食養生と五味

偏って同じ味のものばかり食べた時の害 - 養生大意抄07

1.偏って同じ味のものばかり食べた時の害

【原文】
○五味偏勝(かたよる)とは、五味の内にて唯(ただ)一味を常に多く食すれば、其一味の気偏にかつをいふ。假令(たとえば)甘物をつづけて多食すれば、中焦(ちゅうしょう)の気滞りて痞(つかえ)満(はり)腹痛等の病を発す。辛物をつづけて多く食すれば、気上逆して眼病瘡瘍(できもの)等の病を生ず。鹹物多ければ、血乾く。故に嗌かわき湯水多く飲て脾胃を傷る。苦物多ければ、脾胃の生気を損ず。酸物多ければ、気ちぢみてのびず。此故に内経に気を積て偏なるは夭(わかじに)の由なりとありて、一味の気偏て多ければ、皆病となりて命をちぢむる基なり。故に五味をとり交て少々づつ食すれば、病を生ぜずして身を養う。

【意訳】
五味の偏勝とは、五味の中のただ一つの味を多食すると、その一つの味の気の作用が偏って出てしまうことをいう。

たとえば甘いものを続けて多食すると、上腹部の気が滞り、つかえたり張ったり、腹痛などの病を発症する。

辛いものを続けて多食すると、気が上逆して眼病やできものなどを生じてしまう。

塩からいものを多食すると、血が乾く。そのため、のどが渇き、湯水を多く飲んで脾胃を損なう。

苦いものを多食すると、脾胃の生気を損なう。

酸っぱいものを多食すると、気が縮んで伸びなくなる。

このようなわけで『内経』には「気を積みて偏なるは夭(わかじに)の由なり」とあり、一つの味の気が偏って多いと、病となって、命を縮めるもとになるのである。

故に、五味を混ぜ合わせて少しずつ食べれば、病を発生させずに身を養うのだ。


2.ひとこと- 五味バランスをどうやって調整するか

五味というと、ついつい調味料で何とかしようと思ってしまうが、実際に塩や砂糖や酢を使って、味の調節すれば食養生になるのだろうか。いやダメだろう。

そんなことをすれば、白い飯に唐辛子や砂糖や酢をかけて食べれば、バランスのとれた食事ということになってしまう。それに苦い味の調味料が思いつかない。まあこれは、コーヒーでも飲めばいいか。

さて、食養生のために、五味をバランスよくとる場合は、食材そのものの味を考えて調節する方がよい。そうすると自然に多品目の食材を食べるようになるはずだ。

手軽な実践法としては、夜眠る前にでも、今日一日の食事をふり返って、どんな味のものを食べたか考えてみよう。私の場合は、酸っぱいものを全く食べていない事に気づいた。明日は酸っぱいものでも食べよう。

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