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高円寺酔生夢死 YOMBAN編

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バンダイビジュアルのWebマガジン「トルネードベース」にて連載していた『高円寺酔生夢死』の続編です。同じくバンダイビジュアルの『YOMBAN』にて2010年の2月から9月まで連載… もっと読む
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記事一覧

高円寺酔生夢死 第08回(終)

高円寺は阿波おどりと共に秋を迎える。そんな事が言われるほどに、八月下旬に行われる阿波おどりは高円寺にとって一大イベントである。最近、テレビや雑誌に載る事も増えたので知っている方も多かろう。発端は昭和32年。現在の高円寺パル商店街振興組合に青年部が誕生した記念に何かやろうという事で、半ば思いついたのが「阿波おどり」をやろうという事だった。しかし、思いついたのはいいが、誰も阿波おどりの何たるかを知らな

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高円寺酔生夢死 第07回

人はなぜ酒を飲むのか?単純に酔っぱらうのが良いのだ、という人もいるだろうが、更に進んで、出来ない事が出来てしまうから、というのもあるだろう。彼氏彼女に思いを伝えるのに酒の力を使ったり、説教する時についつい一杯飲みつつ、なんていうのは、飲み屋でよく見られる光景である。説教に付き合わされる部下には迷惑な話だが、普段は人を叱る事が出来ない人がよく使う手だ。それが切っ掛けで「怒り方」を覚えてよい上司になる

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高円寺酔生夢死 第06回

最近、女の事ばかり考えている。

──といっても、恋に焦がれているわけではない。今度の新番組のキャラクター達について考えている。詳細は省略するが、主人公は女子高生ながらに宇宙海賊の船長をやっているという、近年まれに見るスペースオペラな宇宙モノである。そして何より、今回の作品は女キャラクターが気持ちの良いくらいに多いのだ。主人公は女子校に通い、女だらけのカフェでアルバイトをしている。何より彼女が所属

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高円寺酔生夢死 第05回

先日、『高円寺びっくり大道芸』というイベントが行われた。主催は高円寺の一〇ある商店街と高円寺フェス、そして座・高円寺。元々は八月の阿波踊りに参加していなかった商店街が、人が沢山押しかけているのに勿体ないと、路上パフォーマー達を呼んだのがきっかけである。当初は安直な企画だと思われていたが、意外にも大好評で普段人が少ないその商店街が人で溢れていたのを憶えている。せっかくだから高円寺じゅうでやろうじゃな

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高円寺酔生夢死 第04回

高円寺は桜が多い。普通のお宅に始まって、団地の庭や駐車場、そこらの公園には必ずと言っていいほど桜の木が植えてある。おかげで春になると、そこかしこで桜色の風景を楽しむ事が出来る。サトウがこの街に居を構えた理由としては、桜の木々の多い街並みというのも大きいかもしれない。桜と言えば花見。缶ビールを持ってふらりと公園に立ち寄るのもいいが、大勢で宴を楽しむのもよい。どうせ酒ばかり飲んで桜なんて見てないんでし

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高円寺酔生夢死 第03回

 今年のこの季節がやって来た。花粉症?いや、新装開店の季節である。『トルネードベース版・拾伍の巻』にも書いたが、大抵不動産の更新時期が三月辺りであり、前の月或いは前年に閉店した物件に、内装業者が忙しく立ち働くのがこの時期だという事だ。

 以前は「高円寺は地元の人たちの比重が非常に大きい」と書いた。これは三年前の時点での認識であるが、ここ最近、何やら状況が変わってきている。まず、店構えが明らかに異

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高円寺酔生夢死 第2.5回

 珍しくアニメの話をしようと思う。

 実在する場所を舞台にする場合、よくロケハン、ロケーションハンティングなるものを行う。実際に撮影する実写ならいざ知らず、何で絵で描くアニメにロケハンが必要なのかと聞かれるが、絵で描くからこそ必要なのである。更に言えば、シナリオハンティングもやれるならばやった方がいい。以前、河森正治さんと話をした時に「ロケハンは五回はやった方がいい」という結論になった。横で聞い

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高円寺酔生夢死 第02回

「お前、気が利いていないなあ」とか「気ィ利かせろよ!」なんて声をごった返す飲み屋で聞いた事がある人もいるだろう。店が客に対して気を利かせるというのは接客業だから当然とはいえ、酔って無体な事を言うお客に対して、あくまでも『お客様』として会計を済ませるまでは我慢をしているお店の人はエライと思う。更には、そんな迷惑なお客を相手にしつつ、他のお客が不快に思わないように上手く仕切るマスターや女将、店長に店員

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高円寺酔生夢死 第01回

 という訳で、『高円寺酔生夢死』を再開する事になった。

 初めまして、そしてお久しぶり。当エッセイは、かつてトルネードベースなるサイトで一六回の連載を戴いた『高円寺酔生夢死』なる連載の続編である。煌びやかなYOMBAN連載陣の中で、なにゆえこの連載が復活したのかはわからない。明らかに読者層が違うのではないかと思われるが、これをきっかけにしてこうした著述物に慣れ親しんでいただければこれ幸いである。

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