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空想対話7〜大自然の中の旧講堂

旧公衆衛生院をとおして建築家・内田祥三との空想対話7〜自然の中の旧講堂

「内田先生、旧講堂ですが私も1999年に何度か災害リスクの研修会で机に座らせていただきました。」

「そうなのですね。」

「当時は申し訳ないですが古いなあ、との印象しかありませんでした。しかし今回、時間をかけて空間の勉強をさせていただくと教育に対する壮大なメッセージを盛り込まれているのですね?」

「これも詳しく聞かせていただけませんか?」

■旧講堂
現在は消防法により使用は禁止されているが、340席の机、椅子はコンディションは良く、いつでも使える状態にある。

まず、この空間は中央ホールに連動する地上の設定であり、しかも森の中がイメージされる。
机、教壇、腰壁、見切り、梁の化粧、扉、床、格天井は木で統一されている。

机、椅子はコトブキ社製。木と金属をコンビネートした連結椅子。国内初の金属椅子で、まず最初に東京大学安田講堂へ納入されている。

壁につけられた照明の鉄製アームは木と思われるデザイン。

講堂に降り注ぐ陽の光と、太陽を表す天井付けの照明。

演壇の周囲、時計回りは全て植物のデザイン

最も注目されるのは、正面左右に飾られたレリーフ。彫刻家 新海竹蔵の作品で、木陰の親子の羊、湿原の中の三羽の鷺が自然空間を際立たす。この建物にある唯一のリアルな表現でもある。

階段状の講堂はなだらかな丘を連想させる。現在は周囲に建物が立ったが、建設当時は窓が開き、眼に映る木立と入る風が調和した、気持ちのよい空間であったと思われる。
(受講生は新芽、植物に例えられているのかもしれない)


「先生、大自然の中で、教育の無限、天への広がり、可能性を想像しながら設計されたのですね?」

「丘、木立、動物、光、風ですか。。」

ゴシック建築と内田ゴシックの根本的な違いは、思想の違いにある。
研究、教育への情熱から空間創造につながっている。ディテール云々ではない。

つづく

(文責 関原宏昭)

#港区 #東京 #旧公衆衛生院 #空想対話

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