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旧公衆衛生院研究

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内田ゴシック建築の私的な解釈
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妄想に終わる

妄想に終わる

内田祥哉先生がお亡くなりになられた。享年96歳。
旧公衆衛生院を設計された内田祥三先生の二男で、親子二代の建築家である。
個人的に接点はなかったが、存命中に旧公衆衛生院の空間を通して、ご自身と父親の建築思想、解釈を伺ってみたいと妄想していた。(たわけた妄想)
幼少期から住われていた麻布の家は父親の代名詞でもある"内田ゴシック"でデザインされた洋館だったが、ご自身が設計された杉並の家は、正反対と言っ

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2度目の秋冬

2度目の秋冬

旧公衆衛生院の建物研究
隔週末の月2〜3日ではあるが、一年半が経過した
あちこちの建物に関わってきたが
こんなに長く同じ空間で過ごすことは初めてである
探究と安心
最初から同じ意識が持続していることに感動する
そもそも学校建築として設計されているからなのだろうか
上へ上へと登っていくような
これが内田祥三マジックなのかもしれない
報告書には記されていないが
技術を超えた何か、、、気持ち悪さがない(

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答え合わせをしたくなる

答え合わせをしたくなる

思いもよらないつながりに遭遇
独り言のように旧公衆衛生院の研究のことをSNSに上げていると、ある方から「懐かしく見ています」と伝えられる
(時節柄、ある方としかお伝えできない)
えっ?うわー!意外な言葉に感激
一年余り、勤務されていたとのこと
復原の様子を話しながら、我が家へお誘いするような気分になる
「行ってみたいですねー」
コロナ禍が収束して落ち着いてきたら、是非おいでいただきたい
一緒に歩い

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フィールドワーク

フィールドワーク

スケッチブックと鉛筆を手に
旧公衆衛生院を半日かけて歩く
気づいたデザインを描いてみる
最初、なかなか手が動かなかった
どのよう描けばよいのか悩んでいるようだった
3つのシーンを観たくらいから、自然に手が動き始める
線に積極性が出てくる
写真を撮るだけでは気づきにくい
ディテールの一つひとつに意味がある
上手く描くことが目的ではない
しっかりと考えること
そして、手を動かすこと
PCとは違う脳の動

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週末研究 年度終了

週末研究 年度終了

旧公衆衛生院 週末研究36

令和元年度終了

一年間向き合ってみて、まだまだだなと思うばかり

1930年代の空間との対話は、時代背景を知らないと読み取れない

歴史、社会、建築の密接な関係

仮説が立てれなくなると掘り下げはストップする

満開の桜とハナミズキで迎えてもらった一年は

四分咲きの桜と満開の諸葛菜に送られる

さて、来年度のテーマは

旧公衆衛生院の週末研究二年目

旧公衆衛生院の週末研究二年目

旧公衆衛生院の週末研究二年目

回を重ねてVol31

今日は鉄筋の量に感動

当時どうやって調達したのだろうか

工法の変わった今では見ることがない

奥が深い

うかつにまとめると大変だ

一つひとつ、丁寧に見極めなければ

意匠、構造全てに意味がある

旧公衆衛生院研究 隣接編

旧公衆衛生院研究 隣接編

旧公衆衛生院の隣には、東京大学医科学研究所本館1号館(旧東京帝国大学附置伝染病研究所)がある。

こちらは旧公衆衛生院の完成一年前の1937(昭和12)年に竣工した。設計は内田祥三、施工は大倉土木、大林組 でSRC造3階建である。
意匠は内田ゴシックでまとめられており、旧公衆衛生院とよく似ている。

しかし、細かく散りばめられたデザインは旧公衆衛生院と異なり、機能の緊張感と和らげる空間づくりを目

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旧公衆衛生院 週末研究27 用途変更

旧公衆衛生院 週末研究27 用途変更

週末研究27回目
旧公衆衛生院施設は保健衛生の研究、教育を目的として開設された。
現在は港区の複合施設として運営されている。旧講堂、旧院長室、旧次長室は、開設当時の空間が保存公開されているが、他の部屋は用途変更され使用されている。

復原の考え方を全ての空間に用いることが、文化財の観点からすると重要となるが、多目的に利用できる公共施設として捉えると、利用対象は限定される。そのために、開設当時の設を

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旧公衆衛生院の週末研究は続く

旧公衆衛生院の週末研究は続く

春から始めた旧公衆衛生院の週末研究も、半年が経過し、秋から冬へ。建物内もひんやりしてきた。

復原利用にあたっては、居室部分は空調設備の設置が施されたが、ホール、廊下、階段等の共用部分は設備はない。

建設当時は開閉できる窓であったが、現在は、はめ殺しのペアガラス窓になっている。よって夏は通気が出来ず、高温多湿な状態になることもある。

では冬はどうであろか。鉄筋コンクリート造、床は大理石、或いは

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研究は続く

研究は続く

旧公衆衛生院の建物研究は、半年が過ぎた。
時間をかけ、空間と対峙することで、思想を感じることが少しでもできればと続けているが、疑問は深まるばかりである。

戦前戦後、困難な時代を超えながら毅然と佇む姿。そこには、社会背景と密接な関係がある。

設計者・内田祥三の思い、姿勢を、文献、資料からではなく空間から推察する。

研究は続く
#旧公衆衛生院 #内田祥三 #推察

旧公衆衛生院 竣工の時代

旧公衆衛生院 竣工の時代

大河ドラマ" いだてん " で、ナチスドイツ、ベルリンオリンピック、韓国併合、満州国、日中戦争勃発の頃の社会情勢を映している。

旧公衆衛生院が竣工したのは、昭和13年。
日中戦争が始まった翌年である。
時代背景は同じ。少なからずシーンが被ってくる。

文責 関原宏昭
#旧公衆衛生院 #日中戦争 #時代背景

内田ゴシックとバウハウス

内田ゴシックとバウハウス

バウハウス100年祭が多くの国で開催されている。そのままのデザインで現代でも通用するモダンさ。色褪せてない。

その反対側に位置するのが、内田ゴシックであり、築81年の旧公衆衛生院建築ではないかと思う。

革新的なデザインと伝統的なデザイン。ほぼ同じ時代の対照的な表現。

しかし、内田ゴシックは単に伝統を踏襲するのではなく、ゴシック建築のエッセンスを進化させている。

旧公衆衛生院では、竣工当時の

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建築思想の見立て

建築思想の見立て

建築思想の見立ては、一つの仮説、文脈が整うと別の考えが浮かびにくくなる。
最初の仮説に引っ張られ、新鮮な発想になりにくい。

向き合って、考えぬいても最初を超えられない。

この場合、他者との意見交換、思想研究が大切になる。自分の内側との対話だと、サイドチェンジがてきにくい。

他施設との比較研究から生まれることもあるが、他者との意見交換は、新たな自分を見出す。

思想、仮説は何通りもイメージ

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面取りに含まれるメッセージ

面取りに含まれるメッセージ

旧公衆衛生院の柱には、角の面を取ったものと、そうでないものがある。
また、面取りは上部下部とも途中で止め、三角のデザインが浮かぶように施されている。

旧公衆衛生院の開設の目的は、保健衛生に関する研究と保健師の教育にある。

面を取った空間は、研究・教育を想定した専門的な場と考えられる。三角のデザインは向学と土台が表現されている。

面を取ってない空間は、一般的な場と考えられ、交流やプライベート

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