「ゼロ・ウェイスト」から学ぶ 住み続けられるまちづくり by 早坂真央〔山形県立小国高等学校〕#せかい部×SDGs探究PJ先生レポーター

1.はじめに
日々使うものが、どこから来て、どこへ行くのかを知っていますか?日本の自治体で初めてごみをゼロにするという「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町。同町にある「ゼロ・ウェイストセンター」で働く大塚桃奈さんを講師としてお迎えし、授業をしていただきました。

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2.特別授業に至るまでの経緯
家庭総合の授業では、これまで、気候変動の現状を理解し、自分たちに何ができるかについて考えてきました。今回の授業以外にも、外部講師によるオンライン授業を3回実施しました。持続可能な社会をつくるために、住まいと健康という視点から高断熱・高気密住宅について(一般社団法人ロングライフ・ラボ代表理事の清水雅彦さん)。気候変動の現状と地球を守るためにできることについて(環境活動家の谷口たかひささん)。エシカル消費についての講演を聴講(一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さん)。最前線で活動している方のお話は、教科書では知ることができない学びがあるだけでなく、生き方や価値観に大きな影響を与えてくれることを実感しました。かっこいい生き方をしている大人の話を聴かせられる授業をもっとつくりたいと思い、この度、先生レポーターの募集に応募しました。

3.講師決定の背景
「ゼロ・ウェイストセンター」で働く大塚桃奈さんの授業を希望した理由は、以下の3つです。
① ゼロ・ウェイストセンターの取り組みは、マイナスなイメージの強い「ごみ」について、楽しみながら学べるスマートな発想と斬新さがあると感じたから。
② 「ごみ問題」を通して、生徒たちが自身の行動を振り返り、「問題」の一部の人間でいいのか、それとも「解決」の一部の人間でありたいのか、考える機会をつくりたかったから。
③ 自分たちの町よりも小さな町が行っている大きな挑戦を知り、「自分の町でもできるかもしれない」という感覚を持ってもらいたいと思ったから。

4.授業の内容
(1)講師の大塚さんは、なぜ、新卒で徳島県上勝町へ?
大塚さんの夢は、世界を羽ばたくファッションデザイナーでした。そこで、高校3年生の時、ロンドン芸術大学にファッション留学しました。さらに、大学3、4年生の時には、北欧デザインと社会福祉、SDGsの取り組みが世界的に評価されているスウェーデンに交換留学をしました。そこには、衰退する日本の繊維産業を、デザインとまちづくりの視点を持って活性化したいという思いがあったそうです。留学を通して、毎日着ている洋服がどこで、誰によって、どのように作られているのかなど、消費について考え直すようになったとのことです。そして、大量生産・大量消費・大量廃棄の背景がある服飾産業について疑問を感じるようになり、ファッションデザイナーという夢から、ファッションで社会に貢献したいという夢に変わったそうです。今ある資源とどう向きあうかを考え、環境ビジネスに興味を持ち、上勝町に移住したと話していました。

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(2)なぜ、今、ゼロ・ウェイストなのか?
日本人1人当たり1日920gのごみを排出していることを知りました。また、日本の平均リサイクル率は19.9%と、その低さに驚きました。さらには、世界で69.7%のごみが「埋め立て」され、日本で約80%のごみが「焼却」されているそうです。その事実には、生徒も驚きを隠せない様子でした。

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(3)「ゼロ・ウェイストセンター」について
驚くことに、上勝町には、ゴミ収集車も焼却炉もなく、生ごみ回収がされないそうです。さらには、町民たちが自らごみステーションにごみを運び、なんと、ごみを13種類45分別するそうです。町内のリサイクル率は80%を達し、現在は、残りの20%の資源化を目指しているようです。

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(4)施設内のオンラインツアー
実際に、施設内の様子を画面越しに見せていただきました。ごみステーションには、それぞれのごみが、何にリサイクルされて何に生まれ変わるのか、処理するのにどのくらいお金がかかるのか、リサイクルに出すとどのくらいお金が入るのか記されていました。まさに、「つくる責任つかう責任」を実感できる環境だと感じました。何気なくごみを捨てるのではなく、日々のごみ捨てを通じて、ごみのゆくえを学べる環境は、大変貴重だと感じました。

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5.生徒の感想
・世界で出しているごみが約20億tもあるとは知りませんでした。
・日本人1日あたりおにぎり9個分(920g)のごみを出していると聞いて驚いた。
・ごみがどこからきて、どこへ行くか、行き先を知ることを意識して生活したいと思いました。
・自分の町でもこの取り組みを取り入れてリサイクルを頑張っていきたいと思います。
・上勝町では「ごみを資源に」ということで町全体が協力してリサイクル活動に取り組んでいて感動しました。

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6.最後に
私たちが普段掃除をしてごみを出すと、自分の身の回りは片付きます。しかし、そのごみは家庭から社会に移動しただけで、地球上から消えたわけではありません。そんな当たり前のことを、私たちは普段意識することなくごみを出していたことに気づかされました。ごみは、自分の生活や地域社会、地球環境を考える素材になります。ごみについて考えることは、生き方について考えることにつながるかもしれません。本授業を通して、ごみからは多くのことを学べることを実感しました。
最後になりますが、これからも、持続可能な社会の作り手として何ができるのか、生徒たちと共に探究し続けていきたいと改めて感じました。人口1,500人の小さな町の大きな挑戦は、生徒たちに希望を与えてくれました。講師の大塚桃奈さんには、心から御礼申し上げます。上勝町ゼロ・ウェイストセンターでお会いできるのを楽しみにしております。ありがとうございました。

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小国高等学校(山形) 早坂真央
#せかい部 ×SDGs探究PJ先生レポーター

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