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貧困は貧困だけでは終わらない by 山口太我 / 磐城高等学校(福島) #貧困をなくそう

ある日見つけて応募した「せかい部×SDGs探究」。そこから始まった約2ヶ月間にわたる、「貧困をなくそう」の探究活動のレポートである。

目次
 自己紹介
 貧困について
  ・二つの貧困
  ・日本の貧困
 貧困であること
  ・貧困の苦しさ
 解決策
  ・抽象的な解決策
  ・具体的な解決策
 コロナと貧困
  ・コロナ禍の貧困
 まとめ
  ・心に留めたい言葉
 感想

自己紹介
 軽く自己紹介。私は、福島県の高校三年生。こんな時期に何をやっているんだという人もいるだろう。それに対する回答としては、私の希望する進路は海外大学進学で、勉強ももちろん必要だが、それと同等、あるいはもっと、課外活動の経験も必要である。大学に入る前に何か、人に話せる専門的な知識を一つでもつけておきたかったのもあって、この活動は私にとって、受験活動の一つと言える。私が与えられたテーマは「貧困をなくそう」。講義や自分自身での探究を通してたくさんのおもしろいことを学んだので、それらが広まればいいなと思う。

※表記について
 論文からの引用→(年号:人の名前)、講義からの引用→(月日:人の名前)

 
貧困について
 貧困については、私のTwitter(@Tai_ga_Yama)において、詳しく説明した動画があるのでそちらを見ていただきたいが、念のため、簡単に「貧困」について説明しておこう。  

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(図1)

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(図2)

二つの貧困
 実は貧困には二種類ある。
「絶対的貧困」(図1)と「相対的貧困」(図2)である。

絶対的貧困とは、おそらく大多数の方々が想像するであろう、貧困、そのものだ。例を挙げれば、アフリカの痩せているのにお腹が膨れている子供や、日本で言えば、戦後社会のような、食べることもままならない状態のことを指す。
それに対して、相対的貧困は、「目に見えない」貧困といわれるように、世間から認識がされにくいものである。その人たちは、その社会において、普通に享受されていることやものができないことが特徴としてある。具体例をあげればわかりやすいだろう。家庭のルールや個人の考え方などに左右されて、例として一概には言えない(2019:池谷・足立・今出)ものの、みんなが持って遊んでいるゲーム機(今で言うとswitchだろうか?) を持っていない子どもや、もう少し極端に言うと、同じ服をずっと着ている人が挙げられる。
 
日本の貧困
 日本で暮らしていると、「貧困」は遠い問題に感じられるかもしれない。実際、絶対的貧困の割合は調べてもなかなか出てこない(絶対にいないと言い切れることができないこともまた問題だ)が、相対的貧困の割合は15.8%(2018)、約6人に1人いると国の調査によって出されている。学校のクラス、40人だとしたら、1クラスに7人いるかいないかくらいである。
さらに、特徴的なこととして、大人が1人で子供がいる世帯(日本ではその大多数が母子家庭であろう)の相対的貧困率は48.2%にも上る。
他人事で済ませていいのだろうか?

貧困であること
 ※ここからの「貧困」は、主に日本においての貧困、つまり、相対的貧困に重点をおいて話を展開していくが、絶対的貧困にも通ずるところはおおいことも念頭においてほしい。また、ここからは事実を踏まえながら、自らの考えも含んでいる。

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貧困の苦しさ
 貧困になるのは、頑張らないからだ。
と、よく耳にするし、実際、私の友達も似たような言葉を発していた。
頑張れば、貧困から脱することができるのか。この点においても議論の余地はあるものの、もっとその根幹、貧困であることは、「頑張る」ことが難しい、「頑張る」場所すらないという現実がある。

 貧困状態にあることは、生活が苦しくなるだけではない。数え切れないほどの苦しい副産物が彼らの生活に存在する。

貧困であると、病気に悩まされるだろう。
将来、いや、現在でも地球温暖化(テーマ4:気候変動に対策を)による水害や海面上昇、山火事などが原因となる、食料・水不足で健康な身体を保つことは難しく、また、熱中症や感染症にかかるリスクが高まる(10/19:多田)中、貧困であると、治療の機会や金銭の不足による薬の欠乏など、とれる対策が限られてしまうだろう。
 
貧困であると、勉強で苦戦するだろう。
お金がないことにより、近年では当たり前になってきている塾に行くことは困難で、さらに困窮しているところは給食費や教材費を払うのさえ厳しく、学校に通うということもままならないかもしれない。このように、勉強を始める環境さえ揃わない可能性すらあり、それは、学力の低下につながりうる。さらにそれは、仕事の幅を狭め、結果的には、非正規雇用などの低賃金労働を強いられるだろう。

貧困であると、社会的に排除されやすいだろう。
相対的貧困の子供達はそうでない子供達と比べて、交友関係において不利な状況にある(2012:阿部)、また、相談相手などの社会関係資本(10/21:渡辺・アレックス)が欠如しており、つまり、彼らは「ひとりぼっち」になりやすいといえる。そのような状況下では、自己肯定感や自己存在感をも失いがちになってしまうだろう。
貧困であると、貧困から抜け出すことは難しいだろう。言い換えると、「貧困の連鎖」。この言葉は、貧困について探究を始めてから幾度となく見て、聞いてきた。子ども期に不利を背負ったまま成人になった人が子どもを生むと、次の世代に不利が受け継がれ、同じように病気や勉強、人間関係に悩まされる。貧困の中で大人になるとは、子どものという芽が最初から摘まれてしまう(10/18:中塚)ということだ。

解決策
 「貧困をなくそう」と謳ってはいるものの、実際、その目標を達成するためになにができるのであろうか。 

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抽象的な解決策
 国や地方が行えることとしてあげられそうなのは、国の経済体制を「労働者みんなが同じ賃金をもらえる」という社会主義にすることだろうか?
これに関しては、現在、世界中で資本主義経済をとっている中で、日本だけが社会主義をとれば、一般に言われていることとして、技術革新を促進することができず、起業家精神を涵養することもできず、世界の市場経済の国際競争に負けてしまうということがあり(2013:上垣・杉浦)、変更は難しいのではないだろうか。では、昨今話題になっている、「すべての国民に、無条件で、現金を給付する」というベーシック・インカムを導入することはどうだろうか?これに関しては、メリットとして、貧困を解決し、さらに、構造上、少子化の対策にもなりうる。しかしながら、デメリットもあり、大幅な増税や労働意欲、経済競争力の低下などを引き起こしかねない。また、もともと、経済的弱者のための制度として考え出された物であるにも関わらず、高齢者の生活保護受給者にはマイナスになるということも報告されている(2010:上田)。国の行政機関が行う貧困対策は、貧困の人たちだけでなく、全国民に影響を与えるものになりやすく、より深く考えなければならないことがわかった。
 しかし、政府や地域単位の取り組みで貧困への対策を効果的に行なっているところもある。そのことについては、私はあまり詳しくないが、アメリカでのフードバンクやファンドレイシング(10/18:中塚)、フィンランドの行き止まりのない教育システム(10/26:原)など、見習うべき取り組みが世界各地であることもわかった。

 先述したように、相対的貧困は、ひとり親、特に母子家庭において大きな割合を占める。この主な原因として考えられるのは、我々の男は外で働き、女は家を守るといったような「無意識の思い込み」(10/13:吉田)がネガティブに働き、女性の正規雇用の低迷、それに伴う非正規雇用の増加による収入の低さによるものが大きいだろう。そのような昔ながらの固定観念は女性が社会で働きにくくされてきた歴史を作ってきて、ここ数年になって、ようやく女性の活躍を期待されるようになってきたものの、やはりそれは社会に根深く存在していて、未だに改善されないところがたくさんある。これを改善していくには、まず第一に、できるだけ多くの人がその「無意識の思い込み」の存在を知るということが大事であろう。たしかに、生物学的な性別の違いにより、得意、不得意なことはある程度存在するかもしれないが、個人差は必ず存在しているため、一概にそうだと断言することはできないということを意識することが大事だ。第二に、実際に社会(の目立つところ)で活躍している女性の姿が必要だ。実は、これは近年、目にすることが増えてきている。例えば、芸能界や政界があるだろう。芸能界においては、国連でスピーチをしている有名な女優(アン=ハサウェイ、エマ=ワトソンなど)がいたり、政界で言えば、今回のプログラムの最後に講演してくださった野田聖子さん、また、アメリカで初の女性副大統領に任命されるカマラ=ハリスさん。彼女らの活躍は世の中の女性たちの心を大きく動かすことができるだろう。その結果として、男性も女性も平等に仕事をし、活躍でき、給料をもらえるようになれば良いと考える。
 

具体的な解決策
 今まで述べてきたことは、政治に関わることだったり、考え方の問題だったため、あまり現実味がなく、抽象的な貧困の対策だった。では次に、実際、私たち高校生でも行動に移すことが出来そうなことを述べたいと思う。
 まず一つ目に、ありきたりかもしれないが、募金をするということ。募金箱にお金を入れることだけがが、募金をするということではない。例えば、自動販売機で自分が好きな飲み物を買っただけで、その料金の一定の割合が自動的に募金されるというものもある。また、お金をそのまま募金するだけではなく、みなさんの家にもあるであろう、もう読まなくなってしまったような本や、おもちゃなども寄付できるものの一つだろう(10/11:平田)。
 そして二つ目、私たちの社会に対する目を鍛えるということだ。例えば、ジェンダー平等や環境問題、貧困問題に対して積極的に対抗策を行う企業のことを応援すること(10/19:多田)。各々の企業のHPに行けばどのような活動をしているかわかるようだ。また、高校生にとってはホットな話題かもしれないが、選挙において、政治家のスタンスを見極めて投票すること(10/19:多田、11/18:野田)。日本人の問題として、政治に興味を持たないということがしばしば言われる。政治家は国民の代表であり、私たちの声を伝えてくれる代弁者である。なぜ、代表を選ぶのに参加しないで、政治を批判できようか?極端に言えば、もし自分の理念に合致する候補者がいないなら、自分が立候補してしまえばいい。まずは立候補した人たちの考えを見てみることから始め、確固たる自信を持って投票場に行って、投票するのが、国民として理想とされる姿だろう。
 最後に、これも抽象的かもしれないが、SDGsを知らないことが恥ずかしいと思える社会(10/25:木村)、みんながSDGsを知っていることが当たり前の社会を築くこと。世界の人々が問題を認識し、解決策を講じれば、いくつの有効な解決策が生み出されるだろうか。全世界まではいかないにしても、より多くの人がSDGsを知ることは貧困を解決するのみにとどまらず、全ての目標をも達成する可能性を高める。その認知度を上げるという点で、今回のせかい部×SDGs探究プログラムは素晴らしい貢献をしたと言えると思う。また、このプログラムに参加させていただいた私たちも、貢献をしなければならない。 

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コロナと貧困
 2020年が始まってまもなく、恐ろしいウイルスによって日本だけでなく、世界中が混乱させられた。私たちの暮らしは自由がなくなり、仕事の形態が激変、未来が見えなくなった時もあった。では、貧困の状況にある人たちにとって、どんな影響があったのか、簡単にみていきたいと思う。

コロナ禍の貧困
 コロナウイルスによって、学校が長い期間、休みであった。その間、子供達はお昼ご飯を給食ではなく、家で食べることになるので、食費が増えた。さらに貧困の家庭は大抵親は昼間、働きに出ていて、子供だけで留守番、最悪の場合、昼ごはんもなく、お腹を空かせて親の帰りを待つ子供もいるようだ。また、親の仕事も解雇されることが多く、困窮は激しい。
 コロナの影響で仕事を解雇され、貧困に新たになってしまう人も少なくないが、これにより、いいこともあった。今まで、貧困であることは恥ずかしく、みんなから隠していなければ生きづらく、周りからは見えにくかったものが、貧困が拡大することで、当事者たちが声を上げやすくなったことだ。
 助けを求めやすく、求められやすくなった今、大切なことがある。それは、「支援≠偉い」(10/18:中塚)という考え方だ。先述したように、貧困になるのは自己責任だという人もいるが、さまざまな外的要因が複雑に絡み合って貧困に陥ってしまうことが少なくない。もしかしたら、明日大きな災害に巻き込まれるかもしれない。もしかしたら、明日会社をクビになるかもしれない。貧困はいつでも誰にでも起こりうる。だから、貧困者の尊厳を損なわない支援の仕方も模索しなければならない。

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まとめ
 SDGsの中で一番目に位置している「貧困をなくそう」。順番に意味はないとされてはいるものの、今回の学びを通して、自分は、貧困が一番解決の難しい課題だからこそ一番目にあると感じた。地球温暖化などの自然環境によって貧困に、ジェンダー不平等などの社会環境によって貧困に・・・。貧困になってしまう、苦しんでしまう要因はたくさんあり、それらが全て、他のSDGsの目標にあるのです。貧困問題を考えている中で思ったことは、全てを一気に解決するのは到底不可能であり、非現実的だが、他の問題との関わりをしっかり把握したうえで、さまざまな問題に立ち向かっていかなければならないということだ。

 
心に留めたい言葉
 最後に、このnoteのまとめとなる、非常に強いが、私の心に響いた言葉たちを紹介する。
 
世界の貧困問題は先進国である日本と大きく関わっているのである。日本での生活が豊かに保たれている裏側には世界中の多くの人の犠牲がある。この事実を知ってしまった以上、逃げることは殺人と同じである。私たち日本人には、貧困問題を解決する義務と責任がある。
ー 齋藤奏(2006年度):アフリカにおける貧困の解決策 明治大学経営学部公共経営学科卒業論文

豊かな社会における相対的貧困は『贅沢すぎる議論』として一笑に付されることがあるが、その悪影響は「食べ物がない」「衣服がない」といった絶対的貧困の悪影響を上回るものである。
ー 阿部彩(2012):「豊かさ」と「貧しさ」:相対的貧困と子ども(国立社会保障・人口問題研究所)

If you can’t treat someone with dignity and respect, then you need to get out.
もし、他人に尊厳と敬意を持てないなら、ここから出て行け。
ー Lt. Gen. Jay Silveria(ジェイ・シルベリア中将)(2017)


感 想
 貧困に限らず、環境やジェンダーなどの多分野にわたる論文を読んで、知識を深めた。(約10個分)そのおかげで、講義の内容の中にも自分が知っていることが含まれていることが多々あり、より深い理解が得られた。
 講義中は、一個の講義につき一個、ほとんどの講義で質問ができたとは思うが、その質問の質に関しては、まだまだ改善すべき点がたくさんあると思う。
 初めて動画編集をした。とても時間がかかって、大変で、なかなか数をこなすことができなかったものの、講義や論文で学んだことをできるだけ簡潔に、正しく伝えられるように心がけた。グラフ等を使って論理的に理解を求める方法も一つではあったが、それを不特定多数が見る気になるかと言われたら、あまり見ないと考えたので、実行には移さなかった。動画の背景は自らが作成したものであり、著作権に関わるようなものは極力排除した。
 講義が開かれている期間は、情報を蓄積、解釈して、その後にたくさん発信しようと心がけたものの、上記の理由を主として、なかなか実行に移すことはできなかった。計画通りに進まず、後悔はあるものの、いい活動ができたとは感じている。今まで漠然とした認識だったものが、何が原因で、結果としてどうなって、その問題はなんなのかを具体的に知ることができ、さらには人に説明までもできるようになった。私はあまりSNSの使い方が上手くない方だということも再認識することができたし、だからこそ、これからはSNSをもっと有効利用できるようにしたいし、今までより一層、直接の対人関係をしっかり築いていきたいとも思った。
 ある一つのこと、私にとっては貧困について、話せるようになったことがとても嬉しく、誇らしく感じる。
 
もし、人前で話す機会を与えていただいたら、貧困に限らず、そこから派生して、ジェンダー問題、環境問題について知ってもらうたくさん貢献できるくらいの力はあります。さらに言えば、どんなところでも、話させていただきたい、それが私にできることだと思う。


磐城高等学校(福島) 山口 太我 
#せかい部 ×SDGs探究PJ高校生レポーター(貧困をなくそう)


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