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【図解】これならわかる! ゼロからはじめる世界史のまとめ㉖ 1979年~現在の世界


◆ソ連が崩壊する

―この時代には、ソ連がすすめてきた社会主義の国づくりが崩壊し、ソ連グループ自体も「解散」を迎える(注:ソ連の解体)。


じゃあ、アメリカの「一人勝ち」ですか?

―誰もが一瞬はそう思った。

 たしかにアメリカは世界中に軍事力を持っているしね。


日本にも米軍基地がありますよね?


―そうだね。
 それに大西洋のど真ん中にも、インド洋のど真ん中にも、太平洋のど真ん中にも米軍基地は存在する。

 だけど、ソ連型の社会主義が失敗して、地球上「どこでも自由にビジネス」ができる時代がやってきたことから、あらたに経済的に力を付ける国(新興国)はアメリカのみならず世界中にボコ ボコと現れるようになったんだ。



1. 自由なビジネスのグローバル化

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「どこでも自由にビジネスができる」って、いいことじゃないんですか?

―世界のすべての地域がビジネスの対象になるってことは、いろんな面で新たな問題を生むことにもなったんだよ。

 そもそも「自由なビジネス」を進めるためのルールって誰が決めるんだろう?


みんなで話し合って決めるんじゃないですか?

―うーん、そうはいってもいろんな立場の国があるからね。

 100年前にすでに産業革命を達成したイギリスと、長い間植民地支配を受けてきたアフリカの国とでは、「スタートライン」がぜんぜん違うでしょ。

 それにこの時期の初めに「自由なビジネス」を導入した中華人民共和国(中国)やロシアも、「アメリカがルールを決めるのはずるい」と抗議するようになる。


◆中華人民共和国に「自由なビジネス」が導入される

あれ? 中国も社会主義をやめたんですか?

―社会主義の「看板」を降ろしたわけじゃないんだけど、部分的に「自由なビジネス(注:市場経済)のしくみ」を導入することにしたんだよ。共産主義と自由なビジネスは共存可能だという理屈だ(注:社会主義市場経済)。

 発展するにはやっぱり「競争」が必要。

 先に発展したお金持ちが、社会全体に富をもたらしてくれるはず(注:先富論)。
 表舞台には登場しなかった大物政治家(注:鄧小平(とうしょうへい))がこの政策を推進して以降、中国ではあちらこちらに未来感あふれる大都市が生まれ始める。


中国の経済が発展しているのはなんとなくわかりますけど、そんなに大きな会社ってあるんですか?

―とくに最近では、大量のデータを元にして商品の売り買い、輸送、お金の支払い、データ処理などを一挙に手掛ける大企業(注:アリババ)が注目されている。



◆中華人民共和国の「一帯一路」構想

 経済が発展して大国化した中華人民共和国の指導者(注:習近平)は、「ユーラシア大陸の経済をまとめようとする政策」を打ち出している(注:一帯一路)。




 近隣諸国はその動きを警戒しつつも、ヨーロッパ諸国やロシアも含めたユーラシアが「ひとつの経済圏」を作っていく動きは、現実味を帯びてきている。



そんなことしたら、アメリカ合衆国は黙っちゃいない感じですね。

―「自由にビジネスができる」チャンスを失ってしまうからね。

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 だから太平洋を取り囲む一帯との連携(注:環太平洋経済連携協定(TPP)、ただし現政権は国内を優先して脱退)や、インド洋周辺の諸国を取り込もう(注:自由で開かれたインド太平洋戦略)と必死な状況だ。

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2. アジアの台頭とアフリカの成長


なんだか、いくつもの「大国」が覇権を争う時代に戻っているような気がします。特にアジアの力が回復していますね。

―1760年頃まではユーラシア大陸のGDPは「アジア」がその多くを占めていたんだ。
 でも、ヨーロッパで産業革命が起きると、「アジア」は転落。
 植民地になったり勢力圏に入ったりと憂き目を見た。


古代文明も、ほとんどアジアとかアフリカのエジプトでしたよね。

―中国、インド、メソポタミアは全部「アジア」だよね。

 その後栄えた国々も、ユーラシア大陸の「アジア」側の国家だったでしょ。遊牧民の力が強かった(⇒1200年~1500年の世界)こともあって、海への進出欲が高まり、「大交易時代」とも呼ばれる海の貿易が盛んな時代を迎えていたところに、ヨーロッパが「おこぼれ」をもらうために食い込んできたんだ。


それが「大航海時代」なんですよね。

―そうそう。

 アジアの「大交易時代」のおこぼれをもらおうと、ヨーロッパ人たちが貿易するためにやってきた時代を「大航海時代」というわけ。


ぜんぜん「大」航海じゃない(笑)

―ヨーロッパが経済的・軍事的にほんとうに強くなっていくのは産業革命が起こる以降のことで、やがて領土支配を進めるようにもなっていった。

 その果てに起きたのが、第一次世界大戦と第二次世界大戦、そして核戦争の恐怖と背中合わせの約40年間の冷戦だった。


そしていよいよ「アジア」の時代が来るわけですか。

―アジアとヨーロッパは歴史的に互いの交流が密だから、まったく水と油というわけでもない。

 だけれどアフリカとユーラシアの差は、文化的に見ても結構ある。「アフリカ関係のもの」に憧れを持つ日本人が多いのは、そうしたギャップゆえにエキゾチックな思いが生まれやすいからだろう。

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ただ、こうしてみてみるとユーラシア大陸には、中国以外に「ロシア」「インド」「イラン」といった歴史と個性ある国々がありますよね。

―そうそう。だから「中国がユーラシアをまとめようとしている」といっても、ユーラシアの中にもさまざまなプレーヤーがいるわけだ。


◆中央アジアが「21世紀のグレートゲーム」のターゲットに

―特に各国の注目が集まっているのは「中央アジア」。

カザフスタンとかがあるところですね。

―昔(⇒1870年~1920年の世界)にも、ロシアとイギリスとの間で取り合いになったことのある地域だよね(注:グレート・ゲーム)。

 この地域にはイスラーム教徒が大勢いるから、「大国」が介入する現在の状況に対しては、世界中のイスラーム教徒たちの関心も高いんだ。



◆イスラーム教徒の連帯

どうしてイスラーム教徒の関心が高いんですか?

―現在イスラーム教徒はさまざまな国に分かれて住んでいるけど、そもそも教えの根本には「イスラーム教徒は一つの”家”に暮らすべきだ(注:ダール=アル=イスラーム)」という考えがある。

 しだいに「イスラームの家」は拡大していって、大きな国に発展したこともあった(注:1200年~1500年の期間のできたオスマン帝国)けれど、ヨーロッパの進出を受けて今じゃバラバラになってしまったというわけだ。

 もちろん、ヨーロッパの進出以前に教義の違いからバラバラになった事情(注:スンナ派からシーア派が分かれた)もあるんだけれど、ヨーロッパ諸国による支配を受けた歴史や、資源目当てに政治に介入するアメリカ合衆国への反発は、この時期を通してどんどん高まっていった。


イスラーム教徒の分布しているところって、たしかにだいたいヨーロッパ諸国の支配を受けていましたね。

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色の濃いところがイスラーム教徒の多いところ


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黒>紫>青>水色の順に一人あたりGDPが低い。イスラーム教徒の分布するところは軒並み一人あたりGDPが低いのだ(サウジアラビアとアラブ首長国連邦は産油国なので例外)


―そうだね。だからイスラーム教徒の国 = 貧しい = 危険という考えになりがちだ。
 歴史的な事情を踏まえ、背景にある「貧しさ」に焦点を当てなければ根本的な解決には至らないだろう。

 それに「国が国境線に基づいて外部の人をシャットアウト&差別待遇するシステム」は19世紀のヨーロッパで生まれた特殊な仕組みにすぎない(注:国民国家システム)。
 国境線を存続させるとしたら、どのような形で国を成り立たせていくのか―あらためて人間の目線で考え直していく必要に迫られている。

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3.  21世紀のイノベーションと新たな「空間」

ところで、インターネットっていつ登場したんですか?

―ソ連が崩壊する前から技術的にはあった(前の時期にあたる1953~1979年の期間、アメリカで軍事目的のために発展したことがきっかけ)んだけれど、ソ連が崩壊して数年後には家庭でもインターネットを利用することが可能になった。

初めは画像1枚送るのにもとっても時間がかかったんだけれど、通信速度がどんどん上がり、今じゃ動画もサクサク見れるようになった。


最近では、次世代の通信技術(注:ファイブジー(5G))に「自国の会社の技術」を採用したいアメリカと中国が、たがいに激しく火花を散らすまで発展しているよ。



◆サイバー空間の拡大

なんだか現実の空間とは”別の”空間に、どんどん競争の場が移っている感じですね。


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―その通り。

 これまで大国は、地球上にある土地や海をめぐって争っていたわけだけれど、そこにもう一つ「サイバー空間」がプラスされていくのもこの時代の特色だ。


インターネットの登場で、「自由なビジネス」のための取引も速くなりそうですね。

―「国の垣根(かきね)を超えるお金の取引」も、カンタンにリアルタイムでできるようになるよね(注:電子取引)。特殊な技術(注:ブロックチェーン)を用いて、お金自体を「データ化」して取引できるしくみづくりもすすんでいる。

 陸、海、空と活動範囲を広げて行った人類は、ついに「目には見えない空間」(注:サイバー空間)にまで活躍の場を広げていったわけだ。



◆国家のサイバー空間への進出が、国民の監視につながる

現実の空間とは違って、サイバー空間なら「自由」になんでもできそうですね!

―初期のころはそんなふうに楽観的に考える人も多かったんだけどね。

 「SNSのおかげでみんなが責任を持って議論をする環境が整えられる」
 「匿名で不正を告発することができる」
 「世の中を変えようとする人たちがネットを通じつながることができる」

 しかし、インターネットが人々を結びつける力の大きさに気づいた各国政府は、次第に「ほっとけない」と考えるようになった。

 国によっては、特定のキーワードが検索結果に現れないようにしたり、条件が揃えば個人情報を収集したりしているところもあるんだ。


サイバー空間をめぐる、「国と人々の争い」っていう感じですね。

―現状を一気に打破しようと、国に対して暴力的な行為をする人たち(注:テロリスト)を管理しようという名目で、サイバー空間に対する規制はどんどん強まっているね。

 あちこちに設置された監視カメラと組み合わせて、”安全””安心”のために国民の行動をコントロールするシステム技術も、どんどん発達している。



「誰がテロリストか」を決めるのって国ですから、なんだか怖いですね。

―IT技術と権力が結び付いた先には「スーパー監視国家」が待ち受けているのかもしれない。



 また、「人間の代わりに、人間のように考え人間のように動いてくれる機械(注:ロボット)」の開発も猛スピードで進んでいるね。
 人間と人間じゃないものの境界線はますます曖昧になりつつある。

 空を自由に移動することができる飛行機ロボット(注:ドローン)もどんどん軽量化が進んでいる。便利な反面、安全やプライバシーの観点からすれば手放しに称賛することのできない状況だろう(注意:slaughterbots)。



 人間の体の設計図(注:DNA)に関する研究もすすみ、体のパーツの取り替えや設計図のデザインもできるようになるかもしれない。そうすると、何も手を加えられていない「人間以上の存在」が生まれないとも限らない。


◆テクノロジーとの付き合い方


今まで考えられなかったようなことが、次々に実現可能になるかもしれないんですね。

―「テクノロジーの進歩を加速させれば現状のさまざまな問題が一気に解決される!」という風潮もある(注:加速主義)けれど、その背後には「強い者=富める者が生き残るべきだ」という思想がともないやすい面もある(注:新反動主義(neoreactionism))。
(かつて1920年代のイタリアで流行った「未来派」運動とよく似た思想だ(これは後にファシズムに受け入れられていくことになる))。


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4.  地域を超えたまとまりと、グローバル化のトリレンマ


ところで、国と国とのやりとりが活発になると、国ごとにルールが違うと面倒ではないでしょうか?

―たしかに世界をまたにかけてお金もうけをするには、国ごとにルールが違うとやりにくいよね。

 でも、国別に決まっているルールをいきなり変えるのはさすがに難しい。また、ある国では「普通」とされているルールを他国に押し付けても、うまくいかないこともあるね。

 だから、まずは地域ごとにグループをつくってまとまり」をつくろうとする動きも活発になる。
 ヨーロッパ東南アジア東南アジア+東アジア南アジア西アジアの石油産出国ユーラシア大陸太平洋の島々北アメリカ南アメリカなどなど。

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でも、政治家は今までどおり各国で選ばれるわけですよね?

―「国を超えた連邦国家」のようなものが出来ない限りはそうだね。

 だから、政治家は自分の国に住んでいる人のことを考えて動かないと、自分に投票してもらえなくなってしまうよね。
 でも自分の国に住んでいる人っていっても、国をまたいで活動しているような人も一部存在する。彼らはその資金力から、政治家に対する影響力も大きい。

 だから政治家は、国民向けには「人気取り」の政策をアピールし、政治家になったらなったで国境を超えてビジネスを展開するお金持ちの喜ぶような政策をとりがちだ。



人気をとるためにどんな政策を打ち出すんでしょうか?

―国民をまとめるためには「共通の敵」を設定するのが一番カンタンだ。
 ターゲットになりやすいのは、外国人だね。



 この時代になると競争が世界規模になるから、より安い製品をつくるには給料を安くするしかない。だから先進国は、給料が安くても働いてくれる外国から来た人たちを雇いたい。


 でも、そうなるといろんな文化を持つ人が増え、不安に感じる人も増える。


 政治家はその心理を「票集め」に利用しがちだ。
 誰もが片手でインターネットができる時代が訪れると、政治家は自分に都合のいい情報を届けようと必死になる。

 「受け手」の側としても、流れる情報の量が多すぎて一体何が正しいか」判断できなくなってしまいがちだ
 そうなると、シンプルなキーワードを掲げる候補者に票が集まりやすくなる(注:ワン・イシュー政党)。




なんだかどんどん複雑になってきていますね。難しくて説明がよくわかりません。

―難しくてごめんなさい。

 でも話の流れからすると、あんまりシンプルにはできないね(笑)
 「1分でわかる」とか「簡単なストーリー」に落とし込むのは、ここではやめておこうと思います(ややこしいものは、できる限りややこしいままに)。


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 さて、世界規模のお金の自由な移動が「解禁」されたこともあり、今まで社会主義をとっていた国の中にも、表面上は社会主義の「看板」を付けたまま、お金もうけを許可する国も増えていく。

 その代表格は中国だ(注:改革開放政策)。

 お金持ちは、さらにお金持ちに。
 貧しい人は、さらに貧しい人に。
 この流れがどんどん進んでいると指摘する研究者もいるよ。

今まで貧しかった国には変化はありませんか?

―アフリカやアジア、南アメリカといった地域のことだよね。
 こうした地域の国々は、せっかく植民地から独立したのだけど、国の運営がうまくいかない国が多い。


どうしてですか?

―植民地時代の「親分」であるヨーロッパの国々や、ソ連とかアメリカ合衆国との関係から抜けきれていないんだ。

 「お金がないなら貸してやる。だから資源をよこせ

 先進国は植民地を失ってからも、植民地支配の「延長戦」を続けようとしたんだ。

これではいつまでたっても自立できやしない。


なんだかひとつの国だけでは解決できなさそうな問題ですね。

―だよね。
 だからこそ、国の「損得」を超えて動くことのできる組織(注:NGO)の大切さが、認識されはじめているよ。


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5.  新しい世界へ


世界史を古い時代からずーっと見て来ると、現在起きている変化って、けっこう大きなインパクトのように思えます。

―農業をベースにした都市文明が生まれたとき(前3500年~前2000年)、

 ユーラシア大陸の経済が一体化していったとき(1200年~1500年)、

 ヨーロッパ人がアメリカ大陸に進出していったとき(1500年~1650年)、

 産業革命が起こったとき(1760年~1815年)、

 相手の民族が絶滅するまで戦争が続けられ、しまいに核兵器が使用されてしまいには60,000,000万人の命が奪われたとき(1929年~1945年)など、

 節目節目にターニングポイントがあったと思うけど、

 やはり現在われわれが経験している変化は、人類がこれまで経験したことのないくらい大きなインパクトと言えそうだね。


 人間らしい生き方、経済のあり方、価値に対する考え、人との結びつき、わかりあえない人に対する想像力、自然環境との接し方...。

 新しい世界を切り開くために必要な「答えのない」課題は山積みだ。


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 なお、最近では民間の会社も含め宇宙への進出が盛んになっている。
 来たるべき次の時代は、人類が「宇宙空間」にいよいよ本格的に進出する時代となるのは間違いない。


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―それでは順番に各地域を眺めていこう。(続く






このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊