見出し画像

合計特殊出生率は、政策目標として妥当か;10月1日の未来を創るサロン

本日は、合計特殊出生率の政策目標の妥当性の議論です。議論は、「人口動態データ解説-合計特殊出生率誤用による少子化の加速に歯止めを-自治体間高低評価はなぜ禁忌か:基礎研レポート」からです。

結論としては;

合計特殊出生率は、「エリアに残っている女性の出産ライフデザインを反映した、女性1人当たりの子どもの数」であり、「エリアから去り行く女性がその地に授けるはずであった子どもの損失を一切加味しない指標」

であり、少子化、とは子どもの実数が減ることであり、TFRは利用条件付き測定手法の1つに過ぎない。

と言うことでした。やはり、統計的因果関係を軸とした具体的な検討指標の検討が必要になると言うことでした。

「わが県はまだまだ出生率が高いほうだ。だから少子化対策では遅れていないのだ」
「わが市は出生率が下がっていないので、出生率が下がったあの市よりも少子化対策については優位にある」
合計特殊出生率(Total Fertility Rate、以下TFRと表記)を用いた上記のような議論は、自治体政策において当たり前のように指摘されてきた議論である。しかしこれらは全て、TFRについて「べからず」的使用方法である。
これらはTFRの計算式がよく理解されていないことから発生する、出生率比較トラップにはまった議論といえる。
本レポートにてその理由を詳説したい。
TFRの誤用が特にそのエリアにとって大きな影響がないならば看過することもできるが、本来は少子化(=子どもの数の減少)対策をより強化するべきはずの自治体において「TFR高低を根拠とした少子化政策の成否」が語られる場面が多発しており、このままでは出生率の誤用が自治体の人口消滅を後押しすることになりかねない状況となっている。
残念なことに、若い独身女性が去るからこそ高止まりしているといえるAエリアタイプの過疎地域の高TFRを目標に、「(Aエリアタイプの)中山間地域Yこそ子育てにむいている。理由は高TFRだからだ。広々とした空間で子沢山エリアYをモデルエリアに」という、統計的因果関係を無視したいささか暴力的な解釈がまかり通ってしまった自治体もあったとのことであった。

(了)

ありがとうございます!