Post Human : Survival Horror - Bring Me The Horizon

世界的なパンデミックという稀有な情勢下でドロップされたBring Me The Horizon(BMTH)の新作は、Horrorな現代をsurvivalするための必聴アルバムかもしれません。

何はともあれ、フィジカルをレビューしていきましょう。

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メインアートワーク。カオス。

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表紙と比べてあっさりとした背面。

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帯。情報量は多め。

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CDレーベル面のアートワーク。JAPAN EDITIONの文字がまぶしい。

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ブックレットの背表紙。PHASE TWOも来るんだよね…?

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解説はFLJマガジン編集長の大野俊也さん。Oliのインタヴューまとめがメイン。翻訳は安江幸子さん。

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付録。レコード会社のはバンド名、アルバム名のステッカー。
タワーレコードオリジナルの付録はBMTHマンチョコ風なシール。キラシールが出た。再現度は高く、裏面にはアンケートの結果が記載されている。
レコード会社のやつはもう少し頑張れたのでは…。

肝心の作風ですが、今作は前作amoで獲得したポップソングリスナーがごっそり居なくなりそうなくらい、重苦しくメタリックです。スクリームとグロウルをぶちまけまくっているOliはやっぱり唯一無二で、格好良いなと改めて感じました。スクリームせずにメロディを歌っている曲もありますが、甘いポップソングでは到底ないので、その辺りのサウンドを求めている人は要注意です。
リリース前のインタビューでは他のアーティストとコラボしまくるような事を話していましたが、蓋を開けてみたらEPのなんと約半分がコラボ曲。ただそのコラボ先が軒並み豪華で、新進気鋭の若手から大御所までバラエティ豊か。全曲、大々的にシングルリリースしてもおかしくない出来栄えです。

EPド頭のM1. Dear Diaryから今作がいかに怒りにまみれているかを体現しています。メタリックな曲展開、暴れまくるOliのスクリーム。コーラスではダミ声でメロディを歌い上げ、ブリッジではスラッシュメタルばりのギターソロ。ありそうでなかった曲のように思います。後半ではタメを効かせたいつもの刻み半分でヘドバン誘発。まだまだこういう曲かけるんですね。

M2. Parasite Eveは、このEPとして初のシングルカット曲。いずれは過去の出来事となってしまう、現在人類が直面している地球規模の災害が脳裏にチラつきます。冒頭を飾る呪文のようなロシア語から、打ち込み全開。トラップのようにワードを詰め込みまくったコーラスがカッコいい。エッエッ。ブリッジはエッジの効いたギターと四つ打ちで短くも攻め立ててきます。エッエッ。アウトロにもスポークンワードがあり、豪華な一曲です。エッエッ。

M3. Teardropは、珍しくギターサウンドがメインの曲。イントロこそホラーテイストな打ち込みがメインですが、直後一気にLow Bまで下げられたヘヴィなギターがかき鳴らされます。コーラスはクリーンの中にスクリーム、ダミ声を混ざるという巧なヴォーカルワークで聴き手を飽きさせません。Linkin Parkあたりのバンドを起源として、ゼロ年代に大量生産されたラウドロックサウンドですが、一回りしてシンプルなこういう曲がカッコいいなと思います。

続くM4はYungbludとのコラボが話題になったObay。おバカPVはメイキング含め一見の価値有りですが、曲調や歌詞はポリティカルでダークな内容。Yungbludが話題になった時、イギリスの現代版Marilyn Mansonかなくらいに思ってPV視聴しましたがあまりピンと来ていなかったので、この曲で彼の印象がかなり変わりました。曲自体はM3と似た構成で、2人のヴォーカルが入り乱れるタイプ。

M5の短いインタールードを経て、EP後半戦は今や世界的なメタルアーティストとなったBABYMETALとのコラボ曲、M6. Kingslayerから始まります。トランス全開のハイボルテージな楽曲で、SU-METALはコーラスからの出番。非常にキャッチーなメロディが裏打ち&四つ打ちに乗せて繰り出され、続くヴァースではなんと日本語歌詞が飛び出します。BMTHの楽曲でがっつり日本語が使われると誰が想像できたでしょうか。BABYMETALの楽曲としては絶対に出てこないサウンドで、EP随一のダウンロード数を誇るのも納得の出来栄えです。

M7 1×1はR&B調の打ち込み全開曲。M3とは真反対の曲です。イギリスのロックデュオ、Nova Twinseとのコラボ曲です。2回目のプレコーラスでVo.Amyが放つscreamに近いメロディとOliの掛け合いがカッコいいです。曲の構成としてはM3や4とほぼ同じなので、若干影の薄い印象を受けますが秀作です。amoに入っててもおかしくない作風。曲のラストにはM8への布石となるノイズが一瞬入ります。

そしてM8. Ludensこの曲については過去に丸々一本の記事にしたので、そちらもあわせてご覧頂けると大変嬉しいです。本作はここから始まったと言っても過言では無い一曲。昨年作成された迫力のPVも必見です。

EPを締めくくるM9. One Day The Only Butterflis〜は今や伝説的なロックバンドとなったEvanescenceのVo.Amy Leeとのコラボ曲です。冒頭のハミングから、バックコーラスの入れ方まで、Amyの持ち味が最大限に生かされた曲です。コーラスでのOliとの絡み合いは流石の一言。壮大さとキャッチーさが交差し、絞り出すようなスクリームで曲は呆気なく終了します。

前作amoや前々作That's The Spiritにもヘヴィな曲はありましたが、ポップを主軸とした中の1要素でした。今作はその逆で、サウンド的にもメンタル的にもヘヴィなサウンドのなかに、ここ数作で磨き上げたポップネス散りばめて、コラボ先との化学反応を纏め上げた秀作と言えます。ですがその結果多くの曲が似通った印象を受けるかもしれません。
デスコアをやっていた昔はともかく、最近は曲構成を捏ねくり回さず、ストレートなスタジアムロック路線が多いので、飽きが早く感じるとしたらその辺りが原因のように思います。また、シングルとしてアルバムの約半分が既にリリースされていますが、アルバムとして一通り聴くことを強くお勧めします。かなり印象が変わります。

インタビュー通り、ここ最近で最もアグレッシヴで、怒りに満ち満ちている作品ですから、これには往年のファンも溜飲を下げるほかないのでは。え?まだまだ?流石に最初期のデスコアはもうやらないと思うぞ期待するな。
(作中で、これはヘヴィメタルじゃない!と叫んでいたamoがリリースされたのが2019年の1月。間髪を入れずにリリースされた今作は、その気になればヘヴィなのはいつでも作れるという彼らからのメッセージもあるように思います。)

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