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"歴史" 系 note まとめ

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2019年8月の記事一覧

コレクションを見せるとは。【松方コレクション展の感想】

東京上野の西洋美術館で現在開催中の松方コレクション展に行ってきました。 ちなみにボクが展覧会レビューを書くのはこれが初めてです(ドキドキ)。 内容としては、ちょっと西洋美術史や日本近代史の知識があると、より楽しめる展覧会かなと思います。 そして、松方コレクションは西洋美術館を設立する基盤となったコレクションなので、日本の美術館の歴史に興味がある人は勉強になるんじゃないでしょうか。あとで詳しく言いますが、展示の見せ方としても、とても面白かったです。 眼玉は、モネとゴッホ

【まとめ】ディズニーの世界史 25選

2000年代後半から「第2次ディズニー・ルネサンス」ともいわれる商業的成功を収めているディズニーアニメーション。時代とともにテーマやキャラクターもグローバル化している。そんなディズニー映画と世界史との”接点”を紐解いていこう。 〔1〕ムーラン(2020年予定)・実写◆ディズニー初の中国人プリンセス。北魏時代の中国舞台に 老病の父に代わり、娘の木蘭が男装して従軍、異民族を相手に各地を転戦し、自軍を勝利に導いて帰郷するというストーリー。異民族とは北方の遊牧騎馬民族の柔然(じゅ

歌劇の国のゲバラと小林一三の理想

宝塚歌劇のミュージカル『チェ・ゲバラ』には驚かされました。阪急や東宝の創業者であり、筋金入りの自由主義者である小林一三氏の劇団が、よりによって共産主義革命の英雄であるエルネスト・ゲバラを好意的に取り上げたからです。ちなみに女性がゲバラを演じた事には何の違和感もありません。あの轟悠さんですから。 戦前、商工大臣に就任した小林一三は、当時の統制経済体制を強力に推進する革新官僚(岸信介)と対立し、結果的に辞任に追い込まれました。民間企業の活力を重視する彼が、そもそもなぜ民間経営者

東アジアの日本書紀―歴史書の誕生

東アジアの日本書紀―歴史書の誕生(歴史文化ライブラリー 2012/7/1 遠藤慶太 著) 古代国家が歴史を書き始めるとき、最初をどこから始めるかは大きな問題だった事でしょう。日本古代史の根本資料である日本書紀は、生まれた背景は既に切り離され、テキストとして独り立ちしています。本書は、日本書紀を歴史書が誕生した時代に置きなおし、東アジアとの関わりを軸に、書物として成り立つ過程を辿ったものです。東アジア、特に百済史書との切り離しがたい関係は興味深いもの。異文化が混じりあい、列島

影の歴史/ヴィクトル・I・ストイキツァ

「絵画の誕生について知られていることはほとんど何もない」。 古代ローマの博物誌家・大プリニウスが『博物誌』で書いたのを引きながら、『影の歴史』の著者ヴィクトル・I・ストイキツァは、「しかし」といって、こう続ける。 ひとつだけ確かなのは、人間の影の輪郭を初めて線でなぞった時に絵画が誕生したということである。 影。対象物によって光が遮られた部分を示す、ネガとしての図像だ。 「西洋の芸術表象の誕生が「陰画=否定(ネガティヴ)」にあるということは、きわめて重要だ」とストイキツ

支配者が居らずとも球技大会があればー読書メモ:スティーブン・ミズン著『渇きの考古学』

 令和元年の東京の夏。連日暑い日が続き、喉が渇く。  我々人類は毎日水を飲む。丸一日水を飲まないだけでも、私達の体調は大きなダメージを受ける。  日本の都市に暮らしていると、水道の蛇口をひねれば安全に飲める水が「湯水のごとく」流れ出す。この恵まれた環境は長い人類の歴史から見れば驚異的なものといえる。 生きるための水 人類は太古から水を飲み続けてきた。  特に、定住し農耕牧畜を行うようになると、自分が飲む以上の大量の水を、同じ土地で、継続的に確保する必要が生じた。狩猟採集

【まとめ】どこまで変わる!?「新しい世界史」のキーワード100選

 現在、世界史教育が大きく変革されようとしています。  「世界史用語が多すぎる」「もっと大切な語句に絞れないか?」―そんな課題意識から始まった高大連携歴史教育研究会による用語精選の取組みが進られています。 2017年に発表された用語精選のリストから特徴的だなと感じたキーワードをセレクトし、wikipedia記事リンクを付してまとめてみました(もちろんwikipediaですので、詳しくは参考文献等を参考にしてください)。  この案からどれだけの語句が採用されるかは不透明で

グアテマラ山奥の秘境トドスサントスへ

【グアテマラ旅行記 vol.6】 旅をしていると時々、あれは夢だったんじゃないか?と思う場所に出会う。 トドスサントスもそんな場所のひとつ。これまで旅した中で一番、ここ東京から遠い所に存在するような気がしています。 女二人で旅に出るもともとこのTodos Santos Cuchumatán(トドス・サントス・クチュマタン、以下トドスサントス)は地球の歩き方で知ってからずっと「行きたいなぁ」と思っていた村ですが、なにせけっこう遠いので、まぁ行けないよなと半分諦めていました

アンティークコインの世界 〜収集ジャンルの決め方〜

基本的に集めたいもの、興味のある時代、デザインが直感的に気に入ったものを集めれば良いと思う。だが、一般的にコレクションには統一性があったほうが良いとされる。私はメインコレクションを古代ギリシア・ローマコインに置いている。サブコレクションは、ヴィクトリア朝イギリスと同時代に関わりがあった周辺諸国という感じだ。私の場合、拙書『アンティークコインマニアックス』の構想が何となくあったので、歴史の流れのシナリオに沿って収集していた。つまり、ギリシア・ローマコインのはじまりから終わりまで

今日の学び「教皇と皇帝とトヨタ」

最近「超訳 ヨーロッパの歴史(原題 THE SHORTEST HISTORY OF EUROPE)」を読んでいます。 高校で世界史をほとんど学んでいなかったせいか、タメになったと思える知識がたくさん詰め込まれている気がする。 今日はこの本の第6章「教皇と皇帝」を読んだ。 著者がオーストラリア出身の歴史家である上に、西洋史の本であるため日本に馴染み深い話などはほとんど出てくることはないが、この第6章には珍しく日本にまつわる一節があった。 政治に宗教が深く介入したり、宗教

須恵器・土器を愉しむ【『縄文土器をよむ』(町田)、縄文人なら通いたくなる「品揃え」の良さ】

「須恵器・土器を愉しむ」では、個人的関心事の須恵器・土師器を中心に「考古・郷土全般」に関する都内および近郊の展示に関する感想・情報を綴っていきます。施設側の情報発信が少なく「どこに何が展示されているのか分からない」ことも多いので、参考にしていただければ幸いです。  今回は、町田駅から徒歩8〜12分の町田市民文化館ことばらんどで開催中の「縄文土器をよむ 文字のない時代からのメッセージ」です。 ■分かりやすい分類展示による「縄文」全体の俯瞰 1000か所以上の遺跡が確認されてい

世界遺産・仁徳天皇陵へ

世界遺産に登録されたというので、昨年あたりは、「ブラタモリ」やら「歴史ヒストリア」やら、歴史系バラエティにやたらと取りあえげられていた大阪は堺にある「百舌鳥(もず)古墳群」。 小学校から中学校までの歴史教科書で誰もが見ている「面積が世界一広い”お墓”」こと、”仁徳天皇陵”と呼ばれる前方後円墳である。カギ穴みたいな形をした、およそ理由も思いつかない謎の歴史的建造物である。 (男子ならばキン肉マンの第119話ヘルミッショネルズ戦を思い出してほしいもんである そのマグネットパワ

イージーライダー

ワイアット(ピ-ター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は、ドラッグの密輸で大金を得て旅に出る。 ハーレー・ダビットソンに跨ると腕時計を投げ捨てて走り出すワイアット。 西海岸の町から赤土の大地にまっすぐ伸びる道に2台のバイクが遠ざかっていく。 乾いた荒野を走り、集落を抜ける。 前後しなから疾走するハーレーと「Born to Be Wild」が見事にハマる。しびれる。 違和感は、ワイアットの表情から自由への羨望が読み取れないこと。 一応の目的地は謝肉祭があるルイジアナ州南

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江戸時代の経済入門#17(不定期更新中)