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家族全員疲弊しそうで、中学受験に挑む勇気がなかなか出ません…『中学受験 親のお悩み相談室』(#14)

少子化にもかかわらず、中学受験者は年々増加しています。中学受験は親と子がタッグを組んで取り組むものだからこそ、さまざまな悩みや壁にぶつかることも…。本連載では、子どもの中学受験を控えた親御さんの悩みに、教育ジャーナリストの中曽根陽子先生が答えます。

質問:子どもが突然、「塾に行きたい」「中学受験してみたい」と言い出しました。ただ、うちは共働きで毎日カツカツのスケジュール…。家族全員疲弊しそうで、中学受験に挑む勇気がなかなか出ません。

回答:受験においては、「向き合い方」も多様化しています。「何が何でも難関校を目指す!」だけが道ではないので、お子さんとよく話し合って挑戦してみては。


受験への向き合い方は、多様化している

「ゆる受験」という言葉をご存知でしょうか。

これまで中学受験というと、小学4年生(実際は小学3年生の2月)から進学塾に通い、難関校を目指して頑張ると言うのが一般的でした。

最たるものが、漫画『二月の勝者―絶対合格の教室―』(高瀬志帆/小学館)に描かれたような受験です。

ただ最近は、習い事や趣味なども続けながら中学受験もしようという受験者が増えてきたことで、ゆる受験という言葉が生まれてきたのです。中学受験との向き合い方も、変わってきているのですね。

入試も、4科目2科目入試だけでなく、得意科目入試や、公立中高一貫校と併願できる適性検査型入試、自分の得意なことをアピールする自己アピール型入試、思考力入試、英語入試など多様化しています。

受験への向き合い方は、大きく分けて、次のように3極化しているといわれています。

  1. 従来通り小4(小3の2月頃)からしっかり進学塾に通って難関校を目指す層

  2. 塾には通っているが、偏差値重視ではなくわが子にあった学校を選びたいという層

  3. 公立中高一貫校との併願や新タイプ入試を活用して、習い事などと並行しながら中学受験をする。志望校に行けなかったら公立でいいと割り切っているライトな受験をする層

この中でも、2がボリュームゾーンで、3も増えているようです。

受験率は過去最高を更新しており、中学受験は加熱しているという見方もありますが、4科目入試がほとんどだった2007年のピーク時と違い、入試自体が多様化し、保護者の中学受験に向かう考え方も着実に変わってきているのです。

私の周りでも、

  • 大手塾での競争に疲れて途中で小規模塾や個別指導の塾に移り、できるだけわが子にあった受験をしたいと学校研究をして志望校を変えて合格したという家庭

  • 習い事や自分のやりたいことをしていくために中高一貫校を選びたいと新タイプ入試を活用して合格したケース

  • 子どもが小学6年から急に受験をしたいと言い出して、急遽2科目で駆け込み受験をしたといったケース

など、さまざまな受験スタイルの親子が増えています。

どんな受験にしたいか、親子で話し合うのがカギ

「ゆる受験」という言葉を聞くと、「最初から頑張らないんだな」というイメージを持たれる方もいますが、それは違います。受験はあくまでも合否という結果が出るチャレンジです。

ゴールをどこにするかを見定めて、その後ゴールに向かって悔いのないように努力することは大切です。

ただ、そのゴール設定がただやみくもに、「少しでも偏差値の高い学校に入ること」になってしまうと、無限地獄のようなことにもなりかねません。

ゆる受験をするにしても、ガチ受験をするにしても、何を大事にして、どんな受験にしていきたいのかをよく考えてトライして欲しいと思います。

いざ受験となったら、最後は「体力とへこたれない力」が大事です。それは短期的には培えないものなので、小さいときからの経験の積み重ねが必要。

さらに、脳科学的にも、早寝早起き朝ごはんで、規則正しい生活をすることが、皆さんが思う以上に、丈夫な脳を育てるといわれています。

もし塾に入れるなら、受験のためではなく、お子さんの好きなこと・得意なことを伸ばせるような環境を与えるという方向で考えたらいいのではないでしょうか?

今は探究系の塾もたくさんできています。オンラインで学べるものもたくさんあるので、試してみられたらいいですね。

そして中学受験をすると決めたら、そのための塾選びを考えていきましょう。

中学受験の塾選びについては、以前の記事(♯10)に書いていますので、参考にしてくださいね。

中曽根陽子(なかそねようこ)
教育ジャーナリスト。マザークエスト代表。出版社勤務後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクトであり、そのキーマンのお母さんが探究することが必要」とマザークエストを立ち上げた。常に自身の最新学習歴の更新に務め、お母さんの気持ちがわかるポジティブ心理学コンサルタントとして、エンパワメントサークルも主宰している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)などがある。