スタートアップ紹介①「Intuition Robotics」
本記事の概要
Intuition Roboticsは、米国の高齢者施設や高齢者宅を対象に、高齢者の孤独感を軽減し、健康と自立を向上させる高齢者向けのデジタルアシスタントロボット(音声操作)「ElliQ」を開発する会社
ニューヨーク州高齢者福祉局(NYSOFA)とパートナーシップを結び、2022-2023年の過去1年間で800人以上のニューヨークの高齢者に提供した実績を持つ。その結果、利用した高齢者の95%が、孤独感が減少したと報告されている
2023年8月にWoven Capitalがリードし、シリーズCで$25Mの調達に成功
トップ画像はIntuition RoboticsのHP画像を参照
Woven Capital:トヨタの子会社であるWoven by Toyotaの投資部門
*こちらの記事は貼付のURLの記事やウェブサイトを参考に作成しております。
Intuition Roboticsの企業概要
設立年:2016年
所在地:Ramat Gan, Israel
ファウンダー:Dor Skuler
事業概要:高齢者向けのデジタルアシスタントロボットの開発
累計調達額:$83M
資金調達履歴(参考サイトは下記)
https://golden.com/wiki/Intuition_Robotics-AMB5V9K
2016:シードラウンドで$2M調達
2017:シードラウンドで$4M調達
2017:シリーズAで$14M調達
2018:ベンチャーラウンドで$2M調達
2020:シリーズBで$36M調達
2023:シリーズCで$25M調達
Intuition Roboticsを取り巻く市場環境
高齢者人口の増加:米国における65歳以上の人口割合は2024年約18%から2040年約24%と増加、日本は65歳以上の人口割合は2024年約30%から2040年約38%と増加すると推定されている
高齢者の孤独感:2018年に実施された調査で、50歳から80歳の27%が他者から孤立していると感じていると推定された。また、孤独を感じた人は、感じたことがない人に比べて、調査期間中の死亡リスクが1.16倍高かったことが報告されている
関連論文はこちら→https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2306819120
製品概要
デジタルアシスタントロボット(音声操作)「ElliQ」の機能例
ユーザーと積極的に会話を始める
会話を兼ねることで会話や提案内容がパーソナライズされていく
身体運動やトリビアゲームの活動を提案する
栄養に関する情報交換、薬の服用を促したり等の健康チェックの実施
メッセージの送信やビデオ通話の実施
交通機関の予約
ElliQの使用動画
朝の会話
服薬の促し
健康確認
ゲーム機能
Amazon社の「Alexa」との違い
Alexaはユーザー側が積極的に質問をするが、ElliQはユーザーが利用可能な時間帯を見つけて、ElliQは積極的にアクティビティを提案したり、会話を始めたりする
Alexaは質問に回答するだけだが、ElliQは聞かれた質問の返答に加えて役立つ情報等を付加してくれる
例えば、アレクサに天気を尋ねると、アレクサは転記予報を教えてくれる。一方、ElliQは転記予報を伝え、その日の予定を尋ねたり、傘を持っていくよう注意を促したりしてくれる
ビジネス戦略
ニューヨーク州高齢者福祉局(NYSOFA)とパートナーシップを結び、ニューヨーク州の高齢者にAIロボットを提供。政策を活用し、政府との提携で資金と顧客の獲得、事業の拡大を目指す
ElliQを使用した高齢者は、1日30回以上、週6日ElliQと対話していた。高齢者は長期にわたってElliQと会話を実施していることが報告された
今後も他の州政府や公共部門のパートナーとの提携を積極的に進めていく予定
価格
$249.99(入会金)+$49.99/月(年間契約した場合の料金)
競合企業例
groove-x
所在地:東京
累計調達額:10.8億円
事業概要:家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発
対象顧客:一般家庭または職場
製品概要「LOVOT(らぼっと)」の特徴
自動運転車の技術を応用し、自動で移動・充電可能
人か物かを識別できる温度カメラ(サーモグラフィー)を内蔵
自然なアイコンタクトや鳴き声を発することが可能
価格:498,800円(本体購入)+10,998〜14,958円/月(暮らしの費用:ソフトウェアアップデートや修理サポート等含む)
Intuition Roboticsとの相違点:高齢者向けに特化していない、会話でコミュニケーションをとることができない
LOVOTの使用動画
TomBot
所在地:Santa Clarit, CA, USA
累計調達額:$7.1M
事業概要:認知症治療用ロボット「Jennie」を開発
対象顧客(想定):高齢者宅、高齢者施設、医療機関、等
製品概要「Jennie」の特徴
全身にタッチセンサーが配置されており、触れられたりすると反応する
音声ソフトウェアの起動により、「話して」というと犬のように吠えて応答する
ソフトウェアはアップデート可能
医療用ロボットとして、FDAに認可済み
価格:$450(本体購入)
Intuition Roboticsとの相違点:会話でコミュニケーションをとることができない
Jennieの使用動画
競合企業参考(子供向け)
No Isolation
https://www.crunchbase.com/organization/no-isolation
所在地:Oslo, Norway
累計調達額:$10.6M
事業概要:通学できない子供(重病等の理由から)に向けて「AV1」を開発
対象顧客:小・中学校、自治体、等
製品概要「AV1」の特徴
AV1にはカメラ、マイク、スピーカーが内蔵されており、自宅にいる子供のデバイスと連携し、代わりに学校で授業を受けたりすることが可
子供は自宅からタブレットで操作可能
価格:€4,200(本体購入)
AV1の使用動画
Embodied
https://www.crunchbase.com/organization/embodied-inc
https://www.fastcompany.com/91006613/kids-robot-moxie-gets-ai-upgrade-and-tutoring-features
所在地:Pasadena, CA, USA
累計調達額:$77.4M
事業概要:子供向けに音声で会話をする「Moxie」を開発
対象顧客:一般家庭
製品概要「Moxie」の特徴
遊びをベースとした会話学習を通して、5~10歳の子供の発達をサポート
GPT搭載AIを備えている
2024年後半には算数や科学等の家庭教師のような学習サポート機能を付加予定
価格:$799(本体購入、学習サポート機能は追加で年間$10-12のサブスクリプションモデルを検討)
Moxieの使用動画
所感:Intuition Robotics
「ElliQ」の動画を見てみると、実際に人と話しているような感覚になるほど応答がしっかりしており、高齢者の1日の使用頻度が高いことも十分に納得ができる性能である
また、Intuition Roboticsは製品の性能だけでなく、ビジネス展開にも長けている。ニューヨーク州政府の政策を利用することで自社製品を多くの高齢者に提供することができた。大きな実績が出ることで、同じように地方自治体と連携したり、一般の高齢者宅や高齢者住居施設に導入しやすくなる。自社製品が上手く活用できる自治体と組んで実績を作ることは高齢者向けテクノロジーの成功のカギの一つかもしれない
このようなロボットは高齢者向けの製品としてだけではなく、例えば自分のPCとリンクさせて、会話型の仕事のサポートロボットとしても活用できるのでは、と個人的に期待している
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