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スペイン巡礼2018回想記(14)ログローニョ〜アレサンコ

 2018年5月19日。
 この日は、前日の約30km歩行で疲れ、バスで28.9km先のナヘラまでスキップすると決めていた。

 本当はナヘラに宿泊したかったのだが、Booking.comではその日泊まれる宿がみつからなかったと記憶している。ナヘラから10kmほど先の、少し巡礼路から逸れた街アレサンコでなんとか宿を予約することができた。
 アレサンコは、巡礼路の軽量なガイドブックとして知られるJohn Brierleyの”Camino de Santiago”には、巡礼路のオプション的スポットのある街として掲載されている。
 しかし、実は正規の巡礼路の街ではなかった。それをよく理解していなかった私は、少々痛い目を見ることになる。

 朝、ログローニョのアルベルゲを出発し、10分ほど歩いたところにあるバスターミナルへ。チケットを買って、バスに乗りこむ。

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 28.9km先のナヘラだが、バスに乗ってしまえば、あまりにも一瞬。歩いてやってくる巡礼者が一人もたどりついていない時刻にナヘラの街に到着してしまい、ちょっと罪悪感を覚えたほどである。
 荷物も、すっかり身軽な巡礼に味を占めた私は、このところ連日、荷物運搬サービスにザックを預けていた。

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 ナヘラでは、目的の王立サンタ・マリア修道院へ行き、回廊を堪能する。

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 どうやら何かの集会が開催されるらしく、回廊の景観としてはうれしくないイスが大量に並んでいたのはいただけなかったが、こういう利用法があるというのは興味深かった。

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 それから、ナヘラにもユダヤ人街があるというのは、ネット調べでわかっていた。
 親切な地元の方が、地図を見てウロウロする私に「何もないけど、場所としてはこの位置よ」と教えてくれた旧ユダヤ人街は、今はただのちょっと寂れた通りだった。

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 最初に博物館でユダヤ人街のことを尋ねたとき、スタッフさんがユダヤ人のことを何か特別視することなくNeighbor(隣人)という表現をしたのが、ちょっとおもしろかった。そこで生きている者にだけわかる肌感覚があるのだなという感じがする。

 昼食は、ナヘラで適当なバルに入る。

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 これがおいしくて、すっかり元気になった私は、宿泊地のアレサンコをめざして歩きはじめた。

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 ナヘラからアレサンコまでは10kmないぐらい。
 ほどなくしてたどりつき、私はGoogle Mapで予約した宿を探す。私は一度パンプローナで迷った経験から、事前にGoogle Mapで行く予定の街の地図をダウンロードしておき、オフラインでも見られるようにしていた。

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 しかし、宿があるはずの場所に、ホテルらしき看板はない。私はしばらくのあいだ、付近をうろついた。
 すると、

「カツラ!」

 アレサンコの街の人たちの中から、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
 名前を呼ばれる知り合いなどいないのでしばらく無視していたのだが、それが他でもないホテルのお迎えだった。こういう気さくな感じのお迎えは初めてである。

 その日のホテルは、HCアレサンコといって、入り口はごく普通のアパルトマン(上の写真、白い車が停まっているドアが入り口だったと思います)。管理人さんたちは別のところに住んでいて、鍵を渡され、自分で出入りするタイプの宿だ。
 部屋を案内されて、管理人さんたちが帰ろうとしたのを、私は呼び止める。

「荷物運搬サービスに頼んだザックはまだ来ていませんか?」

 通常は、私が次の街にたどりつくころには、預けたザックはとっくに到着していることが多かった。

「荷物は来ていないわ。アレサンコは巡礼路の街じゃないし」

 ちなみに、管理人さんは英語があまり得意ではなく、スマホの翻訳機能を使ったやりとりでそのことが判明した。
 ザックが行方不明とわかって、私は呆然。しかし親切な管理人さんは「大丈夫、心配しないで」と言い、「黄色い封筒で、天使の羽根が描いてある運送会社だった」という私のアバウトな証言をもとに、運送会社さんに問い合わせの電話を入れてくれた。

 幸い、ザックはすぐ発見された。アレサンコが規定のルート上ではなかったために、運送会社さんはとりあえずザックを保管しておいてくれたのだ。ルート外なのに、これからザックを持ってきてくれるという。ありがたい……。

 しかし、アレサンコはルート外なので、翌日は自分でザックを運ばなければいけなくなった(一応運送会社さんに訊いてみたのだが、やはりダメだといわれた)。
 脳裏に、パンプローナからの途上で、ザックの重量に肩を痛めたのが思いだされる。うわー、いやだなぁ……。

 ともあれ、運送会社さん、HCアレサンコの管理人さん、あのときはありがとうございました。

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(「黄色い封筒で、天使の羽根が描いてある運送会社」の実物の封筒)

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(無事ザックを受けとり、ほっとしながらバルでアイスを食べる)

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(その日の夕食、宿の隣のバルで。ここも美味だった)

(スペイン巡礼2018回想記(15)に続きます)

(リアルタイムで更新していたインスタ)


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