「AI(愛)は掌に」(番外編)~悠仁の無駄な動き~

※悠仁の行動を軽く緩く追っていくだけの番外編です。
この話は第一話での悠仁サイド。

いやぁ、暑いなー。
まだまだ夏本番ってわけじゃないのに、いい感じに暑くなってきた。
春はとっくの昔に過ぎた感じ。
なのに、なぜ俺にはまだ春が訪れない!青春的な意味で!
俺だって大学デビューを果たし、女友達だってそれなりに出来た。
入学のオリエンテーションから、コミュ障を克服しつつ色々な女の子に声を掛けた結果だ!
高校の時には電話帳には母親と妹しか異性が登録されてなかったのに、今ではそこそこの数が登録されてますよ!
っていうか、母親と妹を異性としてカウントしてるのってどうなの?いや、間違ってないけど、間違ってる様な気がする!

そんなに頑張ったってのに、気がつきゃ電話帳に登録された子達は皆、彼氏持ちに変わっていく!

俺の存在って何なの?本当。

おんやー?あのベンチに座ってるのは、久楽じゃないか。
…え、なんでスマホ見ながらニタニタしてるの?ちょっと気持ち悪いぞ。
あれ、悩んでる?
と思えば、ポカーンとしてる。

なにしてんの?あいつ。


…これは確かめなければならない。
俺の感が働いている。
「女」だ!
抜け駆けはゆるさねぇぞ!彼女いない歴はお互いに運命共同体だ!
俺はこっそりと久楽の背後に回る…ふへへ…

「くーらく!なにしてんのーっと!」

さすがの久楽もビビったか。いや、逆の立場なら俺もビビるけど。

「なんだよ、悠仁かよ。ビックリさせるなよ。」

「なんだよ、じゃないだろ。スマホを相手に百面相して変顔の自撮りでもしてるのか?」
「そんなわけないだろ。ってか、これは…いや、別になんでもいいだろ。」

ピーン!
この反応…間違いない!「女」だ!

「はっはーん…さては『コレ』か?」

俺は小指をピンと伸ばす。つまり『女だろ?』と聞いてんだ。

「そ、そんなんじゃないよ!」

うわぁ…声が裏返ってる…つまり「ず ぼ し」だなぁ?

「わっかりやすい動揺の仕方だな。なに?彼女出来たの?それとも彼女候補?教えてよー」

「いや、女性ってのは間違ってないけども、彼女とかそんな大それたものじゃないよ、本当に。」

なるほどなるほど、彼女という所は否定するが、女は女だと。正直でよろしい…

が!それだけで話を終わらせようなんざ100光年早い!光年は距離だなんてツッコミは無しだ!

…俺は誰に喋ってるんだ?いや、正確には心の声だよ、これ。

「オッケー、彼女じゃないのはわかった。で、どんな人?いくつ?どこ住み?可愛い?」
「なんでそんなことまで話さなきゃ…」
「いいじゃん。彼女いない歴イコールな久楽を応援してあげたいという親切な気持ちから…」

何というイケメンセリフ。これはもう、アレだ。主人公にいい感じにアドバイスして、電話番号とか趣味とかを教えちゃうイケメンポジションだ。でも、ときめいているのは主人公だけで、俺のポジションって別にときめいてないよな?ときめく思い出がないよね?

じゃあ、ダメじゃん!

俺が求めるポジションは主人公応援しつつ、俺は高みの見物ポジション!

…なんで、さっきから俺は主人公になれない体なんだろ?

「いない歴イコールはお前もだろー。あと親切な気持ちっていうならそのニヤケ顔をなんとかしろよ。」

やべ、ばれちゃった。なに久楽、サイコメトラー?テヘペロ!
いや、そんな、ちょっと巧妙な策がバレたからって物怖じはしないし、落ち込まない!そして諦めない!試合は終わらせない!
そんな意気込みを悟ってくれたのか?久楽、喋りそう!さすが、空気の読める男だ!

「あいにく、お前が期待しているような話じゃないよ。これバイトだから。」
「バイト?あれ、お前バイトしてたっけ?コンビニとか?あ、そのバイト先の女の子?」
「んー、バイト先の人って言うのかな…?メールするのがバイトだから、これ。」

なにそれ、出会い系?サクラ?俺が今メールしてる相手は実はお前?なにそれ、つらい。

「メールするのがバイト?なにそれ、いかがわしい奴?」
「俺も詳しくは教えてもらってないんだよ。このバイトを知ったのは3ヶ月前かな。」

なんで、バイトしてて教えて貰ってないの?なんで、そんなバイトしちゃうの?お父さん、そんな子に育てた覚えはないよ?俺もお前みたいな子供育てた覚えないよ?
そして、久楽?遠い目をしないで?これあれでしょ?

「そして話は3ヶ月前に遡るのであった…」

勝手に回想シーンはいる奴でしょ?

「勝手なナレーション入れるな。」

…親切心を叩き折られた気分。

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