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"歴史" 系 note まとめ

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#推薦図書

『サピエンス全史(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)

【内容】 ホモ・サピエンスの過去、現在、未来を俯瞰する世界的なベストセラーの下巻。 ※ネタバレ(?)します。 【感想】 人類と何か? 神とは何なのか? 死は克服されるのか? チラリと頭をよぎることはあっても、普段は大きな話過ぎて、基本的にスルーしがちな話題を、凄く頭の良い学者が今わかっている最新の研究を絡めて語ったらどうなるのか? そしたら、やたらに面白く、今まで見えていなかった世界のありようが見えてきた… そんな本になっていました。 下巻は、上巻ほどのインパクトは

読書感想 『世界は五反田から始まった』  「主観と客観と歴史」

 タイトルを知って、なんとなく敬遠をしてしまっていた。  それは、昔、こうした大きな言葉を掲げてから、内容は軽くする、というような手法が多くとられていたからで、それで、「面白さ」を生じさせるような文章を読めたのは、もしかしたら、バブルという好景気の頃までだったのかもしれない。  そんなような個人的で勝手な感想が、かなり愚かな思い込みだったことは、この作品を読み始めて、すぐに気がついた。適度な柔らかさもあったのだけど、自分の主観をつづることで、それは、誰もが思い当たるような

索引 ~の歴史|馬場紀衣の読書の森 vol.30

こういう本を、ずっと待っていた気がする。 13世紀の写本時代から今日の電子書籍まで連なる、長い、長い情報処理の歴史。本の索引に欠かせないページ番号の登場、アルファベットの配列はどのように考案されたか。時代と共に増えつづける知識と人びとはどのように付き合ってきたのか。分厚い本なのに、どんどんページをめくる手が進み、あっという間に読み終えてしまった。 「索引」を書物の中の語句や事項を捜しだすための手引にすぎないと、あるいは本書をそれについて書かれた専門書だと思っているのなら、

中国料理が喚起したアジア各国のナショナリズムーミニ読書感想「中国料理の世界史」(岩間一弘さん)

研究者岩間一弘さんの「中国料理の世界史」(慶應義塾大学出版会)が興味深かった。中国料理を立脚点とし、それがアジアや欧米各国にどう波及し、その国の歴史にどう関わったかを詳述する。いわゆる「テーマ史」かと思いきや、各国のナショナリズムとの絡み合いを深く追求する点でユニークだった。 中国料理は、アジア各国のナショナリズムを喚起するツールとして貢献した。このことを学べたのが大きい。 たとえば、シンガポールやマレーシアは第二次世界大戦後、独立したり本格的に国としての歩みを始めた。国

【第66回】GHQは日本人を「洗脳」したのか?

「ウォー・ギルト・プログラム」とは何か?1945年9月2日、ポツダム宣言を受諾した日本は、戦艦ミズーリ艦上で「降伏文書」に調印した。「連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)」は、日本政府に対して、翌日の9月3日午前10時に「三布告」を公表すると通告した。 この「三布告」とは、「第1号:立法・行政・司法の三権をGHQの管理下に置き、日本の公用語を英語とする」「第2号:GHQの布告に違反する者は軍事裁判にかける」「第3号:日本円を廃し軍票(B円)を日本の法定通貨とする」という内

ナチスの聖典は絶版にすべきか|藤原辰史さんが選ぶ「絶版本」

 絶版するのがもったいない、今すぐにでも復刊してほしいという本もあれば、絶版でよかった、絶版が当然だと思う本もある。今から80年前に日本で刊行された『血と土』も、そんな本の一つである。  「血と土 Blut und Boden」は、ナチスの根幹思想、略して「ブルーボ」とも呼ばれた。ドイツの農村でこそ、健康な民族の血が育成されることを訴える農本主義的スローガンだ。この「血と土」をもとに、ナチスは農民帝国の復興を謳い、農民票を獲得して政権の座を射止めた。この言葉の組み合わせのど

対話とはこうすることなんだーミニ読書感想「世界史の考え方」(小川幸司さん・成田龍一さん編)

今春から高校で始まった新科目「歴史総合」への向き合い方をまとめた「世界史の考え方」(岩波新書)が面白かった。難しいけど面白い。歴史研究、歴史授業の専門家である小川幸司さんと成田龍一さんの編著。お二人が各回ゲストを招き語らう対話形式で、「対話というのはこうやってやるんだ」というのを実践して見せてくれる。読む対話だった。 歴史総合は、近代から現代にかけての世界史と日本史を一体的に学ぶ新科目だ。この二つの歴史を架橋することは、言うは易し行うは難し。本書は、そもそも世界史と日本史を

【読書感想文】地形と歴史から探る福岡

読書感想文を書いてみる第3弾です。 今回もあらすじはなぞりません。ネタバレ回避していこうと思います。 感想サマリKindleで買っても良かったかも。3時間で読破! 福岡に移住した私ですが、歴史が結構好きだったので福岡の歴史なんて結構わかっていたつもりでした。 でも、この本は縄文から近現代までを凄くラフにまとめてくれているので、とてもわかり易くかつ、自分の抜けている時代や歴史があるということをわからせてくれて、かつそれを補完してくれる本でした。 福岡移住者は地元理解のた

胎中千鶴『あなたとともに知る台湾―近現代の歴史と社会―』(歴史総合パートナーズ⑥)清水書院(2019年)

「高等学校の新科目『歴史総合』に向けた新シリーズ!」ということなので高校生向けなんですが、大人の台湾入門書としてもバッチリの優れものです。台湾については、これまで習ってこなかった方が多いでしょうからね。 ところで「歴史総合」ってなに?とネット検索してみたら、こんなページに行きあたりました。 日本学術会議さん、ちゃんとお仕事されてます。(ホントだ) 「本書は、日本と台湾という『ふたり』の関係に力点を置きながら、台湾の近現代史を概観」したものです。台湾についてすべてを網羅し

見ることも触れることもできない世界へ -広井良典著『無と意識の人類史』を読む

広井良典氏の『無と意識の人類史』を読む。 人類の歴史は、人間たちの「意識」のあり方の歴史でもある。 広井氏は意識について、それが「"脳が見る共同の夢"」としての「現実」を作り出すものであると書かれている(『無と意識の人類史』p.24)。 これはユヴァル・ノア・ハラリ氏が『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』で論じた「虚構の力」にも通じるところがある。 "脳が見る共同の夢"は「現実」であり、「有」の世界、「ある」ものたちの世界である。それに対して「無」とは、意識が、自ら作

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『黄熱の歴史』たいへんおもしろかった

黄熱病について調べていたらこんな本に出会ったのである。 序文をジョルジュ・カンギレムが書いていることからもわかるように、フーコーのように臨床医学のエピステーメーのパラダイム・シフトを語るものである。 さすがみすず書房って感じである。 閑話休題。 黄熱病とはどんな病気か。昨日紹介した『ビジュアル パンデミック・マップ』から引用する。 1900年、米軍幅な基地の軍医だった34歳のラジアーは、黄熱の原因を探るために節リルされた新たな委員会に加わることになった。1898年に

え、世界史をマスターできる本があるって本当ですか!?

「これから新しく勉強するとしたら歴史をやってみたい。でも難しそう・・・」 「世界史のこと何もわからないから勉強してみたいけど、正直どの本がいいのかもわからない・・・」 これらは私の周りの人たちが実際に言っていた言葉。 意外にも、世界史に興味があるという人は多いんです! しかし、高校の世界史の授業を受けたことがある人ならわかると思いますが、世界史の範囲は地理的にも時間的にもかなり膨大。 「人物名もカタカナばかりでみんな同じような名前だし全然わからない・・・」という人も多い

真空地帯のイメージ “今”と“過去”をつなぐ世界史のまとめ⑤ 前1200年〜前800年

“過去”と比べて“今” の世界ですっかり存在感の薄れてしまった人々がいる。それは騎馬遊牧民だ。馬にまたがり、草原を疾駆する。簡単なようで難しい技術である。騎馬技術を編み出した遊牧民が、すでに北緯30度付近で発達していた文明と双璧をなしていく。その黎明期にあたるのが、今回の前1200〜前800年の時代である。 File:20110812 Nomad Horse Racing Zhanzong Tibet China 3.jpg その場所はユーラシア大陸の乾燥草原地帯(乾燥草

信じられる「未来」についての虚構をどう描くか? ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』が問いかけるもの

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史』。上下二巻にわたり人類の歴史を一掴みにしようというおもしろい本である。 様々な人々の無数の経験が織りなす複雑な人類の歴史を、わずか二冊の本で一掴みにする。そのための方法としてハラリ氏が選んだのが「虚構の力」という概念を軸に設定し、その軸の周囲に人類史を記述していくというやり方である。 だからこそ7万年前ほど前の人類に起こったコトバの力の獲得、虚構を音声や物に置き換えて他者と共有する力の獲得から、『サピエンス全史』の記

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