高円寺酔生夢死 第04回

高円寺は桜が多い。普通のお宅に始まって、団地の庭や駐車場、そこらの公園には必ずと言っていいほど桜の木が植えてある。おかげで春になると、そこかしこで桜色の風景を楽しむ事が出来る。サトウがこの街に居を構えた理由としては、桜の木々の多い街並みというのも大きいかもしれない。桜と言えば花見。缶ビールを持ってふらりと公園に立ち寄るのもいいが、大勢で宴を楽しむのもよい。どうせ酒ばかり飲んで桜なんて見てないんでしょ、と思われる方もいるだろうが、確かに若い頃はそうだった。とにかく大勢で、何よりも広い場所でダーッと集まって飲むのが楽しかった。花見にかこつけていたのは確かだ。

今年三月も半ば、まずはそんな賑やかな花見をした。気温も低く、桜のつぼみもまだまだ固く、せいぜい一輪か二輪がはるか遠くの木に見受けられる、そんな所でのバーベキュー。明らかに花見は方便である。人数は八〇人以上を優に超える、なかなか豪勢な集まりだった。基本構成は『博多や』スタッフと常連、それから近くの飲食店のスタッフ達だ。抱瓶や鳥貴族の兄ちゃん達が一堂に会すというのは、なかなか無い光景である。そして皆、率先して立ち働くので楽しくもグダグダ感のない、いい集まりだった。

嘗ての学生コンパのように大広間で一〇〇人以上が飲むような事はあまりしなくなったのは、そんな大人数が一挙に集まる圧迫感のせいもあると思う。サトウも学生時代、何度か幹事をやった事があるが、とにかく面倒な上に、着地点を何処に設けるかというのがなかなか思いつかなかったのを憶えている。苦労する割りに皆の満足度を上げられない、やって意味無し…そういう流れになっていったのも仕方が無いと思う。しかし、これが屋外になると別だ。とにかく『外』で行う、という事自体に意味があるのだ。はっちゃけ過ぎなければ、外での宴会というのは良い集まりだと思う。

ところで『博多や』バーベキューだが、次回はメンバー百人越えを目指すとか目指さないとか。夏にも行うそうなので楽しみだ。

そして四月頭には、広橋、大宙、野中、松岡と言ったステルヴィアな連中との花見が急遽行われた。これに関しては色々愉快な事があったが割愛。ビニールシートを拡げて一〇分あまりで雨天撤収という慌ただしさはむしろ皆のテンションを異常に上げた。その後、高円寺に戻って飲んだのだが、妙に盛り上がったのは印象深い。その翌日には最近よく行く『舌笑(ごち)』の常連達と善福寺川緑地へ。参加人数は十数人と少なめなものの、それぞれが持ち寄った料理の数々が美味しく、半日があっという間に過ぎた。大人数での宴会やバーベキューもいいが、こうした集まりも良い。何より、ふと見上げた桜の美しさと言ったらなかった。

四十を越え、ようやく花を愛でながら宴を催す事の意味を知ったような気がする。それはアニメを作るという事への、自分なりの意味を新たに見出したのと同じ理由からなのだろう。その理由とは何か?まあ、その辺りはこれからのサトウが作っていく作品の数々で判断して欲しい。

(2010年4月30日公開分)

※後述

6年前のエッセイだがずいぶん昔のような気がするのはここから一気に「モーレツ宇宙海賊」の制作が劇場版も合わせて4年間、かなり目まぐるしい日々が続いたからだろう。このエッセイを書いた頃合いからから一気に2014年の2月に飛んでしまった気がする。楽しいことも辛いこともかなり凝縮されているので記憶の中から引っ張り出すのも一苦労。今こうして過去の文章を再掲しているのもそんな自分の記憶をあらためて掘り起こしている意味合いもある。

何はともあれ来春。久しぶりに楽しい花見、しみじみな花見などをしたいものだ。

読んで下さってありがとうございます。現在オリジナル新作の脚本をちょうど書いている最中なのでまた何か記事をアップするかもしれません。よろしく!(サポートも)