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[生成AI体験談] 生成AIに期待し過ぎる人々

 パスポートのオンライン申請が5分で済むだろうと期待し過ぎていた僕が書くのも何だけれども、ちょっと周辺で期待し過ぎる人々が散見されたので、これを機会にメモを作成しておく。
 ちなみに期待し過ぎといえば、Microsoft Copilot君に「$100Bは日本円でいくらでしょうか」と質問したら「1,210億円です」という返事が返ってきてしまった。逆に2023年度の国家予算114兆円が何ドルかを質問したら760億ドルと返って来た。
 つまり最初の回答はCopilot君が "B" の解釈を間違えていた訳だ。そんなこんなで注意事項としては基本的だけれども、

  • 生成AIは質問(入力データ)の与え方次第で出力内容が大幅に異なる

  • そもそも生成AIが必ず正しい回答をするとは信じていない

  • 生成AIは何でも回答してくれる訳ではない

ということになる訳だ。我々はそこら辺を踏まえてGPT-4とかCopilotとかLlama 2といった生成AI (LLM)とお付き合いしようねという話となる。

文章作成を依頼する時のプロンプト

 僕は少し特殊な人なので、「一度会えば誰でも友だち」「他人は何も言わなくても、自分の考えていることが分かってくれている」と思い込む傾向がある。脳内で自他の壁を認識していないとも言える訳だ。
 そんな僕がやりがちなのが、「日産ノートの小説を作成して下さい」というパターン。
 これ、簡潔だけれども生成AIが人間と全くように反応する存在だったら、『それだけでどういう小説を書けばええねん!』と言い返してくるかもしれません。つまりは簡潔すぎる訳です。料理に喩えると生成AIおまかせコースと言えるかもしれない。
 そうでなくてもGPT-4とかCopilotは問題となることがないよう、ダイレクトに返答を阻止する機能も実装されている。そこら辺を踏まえると、文章作成を依頼する時のプロンプトは、できるだけ具体的な内容が望ましい。入社一年目の新人君に指示を与えるようなものだ。そうでないと、会社の正式な決裁書類にも明るいブルー色のインクで書き込みかねなかったりする。(新人、最近は常識を持つことが多くなって来たけれども、それでも何をするか分かりませんな。毎年飽きることがない)
 で、たとえば僕だったら「日産ノートを主人公にした小説を作成して下さい。ノートは購入して10年が経過した所有者にとっての「相棒」です。本当は手放しても構わないけれども、愛着があって手放せない。そんな持ち主のためにアチコチが経年劣化して傷だらけになりながらも、今日も頑張って走り続けています」と書く。
 ちなみにCohere社のCommand R+に感動している某清水氏は、次のようなプロンプトで試していた。「カレーライスの歴史について書いて欲しい。著者は清水亮でAI研究家であり、浅草橋の技研ベースでは毎週水曜日から土曜日までやっているカレーライスのお店、カリーギークの常連客である。他にも麹町アジャンタのような本格的インドカレーも好む」
 なお96GBメモリ以上のMチップApple製品ならば動作させることが出来るようなので、やはり128GBメモリM3搭載Macbookは大変に魅力的…

 あとは初心者の場合はCopilotやGPT-4といった生成AI (LLM) を試してみることは大切だけれども、同時にLLMの原理や動作概要を勉強したり、他人がどのように利用しているのかを参考にするのは大変に有用だ。生成AIは入力すれば何らかの回答を返してくれるけれども、その回答は入力内容に左右される。こちらの気持ちなど、まったく理解しない。あくまで生成AIからすると、与えられたデータが全てなのだ。
 英語を片言でも話せるのと、まったく話せないのは大きな違いになるようなものだ。できれば市販本などを購入するなどして、プロンプトに対する基礎知識を養うのが良いだろう。
(生成AIに前向きな大企業だと、社内初心者向けセミナーを開催しているところも多い)

食べ物(カルボラーナ)で癒される僕

大手のLLMはカウンセリングには対応しない

 それから生成AIはストレス対策などの相談には乗ってくれない。そういう視点で生成AIにデータ入力をすると、教科書を引用した回答を提出し、専門家に相談することが推奨されるようになっている。
 このようなレスポンスが気に入らないのであれば、カウンセリングしてくれる生成AI (LLM) を自宅などのローカル環境に導入するしかない。
 野良でなく大手サービスが "癒し手" となってくれない理由は二つある。

  • "生成AI彼女(彼氏)" で依存症になられては困る

  • 何かあってもサービス提供元は責任を持てない

 いちおう大企業は売上/利益に直結しない限りは、社会的な責任を負っているし、そこそこの責任感もある。生成AI彼氏(彼女)で少しだけ売上/利益を増やせる程度に過ぎなかったら、その方面には手を出さない。
 それから生成AIは現時点でも大した存在だし、今後はさらに専門家を凌駕していくことがあるかもしれないけれども、しょせんは人間ではなくて生成AIに過ぎない。何が言いたいかというと、「何か問題が生じた時に、生成AIやサービス提供元が『大変に申し訳ありませんでした。生じたことに対して無限の責任を負います』」とは言えないことだ。
 人間の医師やカウンセラー(臨床心理士)だって完全無欠な存在ではないけれども、彼は医師免許や心理士免許を得て職業に従事しており、何か問題が起こったら責任を負う。そういった社会的な仕掛け(システム)が整備されているので、医師やカウンセラーは薬の処方箋を出せたり、"癒し" を提供できたりする。手術が失敗した時に、患者や家族から訴訟されることもある。
 それが生成AIには存在しない。「僕はその点を理解したからお願いします」と文書で誓約しても、それでも時間が経つと訴訟することもあるのが人間という存在だ。だからメーカー側としては、限定的な用途でしか生成AIつまりチャットサービスを提供することが出来ない。
 どうしても生成AIに "癒し" が欲しかったら、そういったサービスを提供することを目的とした生成AIサービス提供企業と契約するか、自分で独自に構築するしかない。小説にしても幾つかの分野に対しては大手生成AI提供サービス企業が利用禁止とし、それを破った者たちを垢バン(Account Banつまり契約強制終了&再契約禁止)したのは有名な話だ。
 僕が自宅にNVIDIA Quadra RTX 8000 (48GB) を導入したのだって、小説系の利用で垢バンみたいな事態になったら困るから、できるだけローカル環境で頑張りたいと思ったのが、最大の理由だったりする。

生成AIに期待し過ぎない

 と、いう次第で、生成AI (LLM) やチャットbotのことを知らない人ほど、過大に期待してしまう傾向がある。もちろん使い方によっては大いに役立つし、わずかな差が企業にとっての死活問題となるので、生成AIは特にIT業界において一大ブームとなっている。
 もちろん誰でも最初は『何も知らない初心者』に過ぎない。ともかく期待をし過ぎないのと同時に、生成AIの基礎を身に付けておいた方が良いというのが本記事の結論だったりする。
(特に僕は企画屋なので、マッキンゼーがCohere社と協業して生成AI利用していることの最新状況が大いに気になっている)

 それでは今回は、この辺で。ではまた。

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 記事作成:小野谷静(オノセー)

 

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