第1話『戦記、はじまる』

学園戦記ムリョウ

第一話『戦記、始まる』(第一稿改)
脚本・佐藤竜雄

登場人物
統原無量(スバル・ムリョウ)
村田 始(ムラタ・ハジメ)※ナレーション
阿僧祇(アソウギ)
統原瀬津名(スバル・セツナ)
守山那由多(モリヤマ・ナユタ)

津守八葉(ツモリ・ハチヨウ)
守口京一(モリグチ・キョウイチ)
守機瞬(モリハタ・シュン)
峯尾晴美(ミネオ・ハルミ)
成田ジロウ(ナリタ・ジロウ)
川森アツシ(カワモリ・アツシ)
三上トシオ(ミカミ・トシオ)
山本忠一(ヤマモト・タダカズ)

矢沢友道(ヤザワ・トモミチ)
永野 信(ナガノ・マコト)
村田今日子(ムラタ・キョウコ)
村田双葉(ムラタ・フタバ)

ナンパ君
客A
駅員A
男A
サラリーマン
警官達
車掌
乗客A
乗客B
乗客C
乗客達
司会者
記者
首相
アナウンサー
官房長官
生徒達

◯東京・点景
二〇七〇年四月下旬の東京。
青空に温かな陽光。
東京タワー、相変わらず立っている。
丸の内のビジネス街。
都庁を始めとしたかつての高層ビル群もその後建てられた超高層ビルに囲まれそれなりに調和したたたずまい。
新宿歌舞伎町も相変わらず。

NR(ハジメ)「桜も満開の頃を過ぎ、青葉茂れる五月も目前。ま、要するに四月下旬なわけなんだけど、とにかくいきなり、事件は起こった——」

◯新宿駅
構内のディスプレイには『全線ストップ』の文字。車両内でざわめく人々。
改札前通路では駅員に詰め寄る人々。

客A「何がどうなっているんだ!」
駅員A「只今状況は問い合わせ中でして!」

情報ディスプレイには『特別警戒態勢発令中』の表示。

◯新宿・アルタ前
アルタビジョンに映し出される臨時ニュース。

アナウンサー「本日正午前、東京都臨海副都心青海地区に謎の巨大物体が出現し、当該地区の半径50キロ内の地域に特別非常警戒態勢が発令されました——」

○都内某所
お茶の間のテレビでもニュース。
ポカーンと見ている母子。

○秋葉原・電気街
店頭のテレビモニター群でもニュース。
行き交う人々も足を止める。

男A「何だよ謎って」

○同・ビーチライナー車両内
ざわめく乗客達。車内の液晶TVでも臨時ニュースが流れている。
一人騒がず落ち着いた表情のセツナ。

セツナ「あ~あ……」

不意に車内灯やTVの電源が落ちる。

○新宿・アルタ前
アルタビジョン消える。

○秋葉原・電気街
店頭のテレビモニター群消える。

○都内・ゲームセンター
一斉に消えるゲームのモニター画面。

○丸ノ内
路上で電話中のサラリーマン、突如聞こえなくなったのでがなり立てる。

サラリーマン「もしもし!もしもし!え?」

携帯電話のモニターに映し出される宇宙文字。

○臨海副都心(青海地区)
知的ネットワークの拠点として開発された放射状に広がる研究都市。
その中央部に鎮座する恒星侵略兵器“シーカー”(全高約一五〇メートル)。
鳴り独楽の様なその巨躯。
不気味な機械音が静かに響く。
窓より見守るしかないビルの中の人々。室内のOA機器のディスプレイが錯綜
したように様々な情報を映し出す。
道路信号も目まぐるしく明滅。
シーカーの各部分も文様状に明滅。
※文様と宇宙文字は同じデザインのパターン

遠巻きにしている警官達は身構えているものの為す術が無い。
少し離れたビルの屋上に人影が二つ。
学生服を着た少年と和服の老人——呑気に駅弁を食べるムリョウと阿僧祇で
ある。

阿僧祇「ムリョウ、お茶」

ムリョウ、シーカーを見据えたままお茶の缶を阿僧祇に渡す。

ムリョウ「お手並み拝見…かァ」

不意に重低音で“叫ぶ”シーカー。

「ム、ム、ム、ムリョオーーーーッ!」

圧力。
ビルの窓ガラスにヒビ。
中にいた人々吹っ飛ぶ。
耳を押さえてうずくまる警官達。
叫び続けるシーカー。

「ムリョオーーッ!!」

阿僧祇、構わずお茶を飲む。
ムリョウ、静かにシーカーを見据えたまま。

○オープニング

○臨海副都心(青海地区)
情報収集に余念が無いシーカー。
更にアンテナ状の突起を出現させ、収集の速度を上げるように各所に浮かぶ
文様の数が増えていく。

(サブタイ『戦記、始まる』)

無人となったオフィス内のOA機器のディスプレイが錯綜したように様々な情報を映し出している。

     *   *   *

道路信号も目まぐるしく明滅。
避難する人々。誘導する警官。
警官「この先の広域避難場に急いで下さい」

NR「突如現れた謎の巨大物体は、東京を中心に関東近県、ありとあらゆるネットワークをマヒさせてしまった。とはいえ、いきなり停電になったので、大多数の人は何がどうしたのかわからなかったと思う」

○同・ビルの上
相変わらず呑気なムリョウと阿僧祇。

阿僧祇「最初の一手でいきなり王手か…」
ムリョウ「ずいぶん乱暴だな」
阿僧祇「奴等にしてみれば、こんな未開の惑星など、礼儀を尽くす意味はないのじゃろうて」

ムリョウ「見下されたもんだ、地球も」
阿僧祇「ほっほっほっ…おっ♡」

何かの気配を感じる二人。

ムリョウ「……」

○同
シーカーより少し離れたところ、空中より突然巨大な面が出現する。続いて面から生えるようにしてその体が出現。
三〇メートル余りの白い巨人、シングウの雄姿。
驚く人々。
同様に反応を示すシーカー。

○同・ビルの上
ムリョウ「……」
阿僧祇「ほぉ♪」

微笑む阿僧祇に対しムリョウは静かに見つめるのみ。

○同
すぐさま拳を構えるシングウ。躊躇する間も無く近づくと右の拳をシーカーにぶち当てる。続いて左の拳。

「グオオオーーッ!」

吼えるシングウ。その両腕が大きく歪む。
その歪み(フィールド)に包まれていくシーカー。
シーカーなす術無く粒子状に消える。

阿僧祇「上には上がいたの」
ムリョウ「……」

勝ち誇ることもなく、淡々と出現とは逆のパターンで消えていくシングウ。

警官「何なんだ、あれは……」

人々、呆然と見つめるのみ。

○新宿駅
構内のディスプレイ『全線復旧』の文字。

○同・ビーチライナー車両内
車掌のアナウンスに聞き入る乗客達。

車掌「先程、特別非常警戒体制が解除されました。各機関再チェックの後、通常運転を再開いたします。もう、しばらくお待ち下さい。本日はお忙しい中誠に御迷惑をおかけいたしました——」

ほっとしている乗客達。安堵の声がそこかしこに。

乗客A「お、携帯が通じる!」
乗客B「ホームでかけろよ」
乗客C「一体何だったんでしょうかねえ」

     *   *   *

周囲の騒ぎも気にせず、クロスシートの窓際で携帯ゲームに興じるセツナ。
そこにナンパな男が声を掛ける。

ナンパ君「ねえ、そこ、いいかな?」
セツナ「え、あァいいすよ」

顔を上げることなくゲームに夢中のセツナ。
男、セツナのななめ前のシートに座る。ショートパンツの生足を無造作に組んで座っているセツナ。どぎまぎしつつもキメようと必死な男。

ナンパ君「いやー、大変だったねえ、ホントにさ」
セツナ「そーですねー」

ゲーム機から目を離さず、気のない返事のセツナ。それを幸いにセツナの太ももを見つめながら男、更に続ける。

ナンパ君「何処に行くの?」
セツナ「しょーなん」
ナンパ君「そっかー。でも残念だねぇ、これから電車が復旧してもアレだよ、夕方!いや、深夜になるかもしれないよ。残念だねー、せっかく遊びに行こうとしてたんでしょ?残念だねー…そうだ、これもなんかの縁じゃないかな、と思うんだけど、どう?ちょうど新宿だしさ。ごはんだったらごちそうしちゃってもいいかなー、って思ったりして。どう?行く?行く?行くしか!やるしか!」
セツナ「(顔上げて)何やるの?」
ナンパ君「や、や、や、それはその後の展開として…どう、行く?」

セツナ、虚空見上げて思案顔。

セツナ「うーーん、そーだなー」

ここがオトシどころと身を乗り出す男。

ナンパ君「大丈夫、行こ行こ。切符勿体ないけどその分元取れるって」
セツナ「でもあたし、連れがいるのよね」
ナンパ君「連れ?」

突如男の頭の上に乗せられるお土産やら駅弁やらがどっさり入った袋。

ナンパ君「ぐえ」
セツナ「おっそーい。どこまで行ってたのよ」
ムリョウ「野次馬」

通路に立つムリョウと阿僧祇。男のことはまるきり無視して話を続ける。

阿僧祇「すまんな。ま、その代わりと言っちゃ何だが色々買ってきたから思う存分食いなさい」
セツナ「あたしを太らす気?」
阿僧祇「ハッハッハッ」
ムリョウ「……」

ムリョウ、黙ってセツナを見つめる。
優しくムリョウを見つめるセツナ、軽くうなずくも再び前の調子に戻ってセツナ「そうそう、今ね、このオニイサンに食事に誘われちゃったのよね。ドーシマショウ?」
阿僧祇「食事?」
ムリョウ「(ボソッと)ナンパか?」

袋を抱えてドギマギの男。

ナンパ君「いや、その、つい太ももが、や、そうじゃなくて…」
阿僧祇「そうか…そういや新宿も久しぶりじゃからの。案内してもらおうかこのお兄さんに」

周囲の乗客達笑いをこらえてこの光景を見つめている。

ナンパ君「あ、そ、そうですか?」

○新宿
いつもと変わらない新宿の夕景、そして夜景へ——

NR「本当はすごいことが起きていたのにも関わらず、何も知らされていない人々は呑気な夜を過ごした。真相が政府から明らかにされたのは数日後のことだった」

○村田家・ハジメの部屋(朝)
カーテンから差し込む朝日。ベットでぐっすりと眠っているハジメ。気持ちよさそうな顔。目覚まし時計が床に転がっている。

フタバ(声)「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

遠くで妹のフタバの声がする。が、ハジメには全然聞こえていない。

ハジメ「うううーーっ」

フトンにもぐり込むハジメ。
部屋の中は適度に整頓されているが、物が多いためか雑然とした印象を受ける。本棚には様々な種類の本が並び、壁にはアイドルのポスターや映画のポスターが貼られている。

フタバ(声)「お兄ちゃん、起床ーっ!」

ぱっちりと目が開くハジメ。

ハジメ「むおぉーーっ!」気合い一閃、あっさりはね起きる。
NR「さわやかな、目覚め」

○同・洗面所
やや寝ぼけ顔で歯を磨くハジメ。
NR「今日から五月。まあ別にだから何と言われたら困ってしまうのだけれどとにかく五月だ」

最後に鏡に向かってニッと歯を見せる。

○同・食堂
朝食がテーブルの上に支度されている。
フレンチトーストにポタージュスープ。
目玉焼きは文字通りダブル。
先にぱくぱくと食べているフタバ。
母・キョウコは新聞を読んでいる。
TVでは生中継らしき画面。政府の会見場が映し出されている。スタジオと現地の記者の場つなぎな会話が流れる。

     *   *   *

司会者「それで山本さん、野党の動きはどうなんですか?」
記者「はい、さすがに事件が事件ですので今回に関しては全面的に協力する、しかし、それと他の法案審議は別、とまあ——」

     *   *   *

足早にやって来るハジメ。

ハジメ「はじまった?」
キョウコ「ま~だ」

ハジメ、キョウコの向かいに座ると朝刊をのぞき込む。

一面には『政府、宇宙人認める』『遡って一〇〇年前より』『米大統領公式見解』などの見出しが並ぶ。

ハジメ「あ~あ、俺が生きている間にこんなことになろうとは」
キョウコ「いいじゃない、別に」
ハジメ、さりげなくキョウコが手に持つ新聞をめくって盗み見。
キョウコ「エッチ」
ハジメ「なんだそりゃ」

軽口叩きつつ淡々と新聞を読み合うハジメとキョウコ。気にせずTVを見ているフタバ。

フタバ「あ、始まるみたい」

     *   *   *

TVでは首相の公式見解発表が生中継。
おもむろに壇の前に立つ首相。

首相「えー…先日の東京臨海副都心に起きました『巨大物体出現』並びに『首都圏ネットワーク機能停止事件』に関しましての政府の見解は、昨晩官房長官が述べたとおり、全て真実である、ということで今後の対策並びに関係各者への協力を仰ぐ所存であります。ついては——」

     *   *   *

NR「そうなのだ」

○天網市・街並み
並んで歩くハジメとフタバ。
木々の緑。家並みは20世紀末とあまり変わった印象がない。

NR「あの事件の翌日、みんなが騒ぐよりも先にTVで緊急特別放送が一斉に流された」

○(回想)村田家・居間
かぶりついてTVを見つめるハジメ達。
画面にはシーカーが出現した記録映像が流されている。

アナウンサー「これは特殊撮影やコンピューターによるトリック映像ではございません。嘘偽りのない、マコトの記録映像であります」

     *   *   *

続いてシーカーの出現を記録した人工衛星よりの監視映像、シングウとシーカーの戦闘を記録した映像などが続く。

     *   *   *

政府広報っぽい生真面目な画面。

官房長官「えー、宇宙人は…実は、いました」

○天網市・街並み
ハジメとフタバのもとに駆け寄る少女が一人(フタバのクラスメート)。フタバ、ハジメに手を振って少女と共に駆け去る。手を振ってそれに応えるハジメ。

NR「前々からみんな気付いてた。夢だのウソだのと言いながら、実のところ宇宙人が
いるんじゃないかって。そんな風にみんなが考えるようになったのも、世界の偉い人たちが何十年もかけてそういう雰囲気作りをして来たのだそうだ。そうTVでも政府の人が言っていた」

一人で学校へ向かうハジメ。
街は平静。
通りを掃除する商店主。
犬の散歩をする婦人。
にぎやかに通学する小学生達。
ハジメ、カメラに向かって一言。

ハジメ「ま、『TVで言っていた』から信じる、てのも何かノセられたって感じですね」

○御統中学・全景
街の中央部、城跡の上に建っている校舎。予鈴のチャイムが鳴る。

○同・二年C組
窓際にハジメ達数名が集まって話をしている。
机の上には新聞の号外。

ジロウ「(軽い興奮状態)しかし、いいのかねえ。こんなに次々と衝撃の事実が出て来ちゃってさ」

アツシ「昔から来てたんだろ、宇宙人?」
トシオ「情報公開の頃合いか…通りで最近、情報プロテクトがゆるゆるだと思った」

トシオ、手に持ったノート状の情報端末を操作する。紙状に薄いモニター部に映る様々な情報。どれも軍や国家レベルの重要な機密であることが一目でわかる。

ジロウ「うわっ、スゲっ!」
ハジメ「お前、相変わらずだなァ」
トシオ「中学生風情が盗める情報じゃないってのはわかってたんだけどね」

少しがっかりした顔でぱちんとノートを閉じるトシオ。
始業のチャイム鳴っているが一同は話に夢中。

ジロウ「ついに人類は新たな段階へと突入する!」
アツシ「来るべき日が来たってか?」
ジロウ「お~~ぅ」
アツシ・ジロウ「えすえふぅ~~」

声を揃えて笑うハジメ達。周囲の女子達もクスクス。
山本先生、前の扉より入ってくる。

山本「こらーチャイム鳴っただろ、席に着けー」
ジロウ「やべやべ……」

慌てて席に着くハジメ達。

山本「村田、学級委員のお前が浮かれてちゃダメだろ」
ハジメ「はーい」

あいたた、と軽く顔をしかめるハジメ。
軽く笑う一同。

山本「(にやッと笑って)ま、宇宙人が攻めてきた、なんてことを連日TVや新聞でやっ
てんだからしょうがないっちゃあないけどなァ」

すかさずジロウ、手を挙げて

ジロウ「先生、学校ォお休み、とかには——」
山本「なんねえよォ」

間髪入れないやり取りに思わずドッとウケる生徒達。

山本「宇宙人を倒した正義の味方、ってのがいるらしいから政府もみんな安心してるんだろなあ。国際防衛軍、ってのもあるし……ま、それはそれとして、こんな状況で転入する羽目になった奴がいるんだな」
生徒一同「お~~っ」
山本「スバルクン、はいんなさい」

扉からムリョウ、入ってくる。
一様に驚く生徒達。
ムリョウ、冒頭同様学生服を着ている。

ハジメ「何だ、ありゃ」

ポカーンと見ているハジメ。

○アイキャッチ

○御統中学・二年C組
ざわめく生徒達。

ジロウ「軍服かァ?」
トシオ「バカ、学生服だよ」

周囲の反応に微笑を浮かべ、山本の脇まで歩み寄るムリョウ。

山本「はいはい、静かにしろ。それじゃスバルクン、自己紹介——」
ムリョウ「統原無量です。長野から来ました」

ニコッと笑うムリョウ。
ただただ見入るのみのハジメ。

NR「宇宙人よりも何よりも、まるで大昔のマンガのような出で立ちの転校生に、僕達は驚いた」

○同(昼休み)・全景
校庭でバレーボールをしている生徒達。

○同・中庭
庭の手入れをする女子生徒。
それを横目に見ながらハジメ達、ムリョウを囲んでダベり合っている。

ジロウ「でさ、何で学生服なのさ?」
ムリョウ「何でって?」
ハジメ「そりゃ、変だからさ。今時そんな服着る中学生なんていないしね」
アツシ「何かのコスプレ?」
トシオ「どうしてそうなるんだよ」

真面目そうなトシオ顔をしかめて突っ込む。

ムリョウ「うーーん、そうだなぁ…」

虚空見上げるムリョウ。注目する一同。

ムリョウ「…何でだかなァ、俺もわかんないな」
ジロウ「(素っ頓狂に)お前、自分の着るもんのこともわかんねえのかよ」
ムリョウ「…ていわれてもなァ。だってこれ、爺ちゃんからの餞別なんだ」

間髪入れず頷くハジメ。

ハジメ「おお、成程」

一同、ハジメのセリフにカクッとなる。

トシオ「おいおい、納得すんなよハッちゃん!」
ムリョウ「これは何処でも着て行ける便利な服だ、ってさ。確かにこれは便利だから着てるだけなんだけど…ダメなのかい?」
トシオ「いや、ダメっていうか…」
ハジメ「学生服ってすっごく古い服だからさ。みんな見たこと無いんだよ、間近で」

○イメージ映像
昭和、平成の頃の資料写真(モノクロ、或いは画質の悪いカラー)
学生服を着て授業を受ける生徒達。
受験発表やら大学の応援団など様々な学生服なシチュエーションが続く。

○御統中学・中庭
ハジメ「ま、校則に学生服を着て来ちゃいけない、って法はないんだから。自主と自立の御統中学の精神に乗っ取れば、別にどうでもイイんじゃないのかなあ」
トシオ「いや、いいんだけど…そういう理屈じゃ割り切れない見た目の不自然さはどうするんだよ」
ジロウ「(ナレーター口調で)現代に甦りし学生服、そこに秘められた意味とは一体?!」
アツシ「なしなし」
ハジメ「お前、TVの見過ぎ!」

一同のやり取りを微笑みながら眺めるムリョウ。
チャイムが鳴る。
それぞれ腰を上げる。

ハジメ「じゃ、統原君。五時間目は教室じゃないからね」
ムリョウ「生徒総会…だっけ?」
ジロウ「そうそう」

空は青空。

○同・大ホール
劇場のようなすり鉢状のホール。生徒達は思い思いの場所に自分の座布団を敷いて座っている。
壇上には生徒会のメンバー。

那由多「それでは、二〇七〇年五月の生徒総会を始めます。初めに議長・副議長の選出および、あいさつ。これは先日の評議会で決定しています。三年D組のヤザワトモミチさん、三年A組のナガノマコトさん、お願いします」

壇上の生徒達その場で立って発言。
大スクリーンに表示される議事進行表。
ハジメ達は後ろの方で呑気に見物気分。

NR「生徒総会は我が御統中学生徒会の最高の議決機関だ。八月と三月をのぞくと毎月一回、年間に計十回行われる」

議長コンビの二人挨拶している。

ヤザワ「(へらへらと)えー、ちゃっちゃっと進めますので…」
ナガノ「みなさん、頑張りましょう!」

生徒達はやしたてる。拍手と歓声。

那由多「続いて、生徒会長あいさつ」

おもむろに立ち上がる八葉。大きな体。

八葉「はい…宇宙人とか大変ですが大丈夫、体育祭はやります。(ここで「おおーっ」と声上がる)新入生諸君もミスチュウに慣れてきたことと思いますのでどんどん発言して下さい。じゃあ“ちゃっちゃっ”のヤザワ君達、頑張って下さい」

朴訥ながら飄々とした八葉の語り口。
ドッとウケる一同。

ムリョウ「面白い人だなあ」
ハジメ「そうだね」

微笑みながらムリョウ、壇上からの視線に気付く。
副会長の京一、じっとムリョウを見つめている。穏やかに見つめ返すムリョウ。

ヤザワ「えーーっ、それではまず、報告事項」

いい雰囲気の中で進んでいく生徒総会。
ダイジェストに展開される総会の様子。
緊張の面持ちで発言する一年生。
うるさ型っぽい三年生の発言。
冷静に切り返す京一。
きびきびと報告書を読み上げる那由多。
どこかおどおどした感じの峯尾晴美。
女生徒からの声援が飛ぶ守機瞬。
ニコニコとうなずく八葉。

NR「宇宙人騒ぎも何のその。生徒会の当面の目標は来月の体育祭の成功、ということで結構総会も盛り上がった」

閉会。
拍手するハジメ達。
居眠りしているジロウ。
穏やかに壇上を見ているムリョウ。
教室の窓の外は青空。桜の木々は緑。

○御統中学・全景
放課後。下校風景。
クラブ活動をする生徒達の姿。

○天網市・外堀通り
城跡の堀の周囲は天網町のメインストリート。
歩いているハジメとムリョウ。
道行く人じろじろとムリョウを見る。
気にしているのはハジメの方。

ハジメ「…あのさ、恥ずかしくないの」
ムリョウ「え?ああ、服かい?」

全然意に介していない様子のムリョウ。

ハジメ「ま、いいけどね…」

○同・屋敷町
昔風の家屋敷が並ぶ静かな雰囲気。
相変わらずてくてくと歩く二人。

ムリョウ「村田君は部活とかしないの?」
ハジメ「ああ、ちょっとね。統原君は前の学校で何やってたの?」
ムリョウ「うん…そうだなぁ…いろいろ」
ハジメ「いろいろ?」
ムリョウ「そう」
ハジメ「ふーん。じゃ、大変だな。ウチは部活が盛んだから来るよ、勧誘」
ムリョウ「それじゃ」
ハジメ「え?」

一番古くて立派な家屋敷に入っていくムリョウ。

ムリョウ「取りあえず俺んち、ここだから」
ハジメ「え?え?」

とまどうハジメを置いて入っていくムリョウ。
立派な門構えの表札に『真守』の文字。
呆然のハジメ。

○村田家(夜)・食堂
ハジメ、キョウコ、フタバ三人で夕食。
献立は豚の生姜焼きに味噌汁。
目をパチクリとするキョウコ。

キョウコ「学生服のぼっちゃん?」
フタバ「何それ」

TVが付けっぱなしで流れ、宇宙人問題についてのその後が報じられている。

ハジメ「何それ、って言った通りだよ。学生服を着た、御屋敷のぼっちゃん」
フタバ「学生服ってなぁに?学の制服?」
ハジメ「いや、学生の服だと思うけど…」
キョウコ「母さんの学生の頃だってそんな服着てる人なんかいなかったわよ」
フタバ「要するに古い服なんだ。駄目じゃん、そんなの」
キョウコ「ぼっちゃんって、どこの子なの?」
ハジメ「屋敷町のさ、真守って大きな屋敷」
キョウコ「変じゃない、それ」
ハジメ「何で?」
キョウコ「その子統原って名字なんでしょ。真守さんじゃないじゃない」
ハジメ「ああ」

合点がいったハジメ。
興味津々に顔を輝かせるフタバ。

フタバ「えー、それってそれって」

軽くたしなめるキョウコ。

キョウコ「こら」

ちぇ、と再びパクつくフタバ。
キョウコ向き直る。ハジメも神妙な顔。

キョウコ「ハジメ、その子にもその子の家庭の事情があるんだからあれこれ詮索しちゃダメよ」
ハジメ「うん」
フタバ「(しみじみと)出戻りなのかなあ…」
キョウコ「こら!」

TVのニュースでは再び朝の会見を流している。
ハジメ、それを見つめながら淡々と生姜焼きをパクつく。

NR「宇宙人…大昔のアニメや映画ならばそれこそ大パニックになるであろう時なのに、今、僕はというと、こうして統原君の事情を詮索している不謹慎野郎だ」

○同・居間
フタバとTVゲームをするハジメ。
二人ともヒートアップ、ボタン連打。

○同・浴室
湯船につかっているハジメ。

NR「周りの人も大変だ、と言っている割には落ち着いている。皆一様に言うのは『騒いだところでしょうがない』」

ポチャンと落ちる湯気。

○同・ハジメの部屋
ベッドの中のハジメ。天井見つめて神妙な顔。

NR「これって人類が精神的に成長したってことなのだろうか。それとも、ただ無神経になっただけとか……それとも……」
いつの間にか眠っているハジメ。

○天網市・点景
夜。

○同・屋敷町
深夜。真守家の前に立つ人影。

京一「……」

怖い顔で睨んでいる京一。
それをまた離れた電柱の上から見ている人影。
ヤレヤレといった感じのセツナ。
満月が美しい夜。

○御統中学(朝)・全景
青空。

○同・二年C組
ハジメ「おはよーっス」
扉を開けて入ってくるハジメ。
教室内では心配げな顔をしたジロウ達。

ハジメ「何だよ、シケてんなァ」」
ジロウ「あのなぁハジメ…さっき統原が副会長の守口さんに連れて行かれたんだけど…」
ハジメ「え?何処に?」
ジロウ「睨まれちゃってさァ、『ついてくんな』って…」
ハジメ「ハァ?」
晴美「あのぉ…」

見ると生徒会役員の峯尾晴美が入り口前に立っている。走ってきたのか息が乱れている。
ピンときて廊下に出ていくハジメ。
思い詰めた表情の晴美。

晴美「あの…あの……」
ハジメ「守口さんのこと?」

ビクッとする晴美。堰を切ったように

晴美「お願い、守口先輩を止めてください!」
ハジメ「え?」

○同・廊下
一目散に走るハジメ。

     *   *   *

ハジメに訴える晴美

晴美「守口先輩が、学生服の子を……お願い、止めてください!」
ハジメ「場所は?」
晴美「屋上……」

     *   *   *

階段を上がるハジメ。

ハジメ「物好きなのは親譲り、ってかァ」

○同・屋上
鉄の扉を押し開け屋上に飛び込む。
誰もいない。

ハジメ「おく、じょう?」

慌ててキョロキョロ。
体育館の屋根の上に人影が見える。
向かい合っているムリョウと京一——

ハジメ「おいおい、マジかよお」

遅れてジロウと晴美やって来る。

ジロウ「ハジメ!」
ハジメ「先生を呼んで!」
ジロウ「え?」

いきなり駆け出すハジメ。
そのまま柵を乗り越え、飛び降りる。
下は下の階が張り出しており、体育館との渡り廊下につながっている。
着地。

ハジメ「いで…」

しびれる足に構わず走り出すハジメ。

ハジメ「いでッいでッいでッ!」
晴美「……」
ジロウ「あーあ、また無茶やってる……」

渡り廊下の屋根の上を走るハジメ。
派手な足音ドタンバタン。
下にいた生徒、ギョッとする。
メンテ用のステップに手を掛けて上るハジメ。さすがにバテバテな表情。

ハジメ「ケンカはイカンよケンカは…」

上から二人のやり取り聞こえてくる。

京一(声)「お前、何者だ!」

○同・体育館屋根上
屋上、というよりも、採光用の窓と雨水利用システムのメンテナンスのためのスペース(当然立入禁止)。
だだっ広い平面上に立つムリョウと京一。
険しい顔の京一。
涼しい顔のムリョウ。
心なしか強い風が吹いている。
上がってくるハジメ。ひょっこり顔をのぞかせる。

京一「お前、あの時、あそこにいたな!」

ムリョウ「あの、とかあそこ、とか指示語が多いヒトだなあ……もうちょっとわかりやすく話した方がいいよ」
京一「!」

カチンとくる京一。しかし怒りを噛み殺すように

京一「……この間、東京で宇宙人の侵略ロボットが出たときだ!なぜあんな処にいた!?」

ギョッとするハジメ。しかしムリョウは平然としている。

ムリョウ「君もそこにいたのか。奇遇だな」
京一「ム……どういうつもりだ?何をたくらんでるんだ貴様らはッ!」

ムリョウ、ただ微笑むのみ。
半歩下がり身構える京一。
固唾をのんで見つめるハジメ。

NR「生徒会副会長、守口京一。彼は古武道の有段者だ。まずい…まずいぞ統原君」

慌ててよじ登るハジメ。
今にも飛びかからんばかりの京一。

ハジメ「おい、やめ……」

ダッと飛び出すハジメ。
ムリョウ「あぶない!」
ハジメ「え?」

京一、カッと目を見開く。その足下より突風のような圧力が四方に向かって走る。

ハジメ「うわわ」

衝撃。圧力をもろに受けたハジメ、宙に浮く。

ムリョウ「!」

瞬時にムリョウ飛びつくとハジメの手首をつかんで引き戻す。そのままへたり込むハジメ。

ハジメ「はは……」
ムリョウ「何しに来たんだい?」
ハジメ「転校生には親切に……取りあえず学級委員だからさ」

言葉とは裏腹にヘロヘロのハジメ。

ムリョウ「ありがとう」

ニッコリ笑いながら京一の方へ向き直るムリョウ。

ムリョウ「チカラの大きさはいいセン行ってる。でも、使い方がヘタだ」
京一「何?!」

ハジメをかばいながらも自然体の構えを崩さないムリョウ。突如その足下の空気が歪む。
走る圧力、京一に向かう。

京一「!」

衝撃。
京一、体中で何とか受け止めるが、動揺を隠せない。

京一「キサマ……」
ムリョウ「教えてあげよう。チカラの本当の使い方を——」

涼しく微笑むムリョウ。その後ろでただただ驚くハジメ。

NR「宇宙人よりも何よりも、たった今のこの展開の方が僕にとって最大最高最上級の驚きだった……」

ポツリつぶやくハジメ。

ハジメ「何だ、こいつら?」

         (第一話・完)

☆二〇〇字詰八七枚換算

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佐藤竜雄

アニメ監督です。こちらでは過去に発表した原稿やら何やらを載せていきたいと思います。

学園戦記ムリョウ全脚本

佐藤竜雄の原作脚本監督作品『学園戦記ムリョウ』全26話の脚本です。オリジナルアニメの脚本はあまり見る機会がないということで自作をここに公開します。無料無期限ですのでお気軽に!
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