TooL開封の儀

寡作なんて言葉はもはや生ぬるい。

リリースが奇跡と言っても過言ではないTooLが、13年ぶりに新作Fear Inoculumをリリースした。
本記事は、楽曲の内容にフォーカスを当てたものでは無い。
そもそも、私如きがTooLの音楽性についてあれこれ語るのは烏滸がましい。
タイトルにもあるように、限定生産の特別版CDとそのパッケージについて、写真も使って開封の儀をしようと言うのが本駄文の趣向である。
あれっ、なんでそんな引いてるの?えっ?平常運転なんだが?

さて、では早速届いたブツを見てみよう。

CDに貼ってある警告じゃねぇ

電化製品に貼ってあるやつだこれ。
あっでも俺、電化製品買ったんだっけ?(錯乱)

電池の仕様シールとか初めて見たんだが

これを航空機内に持ち込むってもはや好き過ぎでしょう。
流石に殆どの人は持ち込まないと思うぞ。


完全に取り出すとこんな感じ。
輸入盤のパッケージに、国内輸入元sonyのシール。裏ジャケもかなりいい感じ。
どうやら、6面のデジパックになっている様子。
開くと音が出るってどういうこと…?

なんかついたけど紙がへばり付いてて見えねぇ

静電気?インクの張り付き?わからないけれど、注意書きの紙やらなにやらが張り付いてて、最初から映像が見えないというオチ。
音だけは聴こえる。ムキーとなりながらもそっと紙を取る。

やっととれた。
中央上部のスクリーンに、奇妙奇天烈な映像と、不気味で奇怪な音楽が映されているが、流石にその映像を載せることはできない。
買って観ようぜ!!
映像はエンドレスに流れるのではなく、二巡したら自動的にスクリーンがオフになる仕様。
右扉に磁石が仕込んであるようで、磁力の有無でモニターに通電する仕掛けになっている?
この映像が流れる様が、左右のアートワークも相まって、アンダーグラウンドのサイバーパンク感を醸し出している。SF映画などでお馴染みの、パッケージ自体に商品の内容を補完するようなホログラムが映し出されたり、他商品の広告が流れたりするものに近い。
これだけでもう鳥肌ものだ。パッケージを手に取りながら、映像作品を楽しむ、こんな経験、そうできるものじゃない。
モニター下部には、充電用のUSBケーブルが格納されており、右下の側面に充電用のコネクタが付いている。

なんと全曲ダウンロード用のコードもついてる。

デジタルでも簡単に落とせるようにしといたぜ、っていう意味合いもあるだろうけれど、それだけではないだろう。
何を隠そうこのアルバム、フィジカル版とデジタル版では収録曲数に違いがあるのだ。
恐らく収録時間が長過ぎて、メインの収録曲だけでCDの記録面を使い過ぎており、所謂インタールード(本人達は別の呼び方をしているようだが)を全て入れられなかったため、苦肉の策だったのではと推察する。
或いは、作品として、デジタル版と内容の差別化を図りたかったか…?しかしそれはあまりに不自然だ。パッケージにこれだけ拘っておきながら、いわば目玉商品となる楽曲において、敢えて不利益を被らせるだろうか。
何れにせよ、CDの制約をモロに受けているバンドは、星の数ほどあるバンドの中でもTooLくらいのものだろう。

相変わらずの目推し

右の扉には、目が印象的な別パッケージが入っており、には割と雑にCDが納められている。
特典映像もそうなのだけど、Ænimaから、眼球に並々ならぬこだわりを持っている様子。
ホルスの目っぽいこのアートワークは、Lateralusのスリーブにドーンと描かれているものと同じテイストだろうか。
CDのレーベル面にも目。なんなんでしょうねこの、気持ちの悪い心地よさ。

嗚呼もう最高っすわ

左の扉には、36ページもの大ボリュームを誇るブックレットが納められている。
表紙には凹凸加工が施され、中には2種類の紙が使われており、リリックと、メンバーのイラストが描かれている。非常に豪華。
この中身も載せないぜ!CDを買った人だけのご褒美だ!みんなもっとCD買おう!(2回目)
左右の扉に描かれた異形の司祭?がスカルになったアートワークも素晴らしい。

恐らく、楽曲のみならず、これら全てが合わさって、Fear Inoculumなのであろう。
楽曲では表現しきれない部分を、フィジカルとして補完、いや、もはやもう1つのアートとして表現しているように思えてならない。

楽曲表現を中心とするアートの一分野としてのCDは、もはや存在が許されない時代になっている。
昨今の音楽ビジネスにおけるCDというパッケージは、時代遅れ、出しても売れないからそもそも製作しない媒体になったと言っても、そこまで暴論ではないだろう。

CDの特権であった歌詞ですら、今やGoogleで曲タイトルを検索すれば大体ヒットするし、何なら「日本語に翻訳」なんてボタンがあって、タップすれば、英詞と日本語詞が出てくる。これって国内盤CDの存在意義の8割くらいが否定されているし、極め付けは英詞一行に一翻訳と交互に出てくるので曲を聴きながら意味を追いやすく、CDより便利ときている。

もうやめて!あと外タレ国内盤CDに残されているものは、(中には途轍もなく素晴らしい物もあるが大半は)どこの誰かよくわからない、解説文があるだけじゃない!

それでも、僕はCDを買い続ける。
今作で体感する極上のCD体験は、そう簡単に味わえるものでは到底ないのだ。
本記事で述べてきたTooLの限定パッケージ価格は、10000円を超える。しかし、そのお金は決して無駄ではない。
後悔しないCD体験がここにはあるのだ。
開封するときのビニールを破く瞬間から、匂い、触感、質感、どれを取っても愛おしく、このアルバムにおいて、どのマテリアルにも同じものはないのだ。

TooLほどCDにお金をかけられるバンドは、今やそう多くなかろう。細部の細部まで、異常なほど拘り、1つのアートとして完成させているTooLこそが、CDを「ファングッズ」と言い切って良い数少ないバンドの1つだ。

しかし、Fear Inoculumと他バンドのアルバムを比べることはナンセンスだ。ここまでの経験はできないにしても、CDを開ける楽しさは、どのバンドの新作にも必ずある。
どんなバンドでも、フィジカルな音源を出す意味を滔々と考えた上で、今その時点で出せる全てを発揮してCDをリリースしていることを忘れないようにしたい。

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