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【ライブラリ】notes

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#本

#41 『本屋』と『本業』

2024年3月某日 息つく暇もない年度末、体調などを崩さないように乗り切りたいものである。忙しない状況だと、趣味である読書の時間が減ってしまい、本の手触りが恋しくなる。 … さて、全国的に書店が減少していることは周知の事実であるが、その背景にある要因としては「出版不況」が挙げられることが多い。すなわち、「紙の本が売れないから、その小売店も厳しい」という単純な話である。一方、本が読まれていないかと言われるとそうではない。実際、ビジネス賢者のみなさんは揃って読書習慣の重要性

本が売れない時代に50万部ベストセラー! スゴ腕PR黒田さんに聞いてみた「どうしたら本は売れますか?」

世の中の書籍編集者がいちばん好きな言葉。それは間違いなく「重版」でしょう。私もそうです。 けれど、手間暇いとわず、思いを込めて、苦労して作った1冊がなかなか重版しない。売れない。ミリオンとは言わないから、10万部、5万部、いやせめて3万部売れてくれたら。私には編集能力が決定的に欠けているのでは……。 そんなモヤモヤと諦めを抱えながら2021年に出した1冊の本。それがなんと、突如、半年足らずで12万部を超えるヒットとなったのです。しかも社内では「初版4000部なら……」と辛

編集部員が選ぶ、年末年始におすすめしたい本。

こんにちは。本日(2023年12月22日)はいつもゲラに埋もれた世界の編集部ですが編集部員一同で大掃除をしました。こころなしかいつもより爽やかな空気が漂っているような……? イースト・プレスは神保町のとあるビルの7階と8階にあるのですが社員の中で密かに「9階」(階段の踊り場なんですけれどね……)と呼ばれている、お昼休みなどに外の空気を吸うスペースがあるのです。そんな9階で編集部の入社3年目のナカノと入社1年目のカナザワが年末年始におすすめしたい本を紹介しあっていたので皆さ

すぐそこにある荒野。そして34冊の冒険書

探検や冒険とはなんだろうか。 思い浮かべるのは、遠く隔絶された地に向かい、身体的能力を限界まで駆使し、ある地点から別の地点への踏破に挑んだり、山の頂きに立ったりしながら、何かを発見していくことではないだろうか。しかし、私はある時から、冒険というものは、時として自分たちのすぐそばにあると考えるようになった。 去年、河出書房新社のIさんから突然メールがあり、今後「世界探検全集」というものを出します、世界の名著が続々復刊します、ひいては、そのうちの一冊に対し、本の前段「ナビゲーシ

旅とブンガク|太宰治に呼ばれて東京・三鷹と青森・津軽へ

これを「呼ばれた」と言わずしてなんというのだろう。 2022年、それぞれ別の目的で行ったところがたまたま、太宰治ゆかりの場所だった。太宰治が晩年長く暮らした町・三鷹と、太宰治が生まれた土地・津軽。 太宰治に影響されたイタすぎる中高生時代文学好きあるあるだと思うのだが、10代の頃は太宰の作品にけっこう影響を受けていた。国語の授業中に教科書じゃなくて、こっそり太宰の小説を読むのがかっこいいと思っていたイタすぎる中高生時代。読書感想文ではじめて県で表彰されたのも太宰治の『斜陽』

本の目録をとるという仕事

北海道大学附属図書館(図書受入・目録担当) 森菜摘 図書館の本を読みたいとき、借りたいとき、皆さんはどのように探しますか? 書架を眺めて、ふと気になった本を手に取ることもあるでしょうし、ホームページ上の蔵書目録システムで事前に目当ての本を調べておくこともあると思います。 図書館の本の背表紙には、請求記号と呼ばれる数字やアルファベットが書かれたラベルが貼ってあります。本は、この請求記号順に並んでいます。 北大図書館の請求記号は3段に分かれていますが、一番上の段

原始美術ってなに? オーリニャック、ラスコー、アルタミラなどの洞窟絵画と造形の特徴

と、まぁいきなり酔っ払ってみましたが、私は真剣に「西洋美術って難しく書かれすぎじゃねぇか」と思っとりますよ。なんかもう「大谷翔平ばりにワインドアップで振りかぶって書きました!」みたいなね。重い。もうどの書籍も官僚がしゃべっているような文章で、イラストたっぷりのかわいい本でも、ちょっと小難しく見えちゃいますよね。ちいかわの横で、岸田首相がしゃべってんですよね。 この連載ではもっとおしゃべりするような感覚で、でもしっかり内容がある感じでやっていきます。「大学の講義」というよりは

人生に迷ってるなら、とりあえず図書館で働いてみない?

人生に迷うあなたに必要なのは、悩むことではありません。本当に必要なのは、徹底的な行動と新しい視点です。図書館勤務は、そのどちらもを手に入れられる、まさに悩めるあなたにピッタリの仕事なのです。 今回は、人生に迷っている人に図書館勤務をオススメする理由を、2つに分けてご紹介します。 1. 普段出会わないような情報に出会える図書館職員は、とにかくたくさん書庫の中を歩きます。利用者から返却された本や新しく購入した本・雑誌を並べたり、他館に貸し出すための本を取りに行ったり……。普段

迫真の入門書~古田徹也『はじめてのウィトゲンシュタイン』

孤高の天才として知られる哲学者の人生と難解な思想を一望のもとにはるばる見渡し、高くそびえる「入門」の壁をひょいと超えさせてくれるいい本が出た。 最近立て続けにウィトゲンシュタイン関連書を出版している気鋭の哲学研究者・書き手による、300pを超える迫真の入門書である。 構成や文体は平明で簡潔、どこまでも柔らかい語り口で前期思想からの重要タームと論理の説明をひとつひとつ丁寧に積み上げていく。それでいて、ウィトゲンシュタインが影響を受けた周辺思想家の系譜もしっかりと辿りながら、

言葉の網目で個をつつむ|荒井裕樹|第15回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞スピーチ【全文公開】

 2022年4月22日(金)、神田神保町の出版クラブホールにて、第15回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」の表彰式と記念講演会がおこなわれました。本賞は、個別の「作品」ではなく「人」そのものに、過去の「業績」ではなく今後の「可能性」に対して与えられるものです。栄えある第15回の受賞者は、文学者の荒井裕樹さん。柏書房からは『まとまらない言葉を生きる』を出版いただいています。 ▼受賞理由はこちら▼  コロナ下での開催であったため、限られた関係者のみを集めての会

今月読んで面白かった本【2022年4月】

今月からカジノでポーカーテーブルのオーガナイズを始めたので、一日の大半をポーカーで過ごす生活に舞い戻ってしまったため、前月よりも読了はグンと減った。けれど、コツコツと読んでいる。 THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す(アダム・グラント)アダム・グラントの新刊。テーマは「考え直すこと(再考)」について。メッセージングとして、シンプルにアンラーニングを促すことのみならず、人間の内に潜む「牧師」「検察官」「政治家」のモードを峻別・解説しながら、より善く生きるため

新書を読んでみよう!

こんにちは、Yukiです。 新型コロナウイルスの感染が拡大してから早くも2年が経ちました。その間、様々なことが起きましたが、その1つが独学に対する注目が高まったことだと思います。 そのきっかけは、読書猿氏の『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が発売されたことではないでしょうか。 現在では20万部を超え、電子版のみですが公式副読本も発売されています。この本の発売をきっかけに独学への注目が高まったことで、岩波書店は独学フェアを開催しました。

「死」について真正面から考えてみたいときに読む五冊の本

「死」について思いをめぐらせることは、決して悪いことではない。 この世界において、「絶対」と言い切れることはほとんどない。唯一あるとするなら、人は誰しも最後は死ぬ、そのことだけは絶対だろう。 「今日より若い日はない」との至言に集約されるように、ぼくらは産まれ落ちた瞬間から確実に一歩づつ、死に向かっている。そのことを誰も否定できない。砂時計が落ち切る前に、ぼくらは生になんらかの意味を見出し、一度きりの人生をまっとうしなければならない。 かの有名な、スティーブ・ジョブズがス

2021年に読んだ本からオススメの10冊

今年のなかばから、再び読書への意欲が湧いて、家にいる間はもりもりと本を読んだ。じつは、一年半くらい活字が読めない状態に陥っていたから、またこうして読書の悦びを取り戻せたことは、個人的には大きな回復であった。 以前までは、年の瀬になると、毎年決まってこうした年間の読書まとめnoteを書いていたので、今年もメモ的に残しておきたい。 ✳︎ 限界から始まる(上野千鶴子、鈴木涼美)読書活動を再開し、一発目に手を取ったのがこの一冊。GOの三浦さんが勧めてくださった(基本的にぼくは、