近畿地方の石造物⑳:無量寺五輪塔

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名称:無量寺五輪塔

伝承など:伊行氏の作

所在地:奈良県生駒市壱分町 無量寺


近鉄生駒線の一分駅にほど近い無量寺には、極めて詳細に造立趣旨を刻んだ珍しい五輪塔がある。

鎌倉時代後期の伊派の石工である伊行氏の作であり、地輪の四面に奈良時代の僧・行基への追慕を記してあり、嘉元二年銘もある。

火輪と空風輪は後補で、当初のものは水輪と地輪しか残っていないが、造立の年や造立の趣旨、さらには石工の名前までがはっきりとわかる貴重な事例である。

なお、この五輪塔は同じ生駒市の竹林寺にあったものと考えられ、後年無量寺に移されたようである。

生駒市の竹林寺は奈良時代に行基が開いたと伝承される古刹で、境内には行基の墓と言われる墳丘や、鎌倉時代の真言律宗の僧侶で同寺で修行した忍性の分骨墓などもある(元来あった忍性の墓の五輪塔は、現在石塔の大半は失われ、発掘調査の結果骨蔵器が発掘され、その後で建てられた新しい五輪塔が現在の忍性の墓である)。

竹林寺にも、鎌倉時代末期の五輪塔が二基あり、いづれも忍性ゆかりの石塔であろうか。

一基(一枚目)は空風輪が欠損し、地輪も著しく破損しているが鎌倉時代の作であり、もう一基(二枚目)は完形(火輪は別物か?)であるがこちらの方が時期的にはやや下ると思われる。

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また同じ生駒市藤尾町の石仏寺には、同じ伊行氏の作で鎌倉時代後期永仁二年銘を持つ阿弥陀三尊石仏がある。

この石仏は同寺の本尊で秘仏であるが、境内には他にも石造物が多くあり、中でも本堂の向かって右側に建つ五輪塔は、二メートルを超す大型塔で目を引く。

五輪塔が鎌倉時代末期から南北朝時代頃の作と思われ、完形の端正な五輪塔である。

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