落葉樹

朝早くから呼び出してごめん

もっと寝ていたかったよね

でも イチョウ並木がきれいだろ

いちど歩いてみたかったんだ

明け方にきみと


昨日の夜も会っていたのに

そう思っているだろうね

でも 目が覚めたらすぐに

会いたくなってしまったんだ

今日のきみと


両脇にならぶお店も会社も

まだはじまっていないけれど

鳥たちは早起きだね

ほら 梢から百舌鳥たちの

さえずりが聞こえる


昨日の夜きみは言ったね

わたしは汚れているの

過去になにをしていたか

あなた知っているでしょう と

そのことについて

ひと晩考えてみたんだ


過ぎたことなんて

どうでもいいことさ

その頃の細胞なんてもう

ぜんぶ入れ替わっている

いまのきみはなにひとつ

汚れてなんかいない


ねえ ごらんよ

このイチョウの木々を

去年の冬 虫食っていた葉は

すべて落ちてしまって

今年はまたあたらしい

黄葉をたたえているだろう


ぼくらだってそうさ

生きてるかぎりなんどでも

生まれ変われる落葉樹

そう思わない?

ぼくは今ここにいる

最新のきみが好きだ


この並木道を抜けたら

朝早くからやっている

ちいさなカフェがあるから

ねむけ覚ましでもしようか

淹れたてのあたらしい

コーヒーを飲んで