがたい風景

小田急線でとっとと帰る前に、今回のもうひとつの目的地へ。といっても、ほんの5分かそこら歩いただけで着いた。

湘南港ヨットハウス

新美の巨人たち」で初めて知った、「湘南港ヨットハウス」。江ノ島といえば、岩屋と海とシーキャンドルと生しらすぐらいのものと高を括っていた人間にとって、ここは晴天の霹靂のような存在だ。

まさかこの昭和の延長線上のような観光地に、こんな新鮮な建築があろうとは。もともとは東京オリンピックの際にヨット競技場として建てられた旧ヨットハウスを、2014年に一新したものだ。

古くはないとはいえ、もうリニューアルから9年も経っている。江ノ島、何もかもが幼稚園の遠足で来たときのままではないのだなぁ……時代は変わる……。ちょっと豊島美術館を彷彿とするものがあって、あちらも2010年竣工なので、2010年代のトレンドなのかもしれない。

わくわくしながら、広々としたハウス内を見学する。平日午前中のがら空きのハウス内は、地元らしき人がぼんやり座っていたりして、人はまばら。その中で観光客がうきうきしていても咎めるような空気はない。外の空と海の開放感が、室内まで続いているような雰囲気。

心ゆくまで見物したあとは、お楽しみ、ハウス内のcafeとびっちょへ。「新美の巨人たち」でも紹介されたしらすピザが目的だ。席数はかなり少ないが、平日なのでゆったり過ごすことができた。

まずコーヒータイム
カフェの窓を見上げる
食事の提供開始を待ってしらすピザ!

うっっっっっっっっっま!!!!!

えっおいしっ何これはちゃめちゃおいしいんですけど?????

テンションが上がり、デザートにソフトクリームまで追加してしまう。やだ〜! 最高!!!!!

旅といえばソフトクリームですからね

ランチが終われば、あとは本当に帰るだけの、短くて楽ちんな旅。江ノ島で団子、腰越で生シラスを手に入れ、ハッピーな1泊2日を締めくくった。

やだ〜最高!!!!! 江ノ島最高!! 近くて楽しくておいしい海旅、最高!

何回撮っても気がすまない
帰宅して食べた江ノ島の団子
腰越で買った生しらす丼

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